金沢市ガス事業・発電事業の一体譲渡問題 2020年のまとめ

 2019年6月の議会から1年半。7回の本会議、所管の建設企業常任委員会、ガス事業・発電事業民営化に関する特別委員会、さらには企業会計決算審査特別委員会での質問を通じて分かってきたことは、2016年に策定した「企業局経営戦略2016」(2025年までの行動計画)を中折れさせたということだ。
 
 ここには、エネルギー市場の完全自由化を既に織り込み、その対応戦略として、企業局自身が大胆な経営手法の転換を図り、総合ライフライン事業者として市民にインフラ責任を果たすとしていた。
 一方、コンサルタント業務に呼び込まれた英国本社のPwCアドバイザリーは、コンセッションを含む民間譲渡の道を示唆誘導しながらも、両事業には差し迫った譲渡の必要性を認めず、都市ガスの需要持続性、環境優位性を評価し、人口減少の影響を受けても、令和10年になお5.5億円の黒字事業を予測している。ガス小売事業は、構造上民営化しても経営改善は難しいとも明言して、民間譲渡が必ずしも解決策にはならないことを隠してはいない。
 
   水力発電に至っては、地球温暖化対策の要請から、相対的価値は高まり、金沢市の水力発電所は、自らが小売売電することにより、その収益、資産価値を大きく伸ばす可能性が高いと評価している。
 
 作新学院名誉教授の太田先生、京都大学の中山琢夫先生ともに、金沢の企業局は、最もドイツのシュタットベルケ(地方総合ライフライン公社)に近いと指摘している。シュタットベルケとは、民営化の弊害から再公営に踏み切ったドイツのスタンダードな公共事業体であり、出資を含めた住民参加、住民への利益還元、地域経済循環を果たして成長している。こうした世界の再公営化の潮流については、何度も議場で言及してきた通りだが、金沢市・企業局は国情報に頼り、直視しようとしない。
 
 視察先の自治労の公営企業局長は、公営事業の活性化のために、総務省に公営企業法の改正、制度の柔軟化を求めている。民間企業にだけフリーハンドを与え、公営企業は縛り続けているのはアンフェアだと。それでも、現行法でもやれることがあるとも指摘した。
 
 金沢市は、公営企業では新たな経営は何もできないかのように説明しているが、総務省、経産省も、困難は伴っても、ガスと電気のセット販売は法的制約なし、発電事業からガス事業への利益の移転は、投資、貸付で可能とか、公営企業のままで電力の小売も法的制約なしと答えている。しかも、これらの調査結果は、企業局公営企業管理者から報告されたのではなく、同コンサルタント業務の調査報告書から、議員サイドで探り出した事柄であり、当局の民営化路線には「不都合な真実」なのだ。市追従の監査委員会により棄却とはなったが、住民監査請求提出者の皆さんが、監査委員会な問うたのも、こういうことを独自に検証してほしいということだったと思う。
 
 一旦民営化し、民間独占が進めば、自由化の恩恵はおろか、ライフラインの保証もおぼつかなくなる。水貧困、エネルギー貧困という言葉が生まれたのだ。これが大枚の税金をはたいて再公営化を余儀なくされた欧米の先行経験なのだ。
 金沢市は、この事実を率直に認めず、公営亡き後の民間独占の行方を見ようともしない。わずか10%未満の出資、5年間の料金維持の約束で、公共的ガバナンスをどうやって効かせられるというのか⁈ そこに最大の無責任がある。
 
 企業局経営戦略2016には、シュタットベルケに通じるような公共的総合ライフライン事業者となって、市民に貢献する自由化時代を切り拓こうとの意思が込められた。だが、それを諦めさせ、道を閉ざす力が加わった。公的な計画が、総括なしに反故にされるのは理解に苦しむ。
 背景に安倍ー菅新自由主義による公営企業解体路線・竹中路線が透けて見える。
 
 
 民間譲渡が決するのは、来年6月議会での関連条例の改廃による。まだ半年ある。ガス事業は、「公共性の高い施設」であり、市有財産条例からの廃止には出席議員の3分の2以上の賛成が必要だ。13人の不承認で廃案になる。水力発電の譲渡にはさらに疑問を持つ議員は多い。
 
 基礎自治体である市が、水力発電事業を営み、ガス事業と共に100年以上の歴史を刻んでいる。稀有な金沢市だ。ますます高まる地域エネルギー自治。先駆的なエネルギー自治政策に市民が参加する新しい展開を私は夢見る。絵空事ではない。
 住民自治の力を集めよう。住民自治の出番を歴史に刻もう。
 
【関連委員会質問の観点】 ーこれら委員会会議録はこちらからー 論戦の経過資料として
■ガス・発電譲渡準備に関して〔2020.6.19 建設企業常任委員会〕
(1)アドヴァイザリー業務委託選定に関する情報開示について
   同 公募型プロポーザル実施要領に関し企画提案書及び関係書類は必要に応じて外部に開示される場合がある
   応募書類は情報公開・情報保護条例に基づき開示請求されたとき
(2)公募から選定の手続きについて
    金沢市委託業者公募型プロポーザル方式実施要綱
     予定価格500万円以上のとき 「金沢市入札契約手続き審査委員会の審議を経て」
(3)優先交渉権者の決定と議会審議・議事の関係性について
    柏崎市のガス譲渡の協定、仮契約 議会 契約 
     協定書、仮契約に留保条件つけてのことか?
 
