公営企業の存在価値に関して調査視察 2020年1月

報告 東京出張 2020年1月28日~30日―

〔テーマ〕
  金沢市ガス事業・発電事業の民間譲渡問題に関する調査
  世田谷区の先駆的施策の調査
  世田谷区の子ども政策の調査

〔日程〕
1月28日
 アジア太平洋資料センターで内田聖子代表理事と面談ガス事業・発電事業の株式会社譲渡問題

1月29日
 自治労中央本部公営企業局で石川局長から聴取
 保坂展人世田谷区長と意見交換 
  世田谷の「RE100宣言」、新電力「みんな電力」との提携等持続可能な自治体への先導的な取り組みについて

1月30日
 世田谷区こども施策視察
 新BOP、世田谷区子どもプレーパーク

 

アジア太平洋資料センター訪問

 1月28日、金沢市のガス事業・発電事業の株式会社譲渡問題についての調査の一環として、アジア太平洋資料センターを訪問した。

内田聖子代表からの聞き取り

金沢の動きは、水道コンセッション浜松市の動き、宮城県の同じく広域水道のコンセッション条例可決と共通している。
・共通しているのは、金沢での内部検討にPwc合同会社が入ったように、外資系のコンサルタント会社が参入し、民間譲渡しかないという報告書を出していること。
・だから、エネルギーにとどまらず、必ず水の民営化に繋がる可能性が濃厚。国内企業が参入するにしても、世界の公務分野を民間市場化するという共通利害が通底している。
・それを促してきたのは、総務省であり経済産業省だ。公共財を民間市場に投げ出す制度改変を政策的に誘導している。その公的検討の場に、民間企業が入り込んでいる。証拠はいくつも見出せる。
・公共的な役割と言えども、利潤追求の範囲内にとどまる。利益の配分では、株主配当、役員報酬が最優先する。生み出した富が域外に流出する。配管など地元中小事業者に仕事が回らず、効率的な県外事業者にとって代わられる。これは、地域経済には大きな打撃になる。
・しかも、民間企業となれば、基本的に自由競争の中で、財務状況の開示を求めても、私企業の経営情報は出せない。説明責任はこうして放棄される。契約書の内容は要注意。
・多面的に問題を明らかにし、社会的共通資本の意義を改めて市民共通のものに提示することが、喫緊の課題だ。

 

「公営ガス事業は地域自治政策」 自治労公営企業局訪問

 1月29日は、自治労公営企業局を訪れ、石川公営企業局長から聴取させて頂いた。事前に提出した質問事項に丁寧な文書回答も用意された。

■石川さんは、松江市長、同市公営企業管理者が前のめりになってきたガス事業の民営化に対し、自民公明が多数を占める松江市議会が、反対でまとまる状況になってきた伝えてくれた。

・その決め手は、ガス事業を単なるエネルギー供給ではなく、地域自治と暮らしの危機管理に大きく寄与するものであり、残すことの意義を理解したことに拠るという。
・北海道胆振地震でのブラックアウト、千葉県の広域停電は、バックアップエネルギーの重要性を教えている。都市ガスはエネファームのように発電機能を発揮する。
・松江市も金沢市同様、管路は地域に閉じたもので、狭いエリア供給だからこそ細部まで熟知されている強みがある。だから、地域の様々な課題にエネルギー供給を通じて貢献できる。エネルギー公共政策、まちづくりに力を発揮する潜在能力を持つ。
・職員には、営業マン的な感覚だけではなく、政策遂行者としての意識が望まれる。公営企業管理には、そのための人事や政策的な公営企業の制度的な改革の先頭に立つべきだ。
・一旦、民間譲渡してしまえば、料金体系の適切な設定や利益配分、財務状況などがブラックボックスに入ってしまう。ライフラインでありながら、行政も議会も関与できない。私企業となれば、株主配当、役員報酬、道路使用料、公租負担などが生じるが、それが適切に行われるかチェックできない。経営上の秘密になるからだ。
 例え、職員派遣しても、次第にこうしてエネルギーインフラから市行政は遠ざかっていくだろう。
・また、公的関与は、民間会社化の目的とは真っ向から反する。仮に3割程度市が出資して発言権を得ても、私企業の経営論理を超えて経営を左右できるものとはならないだろう。これらが、ヨーロッパの民営化で事実となり、再公営化の動きになった。
・金沢市は、経営状態は良好であり、他からの民間参入の環境もないものを売り払いなどもったいない。小売自由化の推移を見極めてからでも遅くない。

