ガス・発電事業売却議決止められず

ガス・発電事業売却議決止められず

 一体売却のための関連議案が提出され、昨日の委員会採決、本日17日午後の本会議採決で譲渡議決を止められず、仮契約は本契約となった。無念だ。

 昨日の委員会採決は反対委員3(森尾、新谷、森 各人反対討論)人対3人(宮崎、高、稲端)で同数。上田委員長が職権で可決と宣言。その可否を問う本会議採決。最大の山場に、会派を超えた最後の調整に走ってきた・・・。ガス事業100年の歴史と全国唯一の市営水力発電事業。市民の共有資産の民間会社金沢ガス電気株式会社への譲渡を決する議決は歴史に残る。積極的な市民の合意がない中、議会は二元代表制の一翼にかけて、止める責務を果たすのだ。

 こう思い定めて、足掛け2年、様々な視点から論戦してきた。それらの視点に共鳴し、再考してくれる議員は少なくなかった。「企業局が民営化するってさ」・ガス発電の民営化を考える市民連絡会のパブコメ改ざんの暴露、冬場からの水曜日市庁舎前スタンディングの継続、議員説得活動、メッセージ送付活動などが、議員の良識に訴えかけていた。

 だからこそ、議員個々人が、何者にも縛られず、自身の所信と良心に従って評決しなけれならない。そのための土俵として、無記名投票評決を超党派の連携で追求した。しかし、土壇場で一歩及ばず、党派拘束力が及ぶ記名投票に持ち込まれた。それが、反対9票賛成26などという地金である政治構図に引き戻す結果をもたらした。わが会派も議論を繰り返したが、態度が分かれた。その力学とは何か、それは有権者皆が考えねばならない民主主義の深い課題に他ならないと思う。

 振り返れば、2018年晩秋、水道法改正が強行される中、金沢市企業局内にフランス系水メジャー「ヴェオリア」日本法人(ジェネッツ)が営業所を置いているとの市民からの報。民営化問題に携わるきっかけであった。あれから3年。膨大な時間を民営化の愚から新たな時代の社会的共通資本の発展可能性を守ろうとする議員活動に費やしてきた。あり方検討委員会の「結論ありき」答申経過を浮き立たせ、佐無田教授の抵抗の意味を議場で問いただした。決算審査特別委員会で、PwCコンサルの調査報告書を引き出し、その癒着した関係、あり方検討の中での情報隠ぺいなどが次々と明らかになる。

 東京では、アジア太平洋資料センターを訪ね、欧米の水、エネルギーの「再公営化」の実態に学んだ。金沢での市民参加の社民党学習会へとつないだ。世田谷に出向き、ユニークな自治体再エネ施策の価値について保坂区長から示唆を受け、新電力みんな電力株式会社との接点を得た。公営電力の将来連携を展望できた。自治労本部では、地方公営企業法の制約は経営の工夫次第で自由化時代に対応可能との論点を鮮明にした。

 それが、後に大きな問題となる「企業局経営戦略2016」5事業の公営維持により総合ライフライン事業者として市民に貢献とのビジョンに生きている。だが、この10年計画の反故。市長の意向を背後に経営企画課を軸にする一部幹部の譲渡への独断専行、全局体制の不履行など組織運営の私物化を追及することになる。それが相次ぐ内部告発による情報提供と重なり合って、現在の河川法違反、未耐震管の未更新譲渡の問題追及となってきた。

 こうした経過を総括・包括し、煎じ詰めて私は反対討論に臨んだ。議員個々人の良心に訴えかけたいとの一念であった…

【反対討論】

 私は、ガス事業発電事業の一体譲渡関連議案である、議案第22号ないし第25号、第32号ないし第33号、議案41号の7件に対し、反対の立場から討論します。

 その理由は、第1に、2019年度両事業のあり方検討委員会設置以降、100年に及ぶ両エネルギー供給事業の公共的な役割への信頼と譲渡理由に納得がいかないとの多くの市民の意見が寄せられてきました。その声は未だに鳴りやみません。議会としても、本会議での議論はもとより、所管である建設企業常任委員会をはじめ、民営化に関する特別委員会、決算審査特別委員会を通して拙速に陥らないよう求める意見を市ならびに企業局当局に申し上げてきたところです。しかしながら、手続上の不透明さ、意思決定過程の不適切さ、自治体・公営企業組織としての合意形成への疑問は深まる一方です。

 加えて、ここにきて、水利権の権利譲渡に絡む河川法上の法的手続きの不備が13年間にわたって放置されてきた問題が浮上しています。出力1,000kw/hを超える譲渡予定ダム施設の規模から必要とされる国交省北陸地方整備局の許可手続きが、仮契約上の譲渡期限に間に合うのか、今後の展開は不透明です。こうした状況にあって、このまま歴史的な市民の共有資産の譲渡・売却を容認議決することは、信義則に反し、この先に、市民に大きな損害をもたらしかねません。本議会として、二元代表制に求められる市民の福祉増進のために、適正な事務執行を促す責務を放棄してはなりません。この議決責任の重さについて、議員各位におかれては、深く思いを巡らせておられると思います。本市議会の歴史に、議員各位の良識を刻まれることを是非とも呼び掛けるものです。