■金沢市議会ガス事業・発電事業民営化に関する特別委員会 参考人招致〔2020.8.25〕 

  於 市議会第2委員会室 参考人:太田 正作新学院名誉教授

 参考人意見の要旨  ―太田さん使用スライド資料は別途印刷提供可能―
「私は民営化には慎重な立場です」と前置きして
【論点整理と管見】
1.ガス事業の自由化は、市営ガス事業の民営化を必然化させるのか?
   自由化(市場構造)と民営化(経営形態)の関係
2.ガス事業の自由化(完全市場化)は市民全体のニーズなのか?
   メリット実現の可能性とデメリット影響(市民生活への)
3.市営ガスの民営化(株式会社化)は、市民サービス向上に貢献するのか?
   地方公営企業の「役割の希薄化」は本当なのか?
   直営(公営)と民営(株式会社)のガバナンスの違い

【「自由化=民営化」ではない】
 この混同には整理が必要 
 自由化の中でも公的主体による所有や経営あり 逆に自由化を伴わない民営化もある
 独占市場(特定企業により、自由参入阻まれている)←→競争市場(誰でも、どのような企業もいつでも出入りできる)

 ◆独占市場には、「必要悪」のところがある 
 インフラの初期投資は大きい、すぐに撤退しても回収できない
 そうなれば、社会的に無駄が大きく、消費者利益、産業利益にならない
 従って、社会的規制(政府規制)により独占を前提として事前規制(参入規制)する 
 ◆競争市場は、競争により価格が落ち着き、消費者利益、産業利益になると考えられたが、
 「自然独占」が生じ、社会的規制が必要になった・・例えば、独占禁止法などの事後規制 
 しかし、これが現在は規制緩和の対象に
 ↓
 一番大きな問題は「規制なき独占」結果として競争市場にならない独占の復活という状況に
 ◆「民営化」とは何か 公的所有と経営 → 民間主体の所有と経営
  「小さな政府」「行政改革」(1980年代サッチャー、レーガン、中曽根)
  日本に於いても、一例として 
  ・新型コロナで保健所がパンク 保健所の半減、定数削減が背景にある
  ・自治体窓口の非常勤職員化が官製ワーキングプアを
  ・災害時の最後の砦である市役所の機能が果たせない
  ・水道事業では災害応援を組んできたが、長期派遣の余力がなくなってきた 
  これらは、「小さな政府」のぎりぎり経営では非常時に対応しきれないことを立証

【開放される市場規模】
 小売り全面自由化によって開放されるガス市場は、2.4兆円(需要家2600万件)
 ガス市場全体は4.9兆円 ―経済産業省―

【「適正競争」なくしていかなる「自由化」もなし】
 ガス小売り自由化に付随し、経過措置料金設定←電力・ガス取引等監視委員会が監視
 →金沢市公営企業では議会が経営状態をチェックするので、適用されていない 

【自由化(完全市場化)の手段としてのアンバンドリング】
 ガス製造事業・ガス導管事業・ガス小売り事業を分離し、それぞれに参入できるように
 但し、現在、ガス導管事業は、送電と同様に導管所有事業者一社体制を維持し、参入者は託送料金を支払うしくみ

【各事業者がPRするガス自由化のメリットとは】
 大別すると6類系 ①新たな料金メニュー ②ポイントサービス ③セット割引
  ④見守りサービス ⑤駆けつけサービス ⑥見える化サービス ―資源エネルギー庁集約―
 しかし、これらの中には、公営企業であっても工夫次第でできるものがある

【自由化の虚実(適正競争の具体的な課題)】
 ◆小売市場では・・長期契約(高額な違約金をともなう)
  差別対価(取り戻し営業における異例な安値提供等)
   セット割引(電気・ガスのセット供給のみに過度な割引)
 ◆卸売市場では・・卸供給交渉のあり方(新電力が卸供給交渉する際に小売部門に介在)
   電源開発の電源利用(自由化以前の電源基本契約の維持 受電先拘束)
   余剰発電所譲渡等(新電力からの余剰発電所の売却協議の拒否等)
   2018年、公正取引委員会が独占禁止法違反の疑いで大阪ガスを立ち入り検査
    過大な割引、過大な解約違約金を問題視

【適正競争に反する具体的事例】
 ・尺取り営業・・長期契約の巻き直し・・高額な解約違約保証料との抱き合わせ
 ・不当廉売・・・特定顧客のみをねらったピンポイント値下げ
  ―電力・ガス取引等監視委員会―
 こうした自由化の生々しい実状がある

【ガス自由化に伴う市民生活への影響(海外事例)】
 ◆家庭用ガス料金の推移(値上がり物価上昇率を差し引いても)
  英国、イタリア、スペイン、フランス、ドイツに共通
  アメリカテキサス州、ニューヨーク州でも共通 
  ブラックアウトの問題だけではない
 ◆英国の燃料貧困 家計に占めるエネルギー消費額割合が10%を超える世帯の増加
  北海道でもこの問題の調査が行われている
  英国家庭向け電気・ガス一括契約では(6大小売事業者に寡占化)
   2009年→2012年 12.5%値上がり

【自由な市場・料金のLPガス事業の現況】
  1999年ガス事業法改正 値上げは許可制、値下げは自由化
  → 価格競争起こらず一般ガスの1.86倍で高止まり
    ・・・競争促進が見込めないまま自由化すると都市ガスも値上がり促進の怖れ

【ガス市場における競争状況】
  工業用 ↑  家庭用 ↑  商業用 ↓
  スイッチング率・・累積で10%程度

【消費者のガス事業者スイッチング意向は低下傾向】
 2016.6月 → 2018.12月 意向10.1%と4.9%低下
  → 2019.9月 意向7.4%とさらに2.7%低下
  ―電通 定点観測より― 
 料金プランが複雑多岐、約款20ページなど面倒で消費者は乗り気ではないのではないか?

【金沢市におけるガス自由化の影響】
 ◆自由化の影響なし・今後競争が起きるのかも疑問
 ◆市営ガスとしての経営状態「極めて良好」
 ◆利益率(2018年13.8%)は民間他社(平均3.5%~5,5%)と比較して高い(水7.1%)

【市営水道・ガスの料金体系比較】
 ガスは多く使えば使うほど安くなる料金体系(水道とは逆)―従量逓減制―
 産業用は家庭用に比べて遙かに安い 家庭用から産業用へ利益の移転が行われている 
  ―金沢市企業局資料より―
 これを見直しすれば家庭用拡大の営業戦略にもなりうる 公営だからこそできる

【ガス・発電事業のあり方検討委員会答申】
 掲げる4理由(1)多様なサービス提供困難(公営企業法の制約)
 (2)地方公営企業としての役割の希薄化(3)経営環境の厳しさ増す (4)株式会社による一体経営により克服 
 いずれも説得力がない

【市営ガス事業民営化の全体像】
 全国で例を見ない既に経営統合されている5事業から
 ガス事業部門と電力部門を切り出し 「公私混有」の株式会社へ
 これをどのような手法で行おうとするのかが述べられていない
  ・・電力小売なら北陸電力の送電線を使うしかない 
 では北陸電力が引き受けていくのか? 市当局は手法を示していくべきだ

