コロナ禍をはらう梵鐘の音

新型コロナ禍の収束を願う鐘の音 -5月18日ー

 千日町親睦会を町会とする徳龍寺で、新型コロナウイルス感染症の終息を願い梵鐘つきが始まった。心の癒しと慰めをとの町内住民の願いが実現した。

 徳龍寺は、寺町寺院群を構成する真宗大谷派の寺院だが、創建は1616年、卯辰山の頂に天台宗の寺として歴史を刻んだ。住職就任を準備する若き石山可惟若院が、こう寺の由緒を記者に語った。「武士の寺」との意味が少し分かった気がした。

 鐘は1952年鋳造とある。戦時中金属の徴発で失われた鐘が、幸い戦後復活を遂げたことになる。信心厚かった祖父母も寄進に参加したのかもしれない。ばあちゃんに連れられて寺通いした幼き記憶が蘇る。

 5月いっぱいは、毎夕6時に。その後は終息まで毎週金曜日の6時に、鐘はつかれる。

 

 

経過 思いもよらなかった347年前の梵鐘をつく ー5月2日ー

 先日、ある地域の方から問い合わせがあった。新型コロナウイルス感染症対策で、めっきり人と接することがなくなり、気が滅入る。近くに寺院群もあるので、鐘をついてもらえないだろうか?鐘の音が聞こえると、慰められる気持ちがするので。

 なるほど鐘の音か… 私もコロナ禍対策に関わって様々な声を聞いてきた。皆さん共通の思いは先行き不安感だ。健康と生活に亘っての。それが時には他者に対して不寛容になったり、攻撃的になったり、極端な場合は、言われ無き差別の側に立ってしまったりする。政治の貧困が背景にあるのだが、私自身やりきれない気持ちに沈むこともある。

 お寺の鐘。宗教はど返しして鐘の音は、懐かしくもあり、温かく包み込んで荒んだ心を癒してくれる気がする。

 そう感じた私は、地元千日町や野町の寺院を尋ねてみた。母が眠る犀川大橋たもとの徳龍寺。若き住職は、今梵鐘の音が人の心を慰め、糧になるかもしれない、協力したいと答えてくださった。

 もうひとつ思い起こしたのは、野町に鐘音愛好会があったことだ。人伝にご縁ある橋爪事務局長にお目にかかると、もう父君義守さんの時代から21年間、毎週土曜日18時から鐘をつき続けていることがわかった。いつもあくせく飛び回っていて灯台下暗しだ。橋爪さんは、梵鐘の音に新型コロナウイルス禍を乗り越えるための癒しと励ましの意味を加えることに即座に賛同された。そしてこの18時に、鐘つきの時刻が近づいていた。

 蛤坂の上手にある常徳寺。鐘音愛好会の鐘つき五ヶ寺のひとつ。何と1673年寛文13年名工宮崎彦九郎鋳造の文化財だ。許されて私も三つき鐘の音を響かせて頂いた。
 

 もうしばらく地域の声を聞いて、コロナ禍にあって人の気持ちに安らぎをもたらす鐘の音を広げられたら有難い。