身命を賭して絶対に戦争をさせない決意

身命を賭して絶対に戦争をさせない決意

 昨夜の石川県憲法を守る会定期総会での徐勝講演は、平和憲法改悪阻止を掲げる私たちに、政府に戦争をさせないために、身命を賭した闘いを促すものだった。国内報道では伝えられない事実、そしてベクトルが正反対の朝鮮半島事態への見方。150人を超える参加者は、日本の歴史的清算のつけを自覚し、民族間の差別構造と私たちに深く内面化してしまっているアジア差別の克服をおいて、平和憲法の建前から実質へと脱却することはできないと鋭くも人間的な問題提起を受けた。

IMG_2759徐勝講演の要旨
・平昌オリンピックとは、韓国にとって、朝鮮半島で絶対に戦争をさせず、戦争危機を反転させて平和への道を切り開く最後のチャンスと位置づけられてきた。文在寅大統領は、対北朝鮮、対トランプ政権を相手に、綱渡りのような困難な外交をまさに命がけで推し進めた。独自制裁解除を容認させただけではなく、アメリカからは、米韓軍事演習の一時モラトリアムも引き出した。
・対米直接交渉の実現から米朝平和条約締結を目指す北朝鮮金委員長は、誰も予想しなかった妹金与正宣伝部第1副部長を代表団として送り込むという形で文大統領の融和外交に最大限の信頼を示し、応えた。これに南北国民は、韓国一部保守層を除いて大きな国民的共感を持って受け入れた。
・ところが、安倍首相は、これに「狼藉」というべき無礼千万な振る舞いで冷や水を浴びせ、「微笑み外交に騙されるな」「即時演習再開」を主張して、平和への命がけの努力に背を向けた。対朝鮮半島外交の質が真っ向から違っていることが露呈した。この発言は、内政干渉であると文大統領から叱責されている。
・日本のメディアはこれに追従し、日本国民世論もそれに誘導されている。この「脅威論」が、9条改憲を容認する世論誘導でもあることに深刻な懸念を表明する。
・それにしても、平和憲法下の日本の戦後は、実態において平和国家と言えるものだったのか?植民地支配と侵略に対する清算がなされないまま、はやくも朝鮮戦争で海軍は掃海作戦に参戦。以後ベトナム戦争で後方支援、アフガン、イラク戦争へとその敷居は下げられてきた。今や世界有数の軍事大国だ。これらの歴史的自覚と総括なしに、「平和国家の建前」を振りかざしても、そうした護憲運動はアジアの信頼を得ることはできない。
・そしてまた、韓国軍も、植民地支配のもとで旧日本軍によって育成された親日派の流れを断ち切らず、日本軍の精神性を引き継いでベトナム戦争、済州島事件など国の内外で民衆虐殺に手を染めてきた。私はその自覚を求め、韓国軍をも批判してきた。非抑圧者が真に独立するには、植民地主義の残滓からの脱却ができなければならないからだ。
・オリンピック終了後の問題は、この米韓共同軍事演習が再開され、再び軍事的緊張が高まるのかということだ。文大統領は、停止の継続は難しくても、規模の縮小を実現させ、米朝対話の道筋を進展させたい。これに挑戦するはずだ。
・日本は、この命がけの文外交にどう向き合うのか?そもそも北の核ミサイル開発は、日本をねらったものではない。対米交渉のための手段である。中国がアメリカとその同盟国の包囲の中で、核開発を成功させ、核保有国としてアメリカの承認を受け、大国の道を歩んできたこと、逆に、核を持たない反米国家はアメリカ(同盟国)の軍事力によって倒壊させられてきた歴史に学んでいる。
・日本が平和を求める立場ならば、アメリカの核の傘に頼るのではなく、米朝直接対話を支持し、戦争危機を解消する方向で協力するべきだ。しかし現実は、必死に平和への道を模索する文大統領に対し、平和を軽蔑し人の善意を冷笑しながら、戦争のカードを弄ぶ安倍の対称が、東アジア政治の構図を克明に浮かび上がらせている。
・日本の自衛隊は、韓国軍と同様に、米軍に指揮権を掌握されている。朝鮮軍と対峙するのは国連軍だ。従って、在日国連軍基地(実質的に米軍)からの演習参加は内政干渉には当たらないとされる。アメリカが戦争意思を発動すれば、確実に自衛隊は韓国、朝鮮半島に派兵されるだろう。「他国に出て行けるようにしないとアメリカに守ってもらえない」との理屈では、これに太刀打ちできない。今や、日本は平和国家ではなく、東アジアにおける平和を脅かす勢力として登場しているのだ。
・日本の護憲運動は、9条の神聖化・美化によって、法政治的リアリティを失っている。条文主義の護憲から脱却し、平和を目指して信頼をつくり出す具体的な行動を起こすべきだ。金沢には、尹奉吉義士記念事業を通じて国境と民族の壁を越え、日韓の民衆が交流・協力する先進的実践がある。共通の目標を持つ交流を進め、信頼を築き、平和の共同体へ両者がとけ込む経験を活用し、広げてゆくべきである。東アジアにおいては、9条の外見を振りかざし正当性を弁証することよりは、中身の具体的な実践を工夫することが肝要である。(以上)