 第2に、今日、地球環境と社会の持続可能性を担保する課題としてコモンズ・共同社会的管理制度が再評価されています。その基礎的インフラである両事業は、社会的共通資本として次なる時代の課題、即ち脱炭素・ゼロカーボンシティを達成する自治体エネルギー政策において、その工夫ある利活用が期待される有力な資産です。自治体新電力をはじめ各自治体が必死になって自前のエネルギー生産能力を獲得しようと努力している中、それに逆行して本市が両エネルギー資産を譲渡・売却することは、あまりにもったいない。CO2実質ゼロを目指す市場の縮小時代にエネルギー供給と脱炭素化を両立させるべく先駆的な挑戦を担うガス事業、全国の市営電気事業では唯一の存在である本市水力発電事業は、時代の趨勢から、その将来価値がさらに高まっていきます。こうした類稀なエネルギーインフラを手放すことは、主体的で特色ある施策を信条とする本市が採るべき道ではありません。本市が両エネルギー資産を活かし、自治体としての先導的な役割を果たしながら、民間事業者、市民団体そして市民との共同により気候変動対策を永続的に推進することこそが、真に市民に対し責任を負うことであると考えます。

 結びに、この譲渡問題に対して、両事業の関係者かと思われる方々から、これを守り育ててほしいとの真情あるある声の数々、また貴重な情報が相次いで寄せられてきました。また、365日24時間体制を築いてのガス、上下水道の一体保安体制への大きな信頼が市民の中にあることが分かりました。両事業に携わる現役職員の公営企業職員としての愛着、誇りの念にも触れることができました。これらは、数値で表せない本市の大きな財産です。その独自の発展の可能性を私は信じてやみません。

 事情は異なる面はあるものの、仙台市は先般、ガス事業の来年度中の譲渡を断念しました。松江市も慎重対応に転じています。これらの情勢に鑑み、果たして今なのか、本市にも立ち止まって再考するチャンスがやってきていると思うのです。重ねて、議員各位のご賛同をお願いし、私の討論を終わります。

【昨日の建設企業常任委員会での質問事項】

1.プロジェクトチーム提案に関して

 自由化を織り込んで策定された「経営戦略2016」に基づき、初年度、電力自由化対応プロジェクト、ガス自由化対応プロジェクトなど6つのプロジェクトチームが料金体系、ポイント還元、売電方式の検討、売電利益のガス、水道管更新への還元など地域貢献提案を行っています。この時期に別途職員アイディア提案でも、強みである5事業一体経営によるシュタットベルケ型の経営転換が提案され、公営で競争時代を乗り切る展望が最優秀提案として評価されています。この提案がその後どう活かされたのか伺います。

 →提案の評価は高かったが、総括原価方式から値引き困難、地方公営企業法の制約から実現性には課題があり、実施には至らなかった。(9月13日本会議管理者答弁)

■この実施に至らなかったとの判断は、誰により、どのような場で行われたのか?

提案作成に当たり、当時、コジェネ財団理事長、IPCC政府間パネル、国のエネルギー政策に深く関わる東京工業大学柏木孝夫特命教授から、国のモデル事業にエントリーしてはどうかとの進言まで受けている。

教授は、「是非、国の再生可能エネルギー促進助成」に応募してほしい。」「公営企業特区を申請してはどうか」などと評価された。柏木先生は当時からLNGから取り出せる水素エネルギーに注目していた。公営エネルギー事業のこれからの時代の役割を見ておられた。

企業局の強み

提案書

管理者答弁(6.18日常任委員会)

今回のガス事業・発電事業の譲渡に関する案件について、2016年に設置したプロジェクトのようなものは立ち上げていない。したがって、局議を通じて、事業譲渡そのものについて検討することはなかった。事業譲渡に係る部分は、経営企画課が中心となって調査委託をした結果も踏まえながら、全国的な状況を分析する中で変わってきているという中で、経営形態の在り方を検討するための検討委員会というものを立ち上げて、議論してもらおうということで、外部の有識者の検討委員会にお願いし、検討してもらった。

一方で「公営の強み」、「自由化の下での経営手法・シュタットベルケ型の経営体転換」が高く評価される 

他方で、戦略とは切り離した形で経営企画課中心のあり方調査・検討の流れ

あり方検討について意見を挟む機会すらなかった

PwC委託調査報告書の存在すら、2019年決算審査特別委員会での書類審査で初めて存在を知ったというライン幹部職員の驚きの声を聴いている

退職した複数の元企業局幹部(含む)OBが市民説明会で異論を唱えている。ほかにも関係者からの異論を聴いてもいる。果たして企業局は譲渡方針に一枚岩なのか疑念が生じている。「独断専行」の語が真っ先に思い浮かぶ 局の総意が形成されないまま走ってきた。だから、情報提供が絶えない

2.確認したいことがある ダクタイル鋳鉄管A形の更新について

 「新会社は老朽管対策の中で耐震更新も含む」(本会議管理者答弁)

 新会社提案概要には老朽管対策としか記載がない 本当に合意済みか?

