1.経済情勢を受けて
朝刊を手にすると、連日、大手大企業における派遣労働者、期間工の大量解雇の報が目に飛び込んでくる。この30年間世界を席巻してきたネオリベラリズム・新自由主義は、一握りの億万長者に巨万の富をもたらした一方、圧倒的大多数の勤労市民には貧困と生存の不安をもたらした。億万長者たちのマネーゲームのつけを、公的資金注入という税金投入と首切りによって勤労市民が払わせられることに、世界で抗議の声が上げられている。
ここ日本でも、苦境に立たされるのは、とりわけ地方の勤労市民であり、地場経済を支える中小零細企業だ。市民の暮らしを支え、地域のセイフティネットに責任を持つ本市の役割は、極めて大きくなっていることは言うまでもない。
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森議員 |
まずもって、山出市長におかれては、現下の経済情勢をどのように認識され、年末から来年度に向けていかなる決意をもって雇用対策をはじめ具体的な対策を講じて行かれるのか12月補正並びに本格化する新年度予算編成にひきつけて所見を聞く。 |
山出市長 |
アゲインストの風がストームとなっている。景気はたいへん心配している。中小企業への融資支援、緊急経済対策として公共事業の早期発注や金融相談窓口を設置するなどして、きめ細かく、十分に気をつけ、積極的に対応していきたい。 |
2.まちなかの活性化について (1)中心市街地活性化基本計画
新自由主義の導入を背景に行われた1990年の日米構造協議以来、まちの姿が大きく変貌した。米国の年次改革要望書を受けた630兆円もの公共投資、外資系大資本が参入するための市場開放、さらには大店舗立地の規制緩和などによって、全国の都市で郊外へと市街地が拡張し、大型店の立地が加速した。その結果、中心市街地から人口が流出し、市街地の商店の疲弊、にぎわいの喪失といった中心市街地の空洞化が進んだ。「まちづくり三法」の改正は、そうした全国的に進んだ市街地の郊外部への拡散による弊害から脱却するために行われたと理解する。
本市に於いても、06年本会議で、「法改正の趣旨はコンパクトなまちづくりを進めることにある。大型店の立地を抑え、まちのにぎわいを回復させることを目指すもの。」と市長答弁がなされている。しかしながらまちを歩くと、環状道路の供用や大規模な区画整理にともなって、郊外部にさらなる大型集客施設の立地が相次ぎ、まちなかやその周辺部の活性化は一層厳しくなっているとの受け止めも聞かれる。 |
森議員 |
まず、今年3月に一部改訂もなされた本市「商業環境形成指針」による商業環境秩序の制御は、どの程度功を奏していると評価されるのか。また、現基本計画実施から一年半を経過した今日、まちの状況変化をどう把握しておられるのか。さらには、計画三年目に差し掛かる来年度に、コンパクトシティ進展のために重点的にとりくまれる施策は何なのか。 |
山出市長 |
全国でも先駆けて策定した商業環境形成指針では、地域特性に基づき、7種類の区域設定を行った上で、中心市街地、都心軸、地域拠点と市内全域で商業機能を配置してきた。大型店に地域社会の一員としての認識を促してきたが、その認識は強まってきている。まちの状況は、主要商店街では歩行者数、年間社会動態はマイナスだが、JR金沢駅での来外者数は増加しているので、ある程度歯止めがかかってきているのではないか。さらに努力していく。まちなか活性化は、ひとつの施策だけでは決定打は打てない。定住促進、商業振興、回遊性の向上、快適な歩行環境の創出、ふらっとバスの長町ルートを開設したが、公共交通の充実など、多層的な施策を展開していく。 |
(2)まちなか商業地域の現状と課題
まちなかのにぎわいを大きく左右するのは、言うまでもなく中心商店街の活況の度合いだ。 |
森議員 |
基本計画の実施が中心商店街浮上の契機となり得ているのか、その進捗と展望について所見を伺う。 |
羽場産業局長 |
近江町市場再整備事業では、アーケードの付け替えを行って、界隈の賑わいが生まれている。 |
森議員 |
例えば、青年層の意識を掴むための広範な意識調査や中心市街地活性化協議会に青年ワーキングチームを設置するなど、「声を届かせたい!」と願っている青年層の担い手とがっちりと協働するしくみを整えてはどうか。 |
