介護現場は緊張に身をすり減らす日々

 6月1日、午前、午後と二つの高齢者介護施設を訪問した。このご時世、迷惑になるかと躊躇いもあったが、ワクチン接種が始まっていることもあり、現場の実情を聴かせてもらった。

 ひと口に言うなら、感染者・発症者を決して出さないために、施設従事者は心身をすり減らすように緊張の日々を私生活含めて送っているということだ。その労に敬意を表さないではいられない。

 その中で出た言葉。記者の世界ではよく呼ばれる「遊軍」。特定の施設に席を置かず、非常時に陥った施設に応援に駆けつけるスタッフのセンターがあったらな…と。この慢性的な人手不足の業界で夢物語だと自嘲したが、そこに今の状況への本音がある。

 そして、介護保険制度、介護事業者の理念を考えさせる哲学的な話。
 介護報酬は、要支援区分が重いほど点数が高く報酬も高い。しかし、施設長は言う。どんなに衰えても、残存能力はあり、介護の工夫で機能回復する可能性がある。ところが、それを引き出す介護に成功して要介護度が下がると報酬も下がってしまう。

 彼は言う。「機能回復加算制度があれば、寝たきりを防ぐ介護技術が普及するのではないか。」と。

 最後まで人間らしい尊厳を守ってあげたい。介護哲学が滲み出る。