【市営ガス事業をどう評価するのか】
 現在の企業局は最もドイツのシュタットベルケに近い
  これが改革の方向性になりうる
 「民営化のメリット」に照らして「理由」に疑問
 「一体的運営により課題解決実現の可能性」というが、既に5事業は経営統合されている
 「自由化のメリット」← 矛盾 →「需要構造の変化」

【市営事業をめぐる多様な経営形態】
 経営形態の3つの視点 ◆運営主体がだれか 
  ◆所有関係がどうなっているのか ◆ガバナンスがどう執られているのか
 市営事業は 住民・議会により統制・関与 ←→ 株式会社は 株主総会での株主判断
 公営企業法の改正により付帯事業に関する規制が一部緩和 今日この趨勢にある
  公営発電所は増加している
 さらなる自由度を確保するための法改正を目指す
 地方公営企業・・公営企業管理者は事業においては市長同格の権限
 (例えば資産登記は管理者名、財源確保、労働組合はストライキ権以外基本権保有)
 これらを活かした新たな時代の経営を展望する

【結論 公営ガス事業の社会的価値と使命】
1.社会的必需性(安全・安定な生活を支えるガスの共同消費)の供給
 共同消費財としての利用可能性を常に確保(技術と価格)しつつ、供給責任として安全性と市民生活に責任を負う
  (社会的共通資本)
2.住民自治のガバナンスにもとづく市民参加による経営の実現
 地方公営企業の管理者制度を住民自治による公的ガバナンスの下で改革し、事業特性に応じた「経営と行政の自立的な統合」を図る
3.持続可能なまちづくりと地域エネルギー管理による地域の持続に貢献する
 都市インフラおよび地域エネルギーの視点にもとづく地域持続の視点を持ち、直営体制(総合行政)のもとでのまちづくりと戦略的な連携を図る

■高橋元あり方検討委員会委員長参考人招致
 〔2020.9.24 金沢市議会ガス事業・発電事業民営化に関する特別委員会〕 

第3回金沢市ガス事業・発電事業あり方検討委員会 議事録

議事(1)ガス事業・発電事業の今後のあり方について
  (2)経営形態の比較について
  (3)ガスと水力発電の一体的な事業運営について

議事録から経過をなぞると、この4ページ~5ページの委員長はじめ委員間討議が分岐点ではなかったかと思われる

佐無田委員が、「その地域のエネルギー政策のあり方に関しては、これからさらに地域エネルギー政策という形で、自治体が主導するということを担っていかなければならないのではないかと思う。市の主導性として行政が方向性を示し、推進していくという役割があると思っている。」と発言したことに対し、

高橋委員長が「それこそ理念としてはあるのかもしれない。民間企業が主体的にガス事業を運営している中で、そこまでのことを金沢市が積極的に取り組む必要があるのかと疑問に思っている。皆様の意見を聞きたい。」と返している。

青海委員「市の環境基本計画の大方針の中で民間を誘導するという視点は持つべき」と賛意

ここで高橋委員長は「金沢市が公営で担ってきた責任があるので、今後の事業の展開に当たっては、市民を不安にさせないよう、一定の関与をすることを確認し、その上で望ましい民営化のあり方についての議論を進めていくということでいかがか。」と方向整理をするが、

佐無田委員から「それは違うと思う。民営化のあり方を進めるとはどこにも書いていない。地方公営企業としての事業のあり方はもう少し柔軟に考えていくべきではないかというところが今回のまとめである。その上で、民営化のあり方を考えるというところまでは、まだ進んでいないのではないかと思う。」と反論されている。

6ページでは、地域団体の委員から「市の管理・関与や経営マンのご指導を頂きながら地域のことは行政が主体というのが理想である。」との意見が出されるが、

経営企画課長が 「国の積極的継続的な監督・監査が行われるので無秩序になるということは全くない。」との補足説明

佐無田委員は、これにも反論「都市計画、環境計画的な関りから、市がきちんと方向性を示しながらエネルギー政策についても管理・関与していくことを確認したい国がきちんと関与しているから構わないというのは違う。」
かなり激しいやり取りが行われたと読める。

この後、経営形態の比較から、株式会社形態の議論へと移り、市の出資比率、経営と出資の分離などの議論を通じ、市の関与の多寡・強弱が参入企業の経営の自由度との関係から論争になる。株式会社形態にあっての「市の公共管理責任」が佐無田委員から強く提起されている。

そこで、
1.「地方公営企業としての事業のあり方はもう少し柔軟に考えていくべきではないかというところが今回のまとめである。その上で、民営化のあり方を考えるというところまでは、まだ進んでいないのではないか。」これは、「株式会社化イコール民営化ではない」との問題提起であり、諮問された経営形態のあり方を論じるうえでの根本的な課題意識がずれているとの指摘ではないかと思われるが、この議論は果たして解決したのか?

2.出資比率に対する議論は、市の公的関与という市民に対する責務と譲渡先事業者の参入のしやすさが天秤に架かるような論争だが、答申としては収れんされたと認識しているか?

3.共に100年に及ぶ公営事業であるガス事業と発電事業のもつ公益性を担保し、さらに新たな時代を展望する公共性の高い経営形態について、議論は深堀りされなかったように見受けられるが、答申を急いだのか?

4.市により、「答申を踏まえて」と基本方針骨子が公表され、基本方針となったが、

最も議論となった答申の留意事項の第1(1)地域のエネルギーのあり方に対する市の責任が、基本方針からは消えている (3)事業譲渡先への金沢市の出資には、「柔軟な企業活動を阻害しない範囲内で出資」が加えられている。答申とりまとめの責任者として、基本方針をどう受け止めているか?

