新潟市の新交通システムの視察

2月最終日。新潟市の新交通システムを視察して来た。

1 新潟で導入したBRTシステムは乗り継ぎの問題で逆風に遭遇している。しかし、公共交通機関を残すために、全市域のバス路線を再編成し、都心軸線につなぐという考え方は、移動権保障の具体化としては妥当ではないかと思う。

 金沢市も新交通システム導入を含む第二次交通戦略を策定し、実施年次を進めていくことにしている。
 2年前、ひと足先に都心軸に新交通システムとしてBRTシステムを導入し、想定外の逆風に遭遇している新潟市で、運行事業者である新潟交通株式会社を視察した。

 新潟市は、BRTを含む新バスシステムを「全市的なバス路線の再編により、将来にわたってバス路線を維持・拡充していくバス体系」と定義し、「都心部の基幹公共交通軸にBRTを運行し、過度にマイカーに依存しなくても、快適に移動できるまちなかにふさわしい質の高い交通環境の実現を図る。」と共に、「まちなか過剰のバスを集約して生じた余力を郊外部路線の増便にまわすことができる。」これにより、全市的な交通の課題を改善し、地域の実情に合った持続可能な公共交通体系を実現する。」とその目的を示している。

 新潟交通乗合バス部の田中課長は、市民からの苦情対応を終えて、視察対応にこられた。乗り継ぎが不便でもうバスには乗らないという内容だったようだ。
 新潟交通は、オムニバスタウン構想を開始した平成19年以降から、本格的に市の公共交通政策とバス経営を連携させてきた。その延長からBRT導入には、優先提案権を得た。公共交通としての路線バスは乗客減少が止まらず、全市的な路線再編が不可欠との認識で一致したからた。
 6新潟市のBRTは、専用路線ではなく、マイカーとの混在での優先路線方式。青山と新潟駅を区間に、この都心軸を往復するバスを運行する。既存車両に加え、新たに連節バス4台を導入し、新潟市が所有し、新潟交通に無償貸与している。その他、郊外部の路線との結節点となる、バス停の整備、運行標示システム、バス内の標示システムなどは、新潟市が整備し、新潟交通は運行のみに専念する。新潟市はこれを公設民営と呼んでいるが、上下分離方式の一種とも言えよう。

2 3 4 これにより、都心軸では、朝は3分間隔、日中で10分間隔、夕方で5分間隔のバスを運行し、郊外部のバス路線を増便した。旅客収入は横ばいで、定着すれば、所期の目的が果たせないかと考えている。
5 8 13

 ところが、これが強い逆風に遭遇している。一昨年秋の市長選挙の争点になり、反対派が合わせれば現市長を上回る得票をしたという。また、連節バス導入は費用対効果が乏しく、無駄な投資だと裁判が申し立てられている。
 市民から不評をかこっている最大の問題は、BRTへの乗り換えへの抵抗感であるという。当初から想定し、結節点の施設整備を行い、乗り換え運賃を旧運賃内に抑え、利便性を図ってきたが、想定を超える不評であるとのことだ。施設整備がさらに進むことを条件に、都心軸内まで直接運行するバス路線を一部導入する対応策を講じている。
 新潟交通としては、結節点でのバス待機スペースがないため、非効率な回送を余儀無くされているが、土地取得が困難なため、市とも将来的課題としている。

 新潟市は、将来的にはLRT導入を視野に入れているらしい。少子高齢化時代の進行の元で、持続可能な社会を再構築するには、公共交通を優先し、マイカー依存から脱却する必要があることは誰も異論がないだろう。
 しかし、実際に具体論になると、個々人のライフスタイルの違い、便利さへの欲求、社会コスト容認の温度差を調整するトータルな制度へのコンセンサスが不可欠なのだ。

11 持続可能な社会に公共交通網の革新的転換が必要との大原則を踏まえつつも、新潟市より、道路事情が厳しく、マイカー依存のライフスタイルが強い金沢で、困難な議論を前に進めなければならない。
 12金沢的課題は、狭い道路環境に対する一般的認識、鉄道線との結節、郊外部の生活路線の利便性向上、通過マイカーの何らの規制、まちなか周辺での乗り換え用駐車場の配置…等々である。金沢の市民意識は今、どの辺りにあるのだろう。

昔ながらの懐かしい風景
9 
乗車時間4時間半。高速バス新潟市終点の万代シティバスセンターは賑わっていた。カ10レーが名物。私はカレーそばを昼食にした。確かに美味かった。
 日帰り視察も、帰りは高崎乗り換えで北陸新幹線。金沢は近い。