議会改革で先進自治体視察

10月26日から三日間、議会運営委員会が議会改革で先進自治体視察。初日は、下関市議会で電子表決システム、特別委員会の活動、特別職人事の所信表明などを視察した。翌日は大津市議会のミッションロードマップ、三日目は堺市議会議会力向上会議などを視察した。

議会のチェック機能を重視する下関市議会

3 夏に経済環境常任委員会で、ジビエセンター事業を視察に訪れた下関市議会。54億円を投じて昨年完全供用なった新庁舎。その7階、8階が議会フロアだ。
 真新しい議場は、一問一答形式に合わせた演壇、質問席、モニターディスプレイを配し、70席の傍聴席にキッズルームを加えて開かれた議会を進めている。
 この総額5200万円かけた新議場に、電子表決システムが導入されている。各議席に押しボタンが設置されて、賛否分かれる議案に対し、電子表決を行う。傍聴者、テレビ視聴者に、各議員の表決態度が一目瞭然になる仕組みだ。議員の議決責任を明らかにする議会改革の一環で各地で導入が進んでいる。写真の表決態度は模擬採決。
2 下関市議会の特別委員会は、ユニークだ。決算審査特別委員会以外に一つだけ。それが市出資法人調査特別委員会だ。所謂外郭団体の活動や財務の適切な運営を調査している。金沢市議会でも、法人からの報告は書面で受け、一般質問や決算審査との絡みで扱われるが、特化した委員会調査はなされてな はいない。
逆に、金沢市議会で力を入れてきた政策課題を調査し提言する特別委員会は下関市議会には設置されておらず、常任委員会に任されているとのことだ。議会の政策形成力が問われている今日では、下関市議会にも課題となっているようだ。
 下関市議会では、2008年度から特別職任用議案の対象となる人物が議4会に対し所信表明する。これもユニークだ。議会の人事案件同意権限を強化しようとする取り組みだ。これにより不同意となったケースはなさそうだが。
最後に、市民と議会のつどい。市民に開かれた議会は、議会改革のもうひとつの本丸だ。報告会や意見交換会など、各自治体議会は、議会基本条例に基づいて試行錯誤を重ねている。下関市議会では、「市民と議会のつどい」と題して開催している。今年は500ほどの市民団体にも参加要請し、1100を超える通知を出して参加を呼びかけている。やはり参加者確保に苦労している。今後、ワークショップやワールドカフェ形式の導入も検討しているようだ。面白いが、議員個人の意見は控えるという5原則と両立できるか悩ましい面もあろう。
関連し、下関市議会は、選挙権年齢18歳引き下げに呼応し、市立下関商業高校の主権者教育として、高校に出向き「下商生からの下関市で未来6への提言」という高校生との対話集会を行った。金沢市には市立工業高校がある。現在、議会活性化会議で小学生高学年対象の議会見学会を検討中だ。市立工業高校の生徒との対話、高校生議会も検討の意義ありではないかと思った。以上、下関市議会議会改革視察報告。

 

議会運営委員会議会改革視察二日目
7    改革度ランキング2位の大津市議会を訪れた。議会ミッションロードマップ・議会版実行計画などの説明を受ける。

一気呵成の議会改革

 今や議会改革の代名詞となった大津市議会。大津市議会は、「オール大津市議会」を標榜する。
8 近藤副議長の歓迎挨拶の後、議事調査課の木津さんから、まさに一気呵成の議会改革6年間の説明を受けた。大津市議会は、議会改革先行型と自認し、先の市議会改選前年に集大成として、文言化である議会基本条例を定めた。
数ある改革の要は、各会派から委員を出して構成する政策検討会議だ。9ここでの課題集約と議員間討議から、議員提案のがん対策推進条例、いじめ防止条例、三大学とのパートナー協定締結、災害対策基本条例、決算と予算を連続して常任委員会所属者により審査するしくみ、通年議会制、ミッションロードマップなどが生まれた。

 ミッションロードマップは、議会と市民との約束を果たすための行動14計画だ。4年間の年次計画が具体的に立てられていて、行政評価と議会評価を最終年度に行うとしている。ー写真に計画表ー 評価手法は検討中。これはなかなか難しい。
 金沢市議会も2013年に議会基本条例を制定して、幾つかの改革実践に移してきたが、条例に掲げた改革課題の進捗評価や時点修正を行う必要がある。

10大学との連携は、有意義だ。市当局は当たり前に審議会、検討会などでやってきた。本来的に地方自治の舞台であるべき議会が、大学の最新知見を生かして政策形成力を強化するのは、現実的だ。大津市議会は、自ら学生のインターンシップを受け入れるなど、相互益を得られるよう配慮している。学生の中には政治家志望者もいるようだ。若者の政治参11加にも道を開いている。大学図書館との連携も進んでいる。