5.譲渡業務アドバイザリー業務委託公募型プロポーザル選定委員として、応募事業者の数、選定までのプロセス、選定結果に対する率直な感想を。

■企業会計決算審査特別委員会 書類審査の申請〔2020.10.14〕 

 申請者 みらい金沢 森 一敏
 企業局所管分
 1.ガス事業特別会計
 (1)ガス事業・発電事業あり方検討委員会について
  ①予算執行の内訳を示す書類
  ②執行事業に関する出金書類、領収証 
  ③資料作成に関するサポート事業についての入札関係書類、契約書類、業務に関する報告書面
 (2)販売促進のとりくみ状況について
  ①家庭用エネファーム等販売促進活動に関する企画書、実施、成果を示す書類
  ②事業用ガス販売促進に関する企画書、実施、成果を示す書類
 (3)原料調達の状況について
  ①原料調達に関する契約、精算に関する書類
 (4)譲渡予定固定資産の「簿価」を確認できる書類
 2.水道事業特別会計について
 (1)ヴェオリア・ジェネッツとの料金徴収部門の委託契約について
  ①業務委託に関する書類(入札、契約)
  ②業務報告に関する書面
 3.発電事業特別会計について
 (1)北陸電力への卸売電について
  ①売電契約に関する書類
  ②売電精算に関する書類
 (2)ガス事業・発電事業あり方検討委員会について
  上記1.(1)と同じ
 (3)上寺津発電所タービン更新事業について
  ①事業契約に関する書類
  ②事業執行に関する書類
 (4)譲渡予定固定資産の「簿価」を確認できる書類

■企業会計決算審査特別委員会〔2020.11.12〕
  質問 森 一敏

企業局所管分 追加審査
 1.ガス事業特別会計について
 (1)家庭用エネファーム(都市ガス燃料電池)の環境優位性、停電時の自家発電機能による代替性を活かした危機管理       政策上の位置づけは為されてきたのか?
 (2)特に事業用の都市ガス拡販の計画医的な取り組みを高く評価する。事業者への都市ガス拡販のとりくみで得た都市ガスの優位性の評価を家庭用拡販でいかに活かせてきたか?
 2.ガス事業・発電事業あり方検討委員会について
 (1)あり方検討委員会設置の所期の目的とその達成に関して
  ①4回の会議で答申取りまとめに至ったのは、検討委員会運営の規定方針か?
  ②「経営戦略2016」にもとづく両公営事業の意義目的、気候変動に対応するエネルギー自治政策の議論が従になり、譲渡形態が主たる論点となっていったのは、設置目的からの離反ではなかったのか?
  ③あり方検討の根幹部分での意見の相違、論点についての検討委員会としての独自の調査や議論をなぜしなかったのか? 
 (2)あり方検討支援業務に関して
  ①業務委託の目的・必要性は何か?
  ②入札はどのような手続きで行われたのか?
  ③支援業務委託報告資料は、あり方検討委員会でどのように供されたのか?
 ―報告資料の内容に関わってー
 ア:ガス事業の経営環境にマイナスの影響を与えるのは、全面自由化後の競争環境よりも人口減少としている。
 イ:発電事業は、非化石電源として相対的に価値が高まると評価している。
   ガス事業にも長期的にみても環境負荷低減を見据えつつも役割を拡大していく重要なエネルギー源であり、需要は維持されると評価している。
 ウ:「経営形態の選択肢の整理・比較分析」では、出資比率による公的関与の度合いと行使権限の違いが一覧で掲載されている。
 エ:選択肢としてドイツの都市のシュタットベルケの実例が挙げられている。金沢の可能性にも言及 法的制約、規模の制約、電気小売り参入の難しさを困難要因と評価している。
 オ:「経営形態の整理」では、市民に安心をもたらす庁内調整、住民説明、公共関与を経営の柔軟性を阻害するものとして対立的に位置づけている。
 カ:「経営形態の評価・結論」では、コンセッションには「再公営化」の可能性を指摘している。公共関与を排除する論理が貫徹している。
 ケ:「事業譲渡後評価」に関わり、R10年でも5.5億円の利益を見込んでいる。
 *半減の予測だが、譲渡を焦る状況にはないということだ。腰を落ち着けた市民的議論の余地がある。
 コ:本省へのヒアリング
   電力小売り・・・法令上の制約無し
   ガス発電セット販売・・・法令上の制約無し(経産省)
   公営でセット販売を行う理由が不明、経理上の困難(総務省)
   電力利益をガス導管事業に活用すること
    ・・・出資と長期貸し付けが可能(総務省)法令上の制約無し(経産省)
 サ:答申後の民間企業へのサウンディングの目的は?
   スケジュールへの注文、議会関与、公的関与への否定的見解
 3.出張について
 (1)出張先選定の目的と内容はどのようなものだったか?

■建設企業常任委員会 〔2020.11.17〕
  質問 森 一敏
 その他として
 (1)第1次審査に関する進捗状況について
    事業者応募の状況
 (2)昨年のあり方検討支援業務に関して
   ①これを入札で行うことを議会に対して報告していたのか?
   ②PwCアドバイザリーによる2018年報告がありながら、あり方検討支援業務をまた委託する必要性はどこにあった のか?
 ―報告資料の内容に関わってー 決算審査特別委員会と同内容

■ガス事業・発電事業民営化に関する特別委員会 
 とりまとめに関する意見〔2020.11.24〕委員 みらい金沢 森 一敏

前文に盛り込む事項
□ガス事業・発電事業民営化が、約100年の歴史を刻むエネルギーインフラという市民資産の売却譲渡という大きな問題である。本特別委員会は、それが故に、市民への説明責任を果たし、議会として適切で主体的な判断を行う上で、独自の調査審議が必要との判断から設置された。その職責を果たすために、企業局からの数次に亘る聴取に加え、4人の参考人招致を行うと共に、先行自治体等への文書調査を行うなど精力的に取り組んできた。
□各特別委員会の概要
□参考人意見の要旨
①7.21 福井市におけるガス事業民営化について  谷澤 正博 福井市企業管理者
 「2013年~2016年 将来を見据えてあり方検討。市債残高40億円を下限に最低譲渡価格設定(42億円)し  
67億円で譲渡となったことに正直にホッとした。良かったか悪かったかは10年後、20年後に評価されるだろう」 ②8. 4 公営企業の民営化をめぐる評価 野村 宗訓 関西学院大学教授
 「多様なメニューによる錯覚、困惑独占に留意すべき。エネルギー困窮者への配慮を要する。世界の投資ファンドの動き 
により投資環境は大きく変化している。「民営化においては、競争のみではリスクがある。公的規制がポイントとなる」 (欧米再公営化の教訓に言及)
③8.25 金沢市営ガス事業の民営化による効果と市民への影響等について 太田 正 作新学院大学名誉教授
 「自由化=民営化ではない。公的所有から民間所有への移行。しかし、独占市場を競争市場化しても、自然独占が起きる。インフラには、社会的規制が必要。『自由化の虚構』は大阪ガスなどで実例(独禁法違反で立ち入り検査)。現在の企業局の形態は最もドイツのシュタットベルケに近く、改革方向になり得る。」
④9.24 高橋 啓 金沢学院大学副学長(元ガス事業・発電事業あり方検討委員会委員長)
 「株式会社をめぐる議論はあったが、認識の違いは無かった。出資比率までは触れるべきではないと合意した。公共性の  担保については議論は尽くした。『金沢市のエネルギー政策への責任』が消えたことなど答申と基本方針の違いについては、市の判断である。」

