現場のリアルから、公共交通の課題を学ぶ

公共交通の持続可能性には新しい公共的な経営手法を

「現場のリアルから、公共交通の課題を学ぶ」

 市民発の政策提言運動に取り組む「市民の政策研究会〈くるま座〉」が、3日、座員のバス運転手から講演を受けて学習会を開いた。

 人命を預かり、たくさんの乗客を運ぶ 

 日本の地方公共交通は、民間会社が担ってきた。民間任せの公共交通施策は、コロナ禍による経営危機に運転手不足という悪循環から限界点に達している。

 しかも、民間バスの運行は、たった一人の運転手にゆだねられている。私が子どものころは、車掌が乗り込み、乗客に関わる業務を担っていた。それらが安全運転が絶対とされる運転手一身に集中しているのだ。その緊張感やストレスは並大抵ではない。時間外運転勤務なしでは生活が成り立たない基本賃金の低さと相まって中途退職が後を絶たないのだ。

 金沢市は、7年計画の第2次交通戦略を再来年には完結させる。都心軸に導入する新交通システムの機種選定(LRT or BRT?)である。これも重要な課題だが、重要路線のバスを再編して利便性を上げ、コミュニティバス、タクシーとも有機的に結んだ市域全体の交通ネットワークを強化することが目指されている。これを丸ごと民間交通事業者にゆだねることはできない。不採算部門の下支えなしに、容易に経営が成り立つとは思えないからだ。

 ヨーロッパの公共交通では常識となり、富山市、宇都宮市で次世代型路面電車(LRT)を経営する公設上下分離方式(インフラ部分は行政が公共的に所有管理し、運行は交通事業者が担う)など新たな公共的な仕組みが必要だ。

 公共交通の危機の時代、これはもはや待ったなしだが、まちづくりの基礎としての「都市の装置」、基本的人権としての移動の自由権を自治体が住民に保障するという社会的コンセンサスが図られなければならない。そのためには、行政が腹を据えた説得責任(森前富山市長の言)を果たせねばならない。

 市民の政策研究会は、2015年2月にまとめた「金沢国際地方政府宣言」(第1稿)の見直しワークを月曜夜、月2回のペースで進めている。 

 宣言は、中央政府と対等に、国際的な自治体連帯の下で、住民の基本的権利にこたえる自治体住民主権を標榜する。