1.経済情勢を受けて
山出市長は提案理由説明で、この経済の崩壊状況についてやや抑制的な表現ながら、「医療の混乱、地域商店の衰退、さらには労働の商品化とも言うべき状況を見るにつけ、徒な効率優先、極端な市場原理主義を省み、人間性を伴う経済政策への修正が求められている。」と述べた。私ども会派社民もまったく同様の状況認識だ。しかしながら、福島党首が再三足を運んだ年越し派遣村では、人の情けに涙し、今度は自分が他人を助ける側に立ちたいと前を向いた青年失業者や全国から駆けつけたボランティアの存在があった。また、定額給付金より未来につながる政策を求める7割以上の国民の存在は、市民の良識の証だ。これらは困難な中に芽生えた希望ではないか。私たちは、自己中心の新自由主義による競争至上社会に決別し、富を再配分し、分かち合いと支え合いの社会を地域に再構築する転換点にあることを自覚し、金沢を社会民主主義にもとづくヒューマンニューディールのまちとすべく、以下質問する。
|
森議員 |
12月補正による緊急支援事業は、どのような効果を発揮してきたのか、その成果と課題について、併せて、生活保護申請への対応と、ホームレスへの状況把握と対応はどうであったのか聞く。 |
羽場産業局長 |
12月11日から受付を始めた相談窓口には、2月末までに雇用相談が639件、金融相談には1718件の相談があった。直接臨時雇用には、111人の応募があり、その内40人を雇用している。利子補給制度には162件28億3千万円の融資を行った。市営住宅空き室20戸分を用意したうち3戸を提供した。一定の効果があったものと考えている。今後情勢の悪化が見込まれるので、状況を見ながらしっかり対応したい。
横山福祉健康局長:昨年10月から今年2月までに、生活保護に認定したのは196件で、前年同期に比べて57件、37%増加している。この中の18件、9%は居住地が無い方も含まれる。 |
森議員 |
53事業で新たに創出する雇用478人は、将来への安定雇用を求める失業者のニーズ とのすれ違いが生じないか、また、想定を越える厳しい雇用情勢となった場合への対応はどう考えられているのか。 |
羽場産業局長 |
失業者のニーズとのすれ違いが起きないよう、失業者への資格取得を積極的に支援する制度を創設した。収益悪化でやむを得ず労働者を休業させる場合、その賃金の一部を助成する国の制度を補完し、事業主負担を実質ゼロにする。今後、想定を超える情勢の悪化があった場合、関係機関と連携し、あらゆる情報提供に努め、離職者の再就職を支援していきたい。 |
森議員 |
企業主、失業者への情報提供の徹底、助成金や奨励金が確実に雇用確保に結びつくため の効果的な運用手だてに遺漏はないか。多様な事業メニューも返済の見通しが厳しい事 業者ほど制度利用を手控えないか。真に応援を必要としている方々に施策が届くよう、 事業の展開に当たって市長の決意を聞く。 |
山出市長 |
事業者への助成金についてもより効果的な実施のために、説明会を開催したり、ハローワーク等とも連携して周知を図っていく。真に支援が必要な事業者が融資を受けやすくするために、信用保証協会が100%保証する緊急経営安定特別資金制度がつくられた。さらに市独自に0.8%利率を下げ、借り入れ元金軽減の借り換えに緊急経営安定特別資金を融資できるようにした。事業者の経営安定に役立っているものと考えている。資金繰りの円滑化には、引き続き努力していく。 |
森議員 |
最も厳しいところに立たされる障害者の授産や就労支援の事業所に対し、本市事務作業の委託や緊急支援措置など、支援の手だてを講じる必要があると考えるがどうか。 |
横山福祉健康局 |
市の施設の清掃、公園の除草清掃の業務を授産施設に委託しているほか、友愛ショップの拡充や近江町交流プラザに授産品販売コーナーを設置する。新たな施設の設置の際には、就労の場を提供していきたい。 |
2.3月補正並びに09年度予算案から