1.企業局からの聴取にもとづく特別委員会における議論と意見
(1)民営化による効果について
□両エネルギー市場の自由化への対応として、両事業を一体で株式会社へ譲渡する方針であるが、自由化イコール民営化ではないとの指摘がある。新たな株式会社の設立と譲渡が、エネルギーインフラの公共性と持続性を確保するには、公的な関与やガヴァナンスが必要であることは識者の一致した見解であった。
□市民の利益とは、多様なサービスの享受に止まるものではなく、エネルギー貧困をつくらず、気候変動などの今日的課題に応えるエネルギー自治政策によって、持続可能な公共社会を保障することである。
□これらの課題に照らしたときに、両事業の一体的株式会社譲渡方針の妥当性については、懐疑的な意見も出されているところである。
□公表された募集要項に即して以下が指摘された
・両事業は9年間10億を超える黒字決算を続けている。最低譲渡価格には固定資産価格以外の事業の将来評価などが考慮されていないため、大きな含み資産を無償で提供することになりかねない。
・負債を償還し終えた発電事業はなおさら経営良好事業である。これを一緒に売却するのは、理解できない。生け贄とするに等しい。
・募集要項の出資比率や経営監視期間、譲渡禁止規定などは、公的関与の実効性と永続性に十分ではないとの意見がある一方で、民間会社の経営の論理とは矛盾し、民営化によるメリットとの整合性がとれないとの指摘もある。
□新型コロナ禍の最中にあって、十分な市民的認知が困難である上、民間事業者にとっては経済的打撃による不確実性が高まる状況である。譲渡により期待されるサービスの向上や多様化の前提となる投資環境、収益構造は楽観できない。譲渡は慎重な検討を要するとの意見がある。

(2)市民及び市政への影響について
□「企業局経営戦略2016」では、現在企業局が所管する5つの事業には、公共性及び公益性の確保が求められるため、今後も引き続き企業局が経営するものとし、「水」と「エネルギー」の総合ライフライン事業者として市民に貢献していく責務があるとしている。このため、事業活動を通じて永続的に目指すべき使命として、快適な水環境の創造とエネルギーサービスを通して、豊かな市民生活に貢献するとの経営理念を掲げている。
 経営ビジョンにおいても、重点戦略で「エネルギー自由化対応戦略」を位置づけ、電力・ガスシステム改革による事業環境の大きな変化に適切に対応し、公営エネルギー事業者としての価値向上を図るため、都市ガスの拡販を目指すとともに、電力供給のあり方を見直すとしている。具体的には、クリーンな都市ガスの地域への普及拡大のための事業基盤の充実強化、新たな営業戦略を展開する。電力供給のあり方の見直しでは、公営水力としての事業価値向上のため、北陸エリアの電力会社への卸供給というこれまでの事業形態を再検証し、適切な見直しを図ると大胆な営業戦略の転換を明記している。これらは、2022年(R 4 年4月)のガス導管部門法的分離に至るエネルギー市場の自由化を見越して策定されているものである。
 この公式10年計画から大きく逸脱し、民営化へと舵を切る両事業の一体譲渡方針が果たして公営事業に安心、信頼感を寄せる市民に理解、支持されているといえるのか疑問がある。市民への説明と意見聴取は不十分なままにとどまっている。
□両事業が生み出してきた収益は公共的な富である。公営企業からエネルギー部門を切り離すことによりそれが流失すること、さらには、本市の主体的なエネルギー自治政策の展開を期待する上でももったいないとの意見がある。
□両事業を担う企業局職員の退職派遣制度の適用について、本人同意のあり方や処遇、公務職復帰に関して不安が払しょくされはいないとの指摘がある。本人の意向を尊重することを大前提に、丁寧で誠意ある説明を尽くす必要がある。

2.今後の対応について
□今後の優先交渉権者の選定、協定締結といった一連の譲渡準備スケジュールにおいては、民営化のメリットの確保と同時に、公共的なガヴァナンスの確保に対する見通しに関して、より深い検討が求められる。譲渡のスケジュールありきではない慎重な姿勢を求める。
□両事業の一体譲渡は、市民の共有財産の売却であり、社会的エネルギーインフラの制度的大改編になる。市民への情報提供と市民からの意見聴取を行い、民主的な市民参加の手法を取り入れること。
□今後の譲渡に関する準備手続きに関しては、適宜、議会への説明を尽くし、議会からの求めや指摘に対して、これまで以上に誠意をもって対応すること。

