アフター安保ビフォア改憲

1129-1 11月29日日曜日、午後から始めた社民党金沢の学習会のすべての日程を終了した。
 岩淵弁護士、北尾弁護士を講師に迎え、党員、労組員、市民60人が同じテーブルについて、アフター安保ビフォア改憲を討論した。

【基調・論点提案】

1.安保法「成立」をふりかえる

 2015年。敗戦から70年のこの年に、日本国憲法に背く違憲の法律「平和安全法制整備法」と「国際平和支援法」が強行成立に至った。
 1950年朝鮮戦争を機に創設された警察予備隊が1954年7月1日に自衛隊となって以来、1960年の安保反対闘争、60年代後半のベトナム反戦運動などを経て、日本政府は、1972年に「外国の武力攻撃によって、国民の生命、自由及び幸福の権利が根底からくつがえされるという急迫、不正の事態が起きたとき、(武力の行使は)国民の権利を守るためにやむを得ない措置としてはじめて容認されるが、他国に加えられた武力攻撃を阻止する集団的自衛権の行使は、憲法上許されない。」とする政府見解を発表した。 この見解に基づき、翌73年に自衛権行使の三要件、「急迫不正の侵害があり、国民の生命、幸福追求権が根底から覆される事態」「他にこれを排除して、国を防衛する手段がないこと」「必要な限度にとどめること」が定められた。こうした歯止めは、当時の社会党の力無くしてはあり得なかった。
 これ以来、歴代政府は、集団的自衛権発動による自衛隊の海外派兵は憲法上禁じられているとの立場に立って、2000年代初頭のアフガン戦争でもイラク戦争でも、アメリカの戦闘地域への自衛隊派遣要求を回避してきた。

1129-4 ところが、安倍政権は、「積極的平和主義」を打ち出し、昨年2014年7月1日に、集団的自衛権の一部行使容認は憲法の枠内であるとの政府見解の変更を閣議決定した。この憲法解釈の変更を正当化するために「我が国及び我が国と密接な関係にある国が武力攻撃を受けて」を加えた「新三要件」を示すとともに、これを法制化するために、上記の二法案を本年5月15日(沖縄復帰記念日)に国会提出し、異例の長期会期延長の末9月19日未明に強行採決したのである。8割が「説明不足のまま採決すべきではない」、6割以上が「戦争に巻き込まれる懸念から反対である」、賛成わずかに2割強という国民世論は無視された。
1129-2 これらの安保法が運用されれば、日本の「専守防衛」は形骸化し、アメリカなどの同盟国から求められれば、日本自体が武力攻撃を受けずとも、地理的な制約なく、いつでもどこへでも自衛隊を海外に派遣することができるようになる。即ち、自衛隊が米軍と一体化し「米国肩代わり軍」となって、日本が戦争当事国となる可能性は飛躍的に高まる。 

 政府は、解釈変更の閣議決定と「新三要件」を72年政府見解と「三要件」の論理を踏襲しており、合憲であると説明しているが、ほとんどの憲法学者、弁護士をはじめ法曹界、歴代の元内閣法制局長官さらには元最高裁長官、元判事までもが、その解釈の違憲性を訴え、安保法案は立憲主義を侵し、違憲立法で許されないとする意見を表明している。
 安保二法は、手続き上は「成立」したが、酷暑の期間、のべ500万人を超えるといわれる反対市民が国会周辺を埋め尽くし、沖縄はもとより、全国各地で様々な意思表示のたたかいが繰り広げられた。法案反対で前面に躍り出たSEALDs(シールズ:Students Emergency Action for Liberal Democracy – s)や安保法案に反対するママの会をはじめ、これまで政治に無関心だったと自己反省する若い世代は、自由で民主的な日本を守るための自主的な行動を続けると表明している。
 私たちも、石川県内で活動してきた護憲平和8団体の共同行動に深く参与し、3ヶ月に及ぶ座り込み、街頭宣伝、2000人規模を含む数次にわたる県民集会とデモ行進、地方議会請願などを決行し、政府及び国会に安保法案の廃案を求め、市民世論に訴えてきた。 
 この期間を通じ、安保関連法案に反対するママの会@石川の諸行動や金沢つながりの会の保護者有志の参加など、私たちの地域でも新しい息吹が実感される。これらは闇の中の光である。

 私たちは、社民党の後退がこのような事態を招いたことを痛切にふりかえる。それ故に、来年夏の参議院議員選挙まで、安保法廃止、安倍政権退陣を求める国民運動に、持てる力のすべてを出し尽くす不退転の決意で臨みたい。

2.石川、金沢でも進む歴史修正主義・右傾化

 安倍政権の「戦争のできる国づくり」は、教育においては、「歴史修正主義」即ち史実を直視することを「自虐史観」と誹謗する一方、植民地支配と侵略戦争を肯定し、それらをアジアの近代化と独立への貢献であると記述する教科書採択の政治運動を全国的に展開してきた。
 こともあろうに、金沢市は小松市、加賀市とともに、来年春から使用する中学校歴史教科書で、この歴史修正主義にもとづく育鵬社版を採択した。日本の伝統文化への誇りと愛着、国民の自覚を育むとする意図の下、「従軍慰安婦」にも植民地支配に抵抗する韓国・朝鮮民衆の命がけの抗日運動にも触れず、南京大虐殺の既述は薄められている。そればかりではない、日本文明の独自性を強調するあまり、中国文明や朝鮮からの文化伝来が明確に書かれず、近世の日朝友好の象徴である朝鮮通信使も登場しない。
 9月の金沢市議会では、山本由起子議員、森 一敏議員が教育委員会を追及した。学校現場の教職員、大学研究者等による調査研究にもとづく教科書採択委員会の答申では評価が低かった育鵬社版歴史教科書が、なぜ教育委員会会議で逆転採択されたのか、教育委員長も教育長も説明のつかない答弁に終始している。
この採択には、山野金沢市長の歴史認識とそれに連なる県内右派勢力の教科書採択圧力が透けて見える。中国蘇州市、韓国全州市と姉妹都市関係にある金沢市で、こうした独善的な歴史教科書が使用され、相互関係史である歴史認識に欠ける尊大な青少年が生み出されることがあってはならない。それは、アジア平和連帯の共通基盤を破壊することに等しいからだ。

1129-5 安保法から憲法明文改悪への道筋には、中国、朝鮮民主主義人民共和国を仮想敵国とする排外主義が用意周到に仕組まれている。私たちは、こうしたアメリカ軍と一体化した軍事戦略が、アジアに無用の緊張を高め、平和共存に逆行する事態が進行することを懸念する。植民地支配と侵略戦争の歴史認識を否定し、敗戦から学ばず、9条改憲により「国防を越える国防軍」を持つ「普通の国家」として国際舞台で振る舞うことを夢想する安倍政権の思想には決して与することはできない。
 全国シェアわずか6.5%といわれる育鵬社版歴史教科書の問題性を保護者・働く仲間、市民に明らかにし、東北アジアの平和連帯の担い手として子どもたちを育む適正な教科書、授業を求める市民の運動をつく1129-3り出そう。

3.論点提案

 ◆安保法阻止の闘いから見えてきたもの

 ◆安保法イコール「戦争法」とは誤ったネーミングなのか

 ◆実質的な「徴兵制」は見えているか

 ◆「中国脅威論」をどう考える

 ◆フランス同時多発「テロ」が突きつけているものは何か

 ◆2016年夏の参院選→2017年明文改憲方針に危機意識があるか

 ◆私たちが「『社会』『立憲主義』『民主主義』を取り戻そう」と言うとき