前年比40億円余の市税の減収を予測する中、本市が、8年ぶりに一般会計の増額予算を編成し得たのは、歳入において、臨時財政対策債を含む実質地方交付税の増配と市債の増発によるものだ。しかし、今回の交付税の増額は、財政投融資特別会計積立金を財源とする一兆円の特別加算など経済状況を配慮した一時的な政策的膨張であると共に、臨時財政対策債への依存が強まっていることを踏まえておかねばならない。国の財政再建路線にもとづく地財計画圧縮の基調が将来に貫かれるならば、地方交付税の削減が再現し、景気回復の遅れの中での歳入不足、中期財政計画によって落ち着いてきていた実質公債費比率や起債制限比率の上昇という危うい財政状況を招かないとも限らない。
そこで、まず歳入について伺う。 |
森議員 |
第2次分権改革が正念場を迎え、第3次勧告も近く予定されるという今日、改めて住民の暮らしを支える一般行政経費などの基礎的住民サービスの財源保障を充実させ、恒久化させていくことが重要だ。地方における固有財源の確保について、改めて市長に決意を伺っておく。 |
山出市長 |
地方分権改革推進委員会第3次勧告に向けて、国と地方の財源配分はフィフティフィフティにすること、地方固有の財源として、地方交付税を地方共有税とする仕組みと考え方、地方消費税の市町村への傾斜配分を強めることを政府に求めていきたい。 |
ー歳出ー
(1)公共工事の大幅増額について |
森議員 |
財政指標悪化のリスクを承知の上で18%以上の大幅増額を計上した総額57億円余り の各事業は、地場の建設や建築関係事業者をはじめ域内経済への波及効果をどのように 見積もっているのか。 |
山出市長 |
実施する公共工事は、計画してきたものの実施も含まれるが、大型の事業より、市民生活に身近な生活資本、学校の耐震化、河川の浚渫、道路の整備の関係に配慮した。早期発注に努めたい。水害による災害復旧工事は発注をほとんど終えている。少しでも、地域、地場産業が元気になるようとりくむ。 |
(2)ものづくりと創造都市ネットワーク登録推進事業
本条例案の基本にあるものづくりが文化と経済の源であると同時に人々の協働により社会を存立させ、世界をつなぐとする考え方に賛同する。現下の経済危機と社会の劣化が、地道な生産をなおざりにし、安直な利潤を求めて金融と投機に走った見かけ倒しの経済システムの結果であることを省みれば、当を得た方向だ。そしてこの底流にユネスコの創造都市ネットワーク登録が通じている。
「戦争は人の心の中で生まれるものであるから、人の心の中に平和の砦を築かなければならない。」この有名な一節ではじまるユネスコ憲章は、恐ろしい大戦を教訓に、失われない平和は人類の知的及び精神的連帯の上に築かねばならないと、ユネスコ創設の意思を高らかに宣言しています。さらに、大阪市立大学に創造都市研究科を主宰する佐々木雅幸教授は、21世紀の地球社会は「国民国家から都市へのパラダイム転換を迎え「都市の世紀」が始まるとし、独自の芸術文化を育て、革新的な経済基盤をもつ「創造都市」に世界の人々の関心が集まっていると論じている。 |
森議員 |
創造都市ネットワーク登録とものづくりによるまちづくりを結んだ金沢の都市構想にいかなる可能性を見いだしているのか、その高邁な理念を開陳して頂きたい。 |
山出市長 |
ものづくりの姿は、拝金主義とは根本的に違う。働くことの原点に関わる仕事を大事にしていきたい。創造都市の定義は特にない。革新的産業活動、創造的な文化活動の根底にある学術文化を大切にすることで、産学連携が進む。ユネスコ創造都市ネットワークは、元気になった都市がネットワークを組み、平和の実現に貢献する。金沢は、東洋のチューリッヒとも言われる。日本の中で創造都市としての有資格者であると思っている。 |
森議員
|
関係施策が、一部の学識経験者や芸術家、専門事業者に囲い込まれるのではなく、在野の一般的市民にも門戸が開かれ、ボトムアップ型のものとなってほしい。所見を聞く。 |
山出市長 |
発言のご趣旨の方向で努力したい。具体的には、若い人の知恵、感性を呼び込みたい。伝統工芸に意欲を持つ人に奨励金制度を創設する。これを進めることがボトムアップによる産業振興につながると思う。 |