■ガス事業・発電事業民営化に関する特別委員会 〔2020.10.13〕
  質問者 森 一敏

【募集要項の公表と公募開始について】
「企業局経営戦略2016」、金沢市ガス事業・発電事業あり方検討委員会、募集要項における「市の関与」について
Ⅰ 改めての確認 「企業局経営戦略2016」 
 第2章 企業局を取り巻く環境の変化(4~5ページ)
(1)事業環境の変化
○ この新エネルギー基本計画(新たな「エネルギー基本計画」平成 26 年4月に策定)では、電力・ガスの市場の垣根を外していく供給構造改革の推進、市場の統合を通じた総合エネルギー企業等の創出とエネルギーを軸とした成長戦略の実現、重要な低炭素の国産エネルギー源である再生可能エネルギーの導入・推進等の方針が示されている。
 2015 H27 年4月 電力広域的運営推進機関創設
 2016 H28 年4月 電力小売全面自由化開始
 2017 H29 年4月 ガス小売全面自由化開始
 2020 R 2 年4月 電力送配電部門法的分離
 2022 R 4 年4月 ガス導管部門法的分離
 → この時点で既に電力とガスの全面小売り自由化を想定している
その上で  
(2)課 題
 ○ 事業環境の変化に適切に対応し、健全な経営を維持していくうえで、次のことが課題となっている。
 ◇ エネルギーの安定供給体制の充実強化
 ・ ガス導管網の新規整備や水力発電所の能力増強のほか、災害時供給の強靱化等による都市ガス及び電力の安定供給体制の強化。
 ◇ 料金水準の最大限の抑制
 ・ 都市ガス原料であるLNGの調達見直しや業務効率化等を通じたガス料金の最大限の抑制。
 ◇ 利用メニューの多様化
 ・ 新たなガス料金メニューの開発や付加サービスの創出によるお客さまの選択肢の拡大。
 → 「地方公営企業法の制約」は・・
 第3章 企業局の経営方針(7ページ)
 ○ 現在企業局が所管する5つの事業には、公共性及び公益性の確保が求められるため、今後も引き続き企業局が経営するものとし、以下に定める方針に従い、その経営を行う。
1.経営理念
 ○ 金沢市企業局は、ガス、水道、公共下水道、発電、工業用水道という市民生活や産業を支える「水」と「エネルギー」を総合的に担う総合ライフライン事業者であり、これらの適切な経営により市民に貢献していく責務がある。このため、事業活動を通じて永続的に目指すべき使命として、次の経営理念を掲げている。
「快適な水環境の創造とエネルギーサービスを通して、豊かな市民生活に貢献します」

2.経営ビジョン
(1)目指す姿 
 ◇ 総合ライフライン事業者としての「進化」
 ・ 経営資源の的確な強化を図り、水とエネルギーの安定供給体制及びお客さまサービスの継続的なレベルアップを目指す。
 ◇ 新たな事業展開への「挑戦」
 ・ 民間企業や近隣自治体の公営企業と連携した新たな経営手法を導入することにより、さらなる経営効率化を目指す。(3)重点戦略(8~9ページ)
 Ⅲ.エネルギー自由化対応戦略
 電力・ガスシステム改革による事業環境の大きな変化に適切に対応し、公営エネルギー事業者としての価値向上を図るため、都市ガスの拡販を目指すとともに、電力供給のあり方を見直す。
 ◇都市ガスの拡販
 ・ クリーンな都市ガスの地域への普及拡大のため、事業基盤の充実強化を推進するとともに、新たな営業戦略を展開する。→ 環境負荷の低減に都市ガスを位置づけている
 ◇電力供給のあり方の見直し
 ・ 公営水力としての事業価値向上のため、北陸エリアの電力会社への卸供給というこれまでの事業形態を再検証し、適切な見直しを図る。
 → 「地産地消」ばかりではない価値の見出しと売電手法の検討を示唆
 Ⅳ.連携戦略
 人口減少社会の到来に備え、民間的経営手法の導入や石川中央都市圏の上下水道事業の連携による事業運営の効率化等を図るため、官民パートナーシップや広域連携施策の研究を推進する。
 ◇官民パートナーシップの推進
 ・ 事業運営の効率化や技術力の維持向上を図るため、民間企業との新たなパートナーシップの構築を推進する。
 ◇広域連携施策の研究推進
 ・ 圏域の上下水道事業の経営基盤強化を図るため、広域研究会を設置し、新たな広域連携施策を研究推進する。
 → 事業主体は市企業局であり、その上での民との「連携」である

1.事業の現状と課題(12ページ~ )
(6)課 題(15ページ)
 ① ガスシステム改革への適切な対応
 平成 29 年4月に、ガス小売全面自由化が実施されるが、天然ガスパイプラインが未整備であることや、供給区域を接する都市ガス事業者が存在しない現状から、短期的に事業環境が激変する可能性は低いものと考えられる。
 しかしながら、新たにLNGローリー供給等との競争が生じ、業務用需要の減少リスクが高まる可能性も否定できないため、適時適切に対策をとっていく必要がある。
2.基本方針
 ① ガス自由化時代に対応した営業力強化
 来たるべき事業環境の激変に備え、価格競争力と付加価値を高め提案営業を強化することにより、既存需要の囲い込みと新規需要獲得を推進し、需要拡大を図る。
 → 状況予測は現在まで変わらず、ここから、「株式会社譲渡」、「民営化」を導き出すことはできない
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 Ⅱ 金沢市ガス事業・発電事業あり方検討委員会における「金沢市の責任と関与」
■第1回
 角田オブザーバー:「人材育成が難しい事業者が脱公営。自由化と民間譲渡との関連性では、自由化を背景としたものは大津の事例が唯一
佐無田委員:「エネルギー消費量は減らす方向性、再生可能エネルギー転換、分散型エネルギーの方向性、地域のエネルギー政策。大きなバックグラウンドとしてエネルギーの公共管理のあり方を念頭に置いて・・・」
■第2回
佐無田委員:「公共管理がきちんと効くことが地域行政として常に必要である。民間企業に地域独占的にやってもらうというのは、一番公共管理が効かない。民間の力も活用しながら公共管理が効く形を考えなければならない。地方公営か民間譲渡かの二者択一にはならないだろう。どういう組み合わせが金沢市として最適なのかという議論を。」
青海委員:「エネルギー政策ということで考えると、この委員会だけで結論を出していいのか? まだ議論の材料が不足している。」「公共がどこまで関与するのかという議論も必要である。」
角田オブザーバー:「地域エネルギーという視点はこれまでにはなかった。時代が変わってきている。」
■第3回
 議事(1)ガス事業・発電事業の今後のあり方について
   (2)経営形態の比較について
   (3)ガスと水力発電の一体的な事業運営について
 議事録から経過をなぞると、この4ページ~5ページの委員長はじめ委員間討議が分岐点ではなかったかと思われる
佐無田委員が、「その地域のエネルギー政策のあり方に関しては、これからさらに地域エネルギー政策という形で、自治体が主導するということを担っていかなければならないのではないかと思う。市の主導性として行政が方向性を示し、推進していくという役割があると思っている。」と発言したことに対し、

高橋委員長が「それこそ理念としてはあるのかもしれない。民間企業が主体的にガス事業を運営している中で、そこまでのことを金沢市が積極的に取り組む必要があるのかと疑問に思っている。皆様の意見を聞きたい。」と 返している。