山出市長 |
金沢商業活性化センターと連携し、次世代リーダー育成事業のなかで、中心市街地まちづくりリーダー育成にとりくんでいる。若い方々、次世代リーダーとの協議を通じ、まちの活性化は、究極は人づくりだ。 |
森議員
(再質問) |
まちづくりリーダーを育成するとのことだが、特定の層を対象とするのではなく、漏れがないよう、そして、上から指導の対象とするのではなく、平たい場、自由に率直にディスカッションができる場にして欲しい。それによって、力がわき上がってくる。再度聞きたい。 |
山出市長 |
私が行くと上から押さえつけると思われるといけないので、職員が行って若い人の意見と話し合うようにしたい。 |
森議員(再々質問)
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いや、市長に行くなと言っているのではない。市長には是非行って欲しい。そして、直接に若い人たちの思いを聞いて欲しい。 |
(3)旧県庁跡地周辺の土地利用に関して
県の基本構想によれば、1号館についても解体し、2015年には地下に駐車場を伴う緑地空間として供用するとしている。2号館解体のために移転入居した県NPO活動支援センターは、19年度利用人数が12797人と前年比10.7%の増加となり、市民協働を担う市民団体の活動の拠点として好評を得てきた。さらに、のべ12万4000人の利用があった中核施設である生涯学習センターの利用者を含めると、年間の広坂庁舎利用者数はおよそ20万人ともなり、その拠点施設の消滅は、まちなかの活性化に大きな負の影響を与えるものと危惧される。
先日、生涯学習センターを活動場所にする社交ダンスのグループの方から、解体後の活動の不安や新たな活動場所確保の要望を伺う機会があった。2グループで年間のべ18000人、定期的なまちなかへのお出かけ機会ともなっている。高齢者にとっては介護予防であり、行政にとっては医療費の抑制効果のあるものだ。 |
森議員 |
広坂庁舎利用者の活動場所は、引き続きまちなかに確保されるべきだ。市民活動支援センターの設置も含め、まちなかでの活動場所確保について本市としての見解を尋ねる。 |
山出市長 |
市民活動支援センターについては、協働をすすめる市民会議で検討中と聞いている。まちなかでの活動場所をという点では、春に近江町交流プラザが開設されるが、その活用もしていただきたい。 |
森議員 |
集客施設や市民活動拠点、さらには香林坊旧映画街地区の再整備との連動も含め、広坂周辺を核としたまちなかの将来構想について広く市民の意見を反映させるしくみが必要だ。 |
山出市長 |
国の合同庁舎が移転することになる場合に備え、跡地の将来のあり方を検討する会が設置された。学識経験者などが高所大所から望ましいあり方について議論していくものと思う。 |
(4)「屋」のつくお店を地域の消費生活拠点として支えること
まちなか等の住民から、居住地域での買い物に困っているとの声をよく聞く。これは、とりわけ車に乗らない高齢者にとっては、「買い物過疎」とも言える状況だ。
この間の郊外での大型店の出店によって、最も厳しい苦境に立たされてきたのは、「屋」のつく商店や地域のスーパーではなかったか。 |
森議員 |
郊外大型店に関わる税収入が、「屋」のつく商店の支援、生活必需品店舗の地域への立地促進策として環流されるような施策があってもいいと考えている。また、他方では、商店事業者の自助努力と住民の買い物が協働して地域の日常消費生活の拠点としてまちの商店を育てていくようなコミュニティ施策も考えられる。「屋」のつくお店を支える施策について見解を伺う。 |
山出市長 |
同感だ。15年前から空き店舗の借り上げ、商店街の店舗改装に助成を行う支援施策にとりくんできた。最近も、新竪町商店街で改装事業を助成したところだ。地域での施策に大きな関心を持って、市内の商店街を積極的に支援していきたい。 |
森議員(再々質問) |
「屋」のつく店の支援について再質問する。商店街を構成していない地域のお店に対する地域コミュニティ施策としての支援施策を研究して欲しいが、どうか。 |
山出市長 |
職員と共に私も地域に入って、親しく話し合って施策を練り上げていきたい。 |