■終わりに、石川さんは、ドイツで広がるシュタットベルケ(まちの事業)ね可能性と日本での導入の必要性を語った。

・シュタットベルケは、水、エネルギー、公共交通、廃棄物、文化施設など暮らしに関わる公共分野を連関させて経営する公益事業体だ。生み出した利益は、公的政策の原資に使われる。相互補完も可能だ。
・日本政府は、公営企業の連結決算すら認めず、経営の自由度を縛り、廃止、民間市場化を誘導している。市民的な共通資本・公共財を守り、発展させる政策転換が必要だ。その問題意識を今こそ広げる機会だ。

 この視察は大いに参考になった。

 

世田谷区保坂展人区長との政策意見交換

 1月29日夕刻からは、私が市民派政治家のロールモデルとして尊敬する保坂展人世田谷区長と、しばらくぶりに政策論議の機会を得た。保坂さんの友人で、発達障がい児支援や種々のコミュニティビジネスを手がける元国会議員Tさんも途中から加わって、議論に花が咲いた。

・世田谷は、保坂さんが区長になってすぐに、3.11を教訓に、再生可能エネルギーの導入に大胆な施策を取り入れた。福島の自治体と連携して再生可能エネルギーの買電協定を結び、支援と同時に、再生可能エネルギーの世田谷を発信した。それを担う「みんなの電力」株式会社を通じ、長野県から水力発電電力を買電しているという。東電よりは安く、しかし長野県には高い料金設定で買電している。
・区内に発電所を持たない世田谷が、再生可能エネルギー政策を自治体間連携で進めている。その世田谷から見れば、水力発電所をもち、都市ガスからエネファームで発電もできるプラントを持つ金沢市が羨ましいという。売却なんてもったいないと、二人は口をそろえる。
・時代の要請からクリーンエネルギーは付加価値を高めていく。都市経営の財源を生み出す可能性が高まるガス事業・発電事業は金の卵だ。

 今日の談議がこういう展開になるとは予想外だったが、示唆が多いひと夜になった。 保坂さんや新電力関係者を招いた金沢市民集会の話も持ち上がった。  
    ー再生可能エネルギー政策が新たなまちを創るー


しばらくぶりに世田谷プレーパーク視察

 1月30日午前中は世田谷区視察。今回は「子ども支援施策」を調査テーマとした。

ベース オブ プレイを略してBOP事業

・ベース オブ プレイ(BOP)事業は、子どもの遊びの拠点のこと。新BOP事業とは、・放課後児童クラブと一体的にすべての小学校毎に学校施設を活用して実施している!
・事務局長を退職校長が務めることで、学校側との意思疎通が円滑になる。授業と放課後活動が、フレキシブルに隣り合う。なんとも世田谷らしい。

せたがやプレーパーク

・世田谷区は、伝統的に子どもの遊びを重視する。とりわけ外遊びを子どもたちに返していく。それが冒険遊び場プレーパークだ。三度目の視察は、世田谷公園内の世田谷プレーパークを訪問した。近くの幼稚園の子どもたちが元気に遊びまわっていた。
・世田谷では、プレイリーダーの呼び名をやめ、プレイワーカーが、子どもたちを見守る。呼び名変更は、決して子どもの遊びを指導するのではないという意識を徹底する。事業を受託しているNPO法人プレーパークせたがやの理念も進化している。
・そのワーカー女性と話を交わせた。ここでも担い手の確保、処遇の引き上げだ。住宅街に立地している烏山プレーパークでは、焚き火に苦情が出ているそうだ。子どもの遊びを大切にする世田谷でも住民意識には気を遣っている。

 それでも、世田谷区は5つ目のプレーパーク設置を準備している。
    
    

   ■まとめ

 私は世田谷イズムを評価する。そして、金沢にも子どもの冒険遊び場プレーパークをつくりたい。諦めてはいない。心身を使う遊びは成長の肥やしに満ちている。現代の子どもが抱えている人間的な成長課題に好影響を及ぼすに違いない。

 金沢には場所はある。行政の公園管理の発想転換と担い手発掘次第だ。