青海委員「100年の歴史を踏まえて、市の環境基本計画の大方針の中で民間を誘導するという視点は持つべき」と賛意

ここで高橋委員長は「金沢市が公営で担ってきた責任があるので、今後の事業の展開に当たっては、市民を不安にさせないよう、一定の関与をすることを確認し、その上で望ましい民営化のあり方についての議論を進めていくということでいかがか。」と方向整理をするが、

佐無田委員から「それは違うと思う。民営化のあり方を進めるとはどこにも書いていない。地方公営企業としての事業のあり方はもう少し柔軟に考えていくべきではないかというところが今回のまとめである。その上で、民営化のあり方を考えるというところまでは、まだ進んでいないのではないかと思う。」と反論されている。

6ページでは、地域団体の委員から「行政が主導権を持ち、市民の立場に立って今までやってきた。市の管理・関与や経営マンのご指導を頂きながら地域のことは行政が主体というのが理想である。」との意見が出されるが、

経営企画課長が 「国の積極的継続的な監督・監査が行われるので無秩序になるということは全くない。」との補足説明

佐無田委員は、これにも反論「市の責任がどうなるのかという話だ。都市計画、環境計画的な関りから、市がきちんと方向性を示しながらエネルギー政策についても管理・関与していくことを確認したい国がきちんと関与しているから構わないというのは違う。」 かなり激しいやり取りが行われたと読める。

この後、経営形態の比較から、株式会社形態の議論へと移り、市の出資比率、経営と出資の分離などの議論を通じ、市の関与の多寡・強弱が参入企業の経営の自由度との関係から論争になる。株式会社形態にあっての「市の公共管理責任」が佐無田委員から強く提起されている。

佐無田委員:「拒否権を考えると33%まで出資した方が良い。絶対的に公共管理を徹底するならば、51%以上は持つというのは出資のコントロールについて重要になる。

浜崎委員:「市があまりにも関与すると受ける企業としてもメリットのないものは受けないということになる。市のコントロールばかりに力が入ってしまうと、譲渡・民営化する意味合いも薄れてきてしまう。」「(受け手の)譲渡価格だけで決めるのではなく、地元の安定感のある企業であるなど・・・半分以上持つというのは市としてどうなのか疑問に思う。」

高橋委員長:「民間のメリットをという形でなければ、ある程度柔軟な運営はできないのではないかと考えると、過半の出資はどうかと思う。ある程度市としてモニタリングする体制ができれば、出資比率にこだわらなくても良いのではないか。」

佐無田委員:「ドイツのシュタットベルケは自治体100%出資の株式会社。日本でも新電力で取り組まれ始めている。市が100%出資でも、経営は自立、分離で必ずしも民間のノウハウを活かせないわけではない。市が最終的に33%の拒否権等、方向性については口出しできる程度の出資は最低限必要ではないか。市が公共管理の責任を持つというのが第1義。」
■第4回
佐無田委員:「金沢市のエネルギーのあり方について、これを機会に市民に問題提起をするという形でオープンに議論を盛り上げてほしい。市民出資というものもあると思う。自分たちの地域のエネルギーのあり方を推進する会社に関わる機会についても検討していただきたい。」「一般的に言われている民営化とは違うもの。イメージとしては株式会社化と言った方がはっきりとする。」
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こうした幅のある議論の末にとりまとめられた「答申を踏まえて」と基本方針骨子が公表され、基本方針となったが、最も議論となった答申の留意事項の第1
(1)地域のエネルギーのあり方に対する市の責任が、基本方針からは消えている (3)事業譲渡先への金沢市の出資には、「柔軟な企業活動を阻害しない範囲内で出資」が加えられている
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 Ⅲ 募集要項
 市が新会社に行う出資の比率3%か10%未満、上限10億円と低く抑えた。見てきたように、あり方検討委員会では、市が新会社にエネルギー政策で関与できる公的ガヴァナンスを確保すべきだとして、最低でも33%から51%の出資、100%出資の公共的新会社論まで議論があった。
 だが、市は選定委員会を通じて新会社の自由度を優先した。
 この経営の自由度が、エネルギー自治、エネルギーインフラの永続性に逆行する例が、ヨーロッパの再公営化の引き金になったにも拘らず。経営の監視期間は5年が目途。その先はどうなるのか? 徹頭徹尾、参入事業者を優先し、市民の共有財産への責任を軽んじた募集要項により、公募が始まる。
 いわゆる単なる民営化=私企業化であり、公共的なエネルギー事業の私企業への切り離しに過ぎないものとなった。
◆「企業局経営戦略2016」はここまでを許容するのか?
  どのように整合性を説明できるか?
  2025年までの経営計画に対するクーデターではないか
  「研究と検討」なら早くとも2025年を区切りとする経営形態変更ではないのか。
  なぜ、2022年4月なのか?
◆あり方検討委員会を設置した意味は何か 答申をどう活かしたのか
  「柔軟な経営を阻害しない範囲内での出資」との基本方針文言は、いかなる議論と誰の判断で加えられたのか
  あり方検討委員会の議論で最も重要な「市の公共的な責務」は骨抜きにされたのではないか?意味を持ったのか?
◆「金沢市のエネルギーのあり方について、これを機会に市民に問題提起をするという形でオープンに議論を盛り上げてほしい。市民出資というものもあると思う。自分たちの地域のエネルギーのあり方を推進する会社に関わる機会についても検討していただきたい。」これは無視したのか?