(3)第一次産業と福祉分野を支える
日本はかつて、ケインズ主義経済政策が市場を制御し、コントロールされた成長社会を実現した時代を経験している。しかし、その一方で投資が建設公共事業に偏り、環境破壊と政官財の利権構造という歪みをもたらした。これからの時代は、人間の命と尊厳を支える分野への投資こそが必要だ。それは、食を生みだし環境を守り育てる農林漁業であり、人間の尊厳ある暮らしを生涯にわたって支える福祉や教育の領域だ。本県、本市においても緊急雇用の受け皿として恒常的な人手不足産業である農林畜産業や介護福祉の現場が注目されているが、一時的な緊急避難先ではなく、一生の仕事としてやりがいを持って担い、安定した生活が送れる産業としての条件整備が必要なことは、全国共通の課題だ。 |
森議員 |
本市においても、多くの関係事業が計上されているが、第一に、新規就業者をそうした分野に新たな担い手として定着させていく戦略に位置づけられているのか、また課題をどう意識しているのか、そのビジョンを示せ。 |
山出市長 |
そのように思っている。林業、農業への就労支援事業を計上している。介護者定着のための講座受講料の助成制度も開設する。若い広範な市民に呼びかけていきたい。 |
森議員 |
今回の介護報酬の改定が、介護福祉の現場従事者の待遇改善に確実に結びつくための労働分配の手だては、どう講じられるのか。 |
山出市長 |
国でも雇用と処遇改善にとりくむ事業所への支援を予算化した。事業所に趣旨を周知することはもちろん、その結果を注視していきたい。 |
森議員 |
かなざわ子育て夢プラン2010の策定に当たって、次期プランに生かすべき成果と課題を明らかにする現行プランの評価をどのような手法で行っていくのか。 |
横山福祉健康局 |
金沢市少子化対策推進会議において、プラン2005について定期的に評価し、結果を公表してきた。市民アンケートや市民フォーラムなどを通じ市民の意見を聞いていきたい。 |
森議員 |
子育てひろばとは、「安心して生活を共にする場であり、親子の出会いや交流を大切にしながら、親として自然と子育ての力を発揮できる土台を支援する場、大きく変化する親の生活環境や不安感に寄り添いながら、子育て家庭と地域をつなぐ役割を持つ」と定義されている。その一つが金沢駅こどもらんどだ。駅という人々が行き交い出会う場に立地し、自主的な子育て支援グループの市民ネットワークが独創性を持って運営する先駆的な子育てひろばとして、利用者はもとより、全国から多くの視察も受け、高い評価を受けてきた。本市としての評価も伺っておく。 |
横山福祉健康局 |
駅周辺の商業施設等利用者のニーズに応える施設として、他の施設とは異なる役割を果たしている。今後とも利用者の増加に向け、周知に万全を期す。 |
森議員 |
私が危惧するのは、改修費を含め総事業費3000万円を越える予算によって、今年度リニューアル運営される金沢駅こどもらんどの上に、5年後までには新幹線駅がつくられることだ。新幹線駅が設置された暁も、JRはこのスペースを提供することになっているのか。 |
横山福祉健康局 |
新幹線駅設置後も引き続き駅構内でスペースが確保できるよう、関係機関に働きかける。 |
(4)児童相談所一時保護所の開設
当初予算では、その増員6人分が計上されている。「一時保護所というのは、一歩間違うと殺人事件が起こりかねない厳しいところだ。児童福祉士をはじめスタッフの情熱と自己省察に経験の蓄積が重要だ。児童相談所の職員には、児童養護施設に泊まり込んででも、子どもたちとつきあう姿勢を求めたい。」 これは、永年の経験をもつ児童養護施設長がかつて私に語られた言葉だ。 |
森議員 |
児童相談所設置から3年。児童養護施設をはじめ連携機関との情報共有や合同研修について、これまでのとりくみと開設に当たっての決意を改めて聞く。 |
山出市長 |
県の一時保護所に交代で4人の職員を派遣してきたほか、他都市の保護所の研究も行ってきた。肝心なことは、職員が愛情を持って接することだ。心が通う一時保護所にしていきたい。 |