 議会のICT化にも予算を割いている。タブレット端末を全議員に貸与し、本会議、委員会でのペーパーレス化、情報共有に機能を発揮している。大規模災害時の議会業務継続計画を策定しているが、災害時の情報把握、共有にもタブレット端末は期待されている。ペーパーレス化には、議員によっては抵抗感もあるので、移行措置を設けている。これら改革を進める屋台骨は議会局にある。その専門性を上げる人事にも配慮されている。

12 こうした議会改革の集積は、議員のイメージを変えるのではないか。それは、地域活動を中心に議員活動する議員から、議会を拠点に政策研究から政策討議を経て政策を創り出す議員への転換だ。これが、有権者にどのように伝わっていくのか、興味深い。2015年の市議選では、候補者たちは、自らの所信にオール大津市議会の担い手にもなるとの表明をどのように表現し、有権者は評価したのだろうか、気になるところだ。
 15-2木津さんは、この点についてはまだはっきりとは言えないが、個々の理念、政党スタンスは当然主張されたが、市民のための大津市議会を担うことも訴えられているとした。最近、転出入が激しい大津市民は、地元意識が薄くなっているようだと16も。そうなれば、市全体を見渡した政策論議が受け入れられる条件になると思われる。

 議員、議会が変われば市民の意識もまた変わる。大津市議会を他山の石として、金沢市議会はどう変わっていくか、宿題は大きい。

 

市長との緊張関係からの議会改革

17 堺市議会の議会改革は、文字通り議会力向上を主眼に重ねられてきた。それは、大阪維新の会から当選した現竹山修身市長が就任してから、議会と市長との関係が一変したからだ。市長の強力なリーダーシップに対抗するため、議決機関として議会は、いかにして議会力を強められるか。この課題意識から早稲田大学に転身した元三重県知事北川正恭氏の指導を請うた。そこから生まれたのが議会力向上会議だ。吉川現議会運営委員会議委員長が述懐した。

18 議会力向上会議は、議会運営委員会正副委員長が座長を務め、各会派から二人の委員を選出するが、決定権限を持つしかるべき委員を出すよう申し合わせている。
この議会力向上会議では、議会基本条例の制定議論を経て、策定作業実務から、具体的取り組みの決定まで議会改革のエンジンとして動いてきた。これから、議会基本条例の検証議論に入っていくという。

21 堺市議会は、議会力向上のために、議員間討議を重視し、常任委員会審査で議員間討議の時間を正式に組み込んでいる。説明で紹介されたのは、議会側が提出・議決した「職員の政治活動禁止条例」を市長が、立法事実がないと再議で対抗したことに対して行われたものだ。これは結局、再提案・可決→再度の再議→議会側の再議決が三分の二に満たず廃案になった。
議事調査課は、議員間討議は、議会として何が争点かを市民に明らかにするために行っているが、市長提出議案に対する議員間討議が深まらないことや、議案に対する質疑が少ない傾向を今後の課題とした。

22 二点目は、請願人、陳情者からの意見陳述。これを常任委員会の正規会議に組み込んでいる。請願人の思いを直接聞き、審議、政策に反映させる。これもインターネット中継する。

 三点目は、議会報告会の取り組み。堺市議会では、議場に市民を招きたいとの思いと7区ある地区まで出向くのが困難と考えて本会議場で全体報告、その後委員会室で分科会を持つが、ワールドカフェ方式で肩苦しくない雰囲気で参加さやすいように持ち方を検討している。近くある報告会には、若者たちの参加を期待して、大学、高校にもチラシを配布してきた。集まり具合が気になると。金沢市議会も、11月に開催する意23見交換会は、学生の街市民交流館で学生の街金沢の施策についてをテーマに開催される。

 堺市議会では、一部議員の政務活動費に不正の疑いがあり、100条委員会が開かれている。午後も予定されている。吉川委員長は、改革ランキングは高いが、落ち着きがないと自嘲気味に語った。金沢市議会は、着実に改革を進めているとも。私が解釈するに、維新の会流の劇場型議会は、本来の意味で住民の側に立って審議を尽くす議会とは限らないということか。そう言われると、一人の38歩より38人の一歩を重視して改革してきたとも言えるか。そうでなければ動きようがないからだが。粘り強さとコンセンサス!

24 議員間討議を形にしたような円形本会議場、親子室設置した傍聴席などを見学し、すべての視察日程を終えた。

25 金沢市議会は、議長の発意で政務活動費検討会を改めて設置する。私は再び会派を代表して委員になることになった。透明性向上は勿論だが、議会、議員の政策力向上に資する政務活動費の運用をさらに焦点化して改善しなければならない。