  企業局の見積もり、見通しは箇所づけされたものではない 

新会社が改めて更新計画を立てる ここに効率化延伸方針が絡む

森本富樫断層の震度6強の大地震発生確率高いとの予測

 民間企業に安全安心を委ねられるのか?

3.河川法26条違反について

 「ここにきて、許可申請が必要なものがあるとのことで、県との協議を開始した」

平成20年2008年報告後、違法状態の解消が必要との議論の場はなかったのか?

4.地域エネルギー自治政策に関して

6月、市長は「ゼロカーボンシティにおいては、エネルギーインフラの自治体所有も民間会社所有も違いはない」と答弁され、強い疑問が残りました。県内学識者からも同様の疑問が呈されています。国においても、気候変動対策のもとに新エネルギー基本計画が位置づけられるなど、気候変動対策が最重視されるに至りました。座礁資産と認定され投資引き揚げの対象となった石炭同様に、液化天然ガスも過渡的な役割をより早く終えねばならなくなることは十分に予想される。ガス利用者にどのようにしてCO2 を出さないエネルギーを提供するのか。また急な撤退によりエネルギー難民を出してもいけない。利潤を優先させねばならない民間会社にそれを本当に委ねられるのか。見解を改めて伺います。

5.気候変動による災害の激甚化に関して

ライフラインの災害時の迅速な復旧には、公共的な管理体制の下に置かれているべきだとの指摘も届いています。この点から、

(1)東京ガスのガス供給停止事故(8月21日から全面復旧27日)について情報収集や分析は始められているのか伺っておきます。

(2)エネルギーに対する責任が明確ではない中、自治体の基本政策がないと民間会社では無理で、企業局を含めた本市行政全体の総合政策が不可欠。災害時の熱波対策優先供給など今日段階ではエネルギーインフラを自治体が所有することの意味は大きい。さらには、農林漁業のCO2吸収・固定化は大きい。エネルギー政策に通じる第一次産業の再構築には総合的な自治体政策が不可欠と問題提起もされています見解を伺います。

6.民間独占の問題に関して

7月13日、カルテルの疑いで公正取引委員会が九州電力系、関西電力、中国電力を立入り検査しました。4月13日東邦ガスを含め立ち入り検査後、関電、中国電力に再び立入検査が及んだのです。

(1)電力大手、ガス大手を巻き込んで価格協定の疑いがかかることの背景をどう理解しているかご所見を伺います。

(2)本市の場合、ガス事業の新規参入がない中での民間会社への譲渡となります。自由化の恩恵を市民に提供するとの理屈ですが、果たして適正な競争を備えた市場となる見通しが持てるのか見識を伺います。

*「競争市場化」への疑問 絶えない公正取引委員会の立ち入り検査 ―7.13九電、中国電、再び関電―

「民間独占」の宿命 市民利益の棄損

「適正競争による利用者サービス」の幻想 

*公的ガヴァナンス確保の重要性(太田参考人の意見)

*答申留意事項「地域エネルギーのあり方に対する市の責任」

「安全・安心な経営と地域社会に貢献する事業主体を」

「金沢市が培ってきた技術技能の伝承や円滑な事業承継を図り、市民の安全・安心を確保するため、金沢市職員を事業譲渡先の株式会社に派遣」一部の幹部主導で売却決定し、局内の民主的手続きがなかったのではないか、

*評価された職員提案の経営改革案(だったか?)は、却下された。最初から議論することはなかった。議会で報告された「経営戦略」を無視しており、「あり方委員会」報告書が出てからも改めて局内討議にかけられなければいけなかった。

*民間独占の問題、九電子会社、関西電力、中部電力、東邦ガス

カルテル問題、果たして民営化の恩恵は市民にあるのか疑問。

実際、日経を見ていると、各地で電力料金が値上がりしている。

製薬事項に10年値上げしないとあるが、守れるか?

ガス・水道が一体化しているため、運営、運用しやすい。

東京ガスは7日間止まった。安全、安心の面で大丈夫か?など追及。

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「市民の安全安心のために市が公的関与」と言いながら実際は、公的資産・事業を私企業の営利事業・私資産へと円滑譲渡するためのつなぎに過ぎない