    徐勝さんは、最後に質疑の中でこう述べた。「韓国人には、心底日本人が嫌いだという人は多くはない。寧ろ日本人に好意を抱く若者は増えている。東アジアの歴史の文脈の中で日本を問い直し向き合うことができれば、友情を結ぶことができる。政治によってつくり出されてきたものを自覚し、主体的になることだ。」感銘深い。

IMG_2761〔決定された憲法を守る会2018年度方針〕
(1)会員の拡大を図るとともに、各地域での憲法を守る会の組織化にとりくみます。
(2)「5.3憲法集会」、「11.3憲法集会」を開催します。
(3)憲法改悪阻止!戦争法廃止!を呼びかける八団体及び県内ネットワークの拡大を目指す(仮称)「安倍改憲NO!市民アクション・いしかわ」が開催する県民集会等に積極的に参画するとともに、戦争をさせない1000人委員会・石川、「いまを考える市民ネットワーク」等の多様な市民活動との連携を強化します。
(4)安保法制、共謀罪法をはじめ違憲立法の廃止を求める県民世論を喚起します。
(5)新市庁舎前広場使用不許可違憲訴訟の勝利を目指し、弁護団、県内外の護憲団体、学者、市民と連帯してたたかいます。
(6)マイナンバー離脱請求訴訟に参加し、国家による個人情報の一元管理に反対します。
(7)安倍改憲の問題点を学習し、「安倍9条改憲NO!憲法を生かす全国統一署名」の目標達成に総力を挙げ、憲法改悪阻止のたたかいを強めます。
(8)第55回護憲大会に参加し、全国の護憲運動に連帯します。
(9)「護憲ティッシュ」やチラシ配布を行い、定期街宣を強化します。
(10)実行委員会方式で取り組む『標的の島 風かたか』県内縦断上映運動に積極的に参加し、米軍新基地建設、自衛隊配備拡大に反対する沖縄のたたかいに連帯します。
(11)各採択区で活動する市民団体、教職員組合等と連携し、つくる会系の教科書採択を排し、適正な教科書採択を求めます。
(12)日韓、日朝、日中友好を目指す市民団体の活動に連携し、積極的に共同します。
(13)性的マイノリティ(LGBT)への差別や虐待問題など新しい人権課題や貧困問題に対し、社会法律センター弁護団、議員団、関係市民団体と連携してとりくみます。

総会アピール

本年の年頭記者会見において、安倍首相は、「今年は、国民の皆様に憲法のあるべき姿をお示しする年」と改憲への意欲を語りました。権力者があるべきものとして示す規範が憲法であるなど、私たちはそのような倒錯は断じて容認しません。

安倍政権は、特定秘密保護法に始まり、集団的自衛権容認の閣議解釈改憲、その法制化たる平和安全法制、さらには刑法の原則を覆す治安立法である共謀罪法をも数の力で強行成立させました。これらの違憲立法によって、日米の軍事的一体化は強まり、日本国憲法は瀕死の状況に立ち至っています。そして、国会での圧倒的多数という今日の状況に乗じて、安倍政権は、いよいよ悲願である明文改憲を政治日程に上げてきました。
その焦点として予想される9条改憲と緊急事態条項の創設は、いずれも、三大原則である平和主義、基本的人権の尊重、主権在民の破壊であり、国民を統制し、戦争のできる国へと大きく舵を切る憲法改悪に外なりません。この安倍改憲は、早ければ開催中の通常国会の会期中に発議を実現させ、秋口ないしは、遅くとも2019年には国民投票に持ち込むことを狙っており、事態は重大かつ切迫しています。

本日の記念講演において、徐勝立命館大学コリア研究センター研究顧問から、戦争法制と改憲のテコに利用されている「朝鮮半島危機」「北朝鮮脅威論」に、米日権力のアジア支配の思惑が働いていることに無自覚であってはいけないと警句が発せられました。私たち自身にある、戦後日本の「平和国家幻想」に対する鋭い問いも投げかけられました。
アジア発の再度の戦争を回避するには、朝鮮を威嚇する米韓軍事演習の再開に反対し、朝鮮戦争の終結と米朝平和条約の締結、南北の平和的統一に連帯する日本へと転換させなければなりません。それが私たちに課せられた責任であり、日朝国交正常化を支持する世論こそ、安倍改憲路線に対する痛撃となることを認識したところです。
平和、人権、共生を尊ぶネットワークを県内はもとより、国の内外に広げ、安倍改憲と戦争をする国づくりを包囲しましょう。そして、憲法理念にもとづく政治・外交をこそ求める大きなうねりをつくり出そうではありませんか。私たち石川県憲法を守る会は、本日の総会の名において、その中心となって奮闘する決意を表明します。
以上、総会アピールとします。
                             2018年2月27日
石川県憲法を守る会定期総会参加者一同