■企業会計決算審査特別委員会 〔2020.11.25〕 
 質問 森 一敏総括質疑

3.ガス事業特別会計について
(1)家庭用エネファーム(都市ガス燃料電池)の環境優位性、停電時の自家発電機能による代替性を活かした危機管理政策上の位置づけは為されてきたのか?
(2)特に事業用の都市ガス拡販の計画的な粘り強い取り組みを高く評価する。事業者への都市ガス拡販のとりくみで得た都市ガスの優位性の評価を家庭用拡販でいかに活かせてきたか?
4.ガス事業・発電事業あり方検討委員会について
(1)あり方検討支援業務に関して
 4度の業務委託が行われるなど、民営化に向かう経営のあり方検討は、PwCアドバイザリーによる誘導の印象が拭えない。コンサルタント会社によるあり方検討支援業務と事務局たる企業局とあり方検討委員会の関係について、明確な答弁を求める。   
(2)あり方検討委員会設置の所期の目的とその達成に関して
 「経営戦略2016」においては、2020年4月の導管事業の法的分離までの自由化を織り込んだ上で、現在企業局が所管する5つの事業には、公共性及び公益性の確保が求められるため、今後も引き続き企業局が経営するものとし、「水」と「エネルギー」の総合ライフライン事業者として市民に貢献していく責務があるとしている。
 このため、事業活動を通じて永続的に目指すべき使命として、快適な水環境の創造とエネルギーサービスを通して、豊かな市民生活に貢献するとの経営理念を掲げている。
 経営ビジョンにおいても、重点戦略で「エネルギー自由化対応戦略」を位置づけ、電力・ガスシステム改革による事業環境の大きな変化に適切に対応し、公営エネルギー事業者としての価値向上を図るため、都市ガスの拡販を目指すとともに、電力供給のあり方を見直すとしている。
 具体的には、クリーンな都市ガスの地域への普及拡大のための事業基盤の充実強化、新たな営業戦略を展開する。電力供給のあり方の見直しでは、公営水力としての事業価値向上のため、北陸エリアの電力会社への卸供給というこれまでの事業形態を再検証し、適切な見直しを図ると大胆な営業戦略の転換を明記している。
 繰り返すが、これらは、2022年(R 4 年4月)のガス導管部門法的分離に至るエネルギー市場の自由化を見越して策定されているものである。

 他方、PwCアドバイザリーがこの間のコンサルティング業務報告書の中で述べている本市ガス事業売却による経営改善効果への疑問、競争環境の見通しから譲渡は緊急的課題ではないとする評価、環境負荷低減における都市ガスの将来展望、非化石電源としての水力発電事業の相対的価値の高まりの予測等の記述に着目せざるを得ない、

 この10年間の行動計画の枠組みから大きく逸脱し、民営化へと舵を切る両事業の一体譲渡方針が導き出されたのが、本市、企業局の主体的判断ならば、経営戦略のローリング、見直しを議会、市民的議論の中で行うべきではなかったのか?  これを怠った手続き上の瑕疵があるのではないか?
―PwCアドバイザリー報告資料の内容に関わって ー既出 割愛ー

■金沢市議会 ガス事業・発電事業民営化に関する特別委員会調査報告書〔2020 令和2年12月〕

1.はじめに

 本市では、100年近くにわたり公営企業として都市ガス供給事業が、また、全国的にも希有な存在である水力による発電事業が行われてきた。両事業は、市民生活に不可欠なエネルギーインフラであり、社会的共通資本というべき公共財産である。近年に至り、我が国において、エネルギー供給の自由化が推進される中、公営企業としての存立の必要性等からして、本市においても、これら事業の在り方について調査検討が行われてきた。市当局においては、その諮問機関である「金沢市ガス事業・発電事業あり方検討委員会」の答申を踏まえ、「金沢市ガス事業・発電事業譲渡基本方針」を策定し、これに基づき両事業の民間譲渡について、具体的作業を進めてきている。

 本特別委員会は、かかる状況に鑑み、本年3月定例月議会において「ガス事業・発電事業の民営化による効果及び市民への影響等について」調査検討することを目的に設置されたものであるが、今日までその使命を果たすべく精力的に調査を行い、議論を重ねてきた。その結果、委員各位から種々の見地に立つ多くの意見や要望等が出されたところであり、そうした中にあって、このたび特別委員会としての包括的な意見としてここに報告し、併せて市当局への要望とする。

2.調査の経過

 ガス事業・発電事業の民営化の必要性、そのメリット、デメリット、市民等への影響等に関して、本年3月24日から11月26日にわたり、下記表のとおり委員会を開催し、担当部局等から説明を聴取した。また、参考人として招致した学識経験者等からも意見聴取し、書面により他都市等での事例についても調査を行った。

 

開催日

調査内容

第1回

令和2年3月24日

正副委員長の互選

第2回

令和2年6月1日

調査テーマについて

 ガス事業・発電事業の民営化による効果及び市民への影響等について

第3回

令和2年7月1日

執行部からの説明の聴取及び質問応答

金沢市ガス事業・発電事業譲渡基本方針〔企業局〕

第4回

令和2年7月21日

参考人による説明及び質問応答

福井市企業局 

企業管理者 谷澤 正博 氏 他2名

第5回

令和2年8月4日

参考人による説明及び質問応答

関西学院大学 経済学部 

教授 野村 宗訓 氏

第6回

令和2年8月25日

参考人による説明及び質問応答

作新学院大学 

名誉教授 太田 正 氏

第7回

令和2年9月9日

参考人招致について

第8回

令和2年9月24日

参考人による説明及び質問応答

金沢学院大学副学長・経済学部長・教授

元金沢市ガス事業・発電事業あり方検討委員会委員長 

髙橋 啓 氏

執行部からの説明の聴取及び質問応答

 企業局及び関係課からの聞き取り

第9回

令和2年10月13日

執行部からの説明の聴取及び質問応答

金沢市ガス事業・発電事業譲渡に関する募集要項

等について〔企業局〕

第10回

令和2年11月20日

報告書について(協議)

第11回

令和2年11月26日

報告書について(協議)

3.調査検討の中で委員から出された意見等

 ガス事業・発電事業の事業譲渡については、本特別委員会において、事業譲渡の方針に関する意見のほか、調査テーマであるガス事業・発電事業の民営化による効果及び市民への影響等の観点において、おおむね次のような意見が出された (1)事業譲渡の方針について
① 譲渡基本方針で示された事業譲渡の理由は、市民の理解を得る説明として十分とは言えないのではないか。
② 事業譲渡へのスケジュールにおいて、議会が関与できる余地が少なく、市民のチェック機能も働かないので、スケジュールを見直すべき。
③ コロナ禍における経済状況等を考慮して慎重に検討すべきであり、拙速に進めるべきではない。
④ 事業譲渡は、市民と議会の理解と合意を持って進めるべき。
⑤ 地方公営5事業を1自治体が行っている例は全国でも少なく、都市の総合的なインフラを供給しながら利益を生み出している点で非常に重要である。
⑥ 発電事業は、企業債残高がゼロで、利益を生む事業であるため、売却は考え直すべきではないか。
⑦ 最低譲渡価格の算出方法やその算出根拠について、妥当性を示せていないのではないか。
⑧ SDGsは手段の一つであり、根本的な金沢市の地域エネルギーの在り方や環境政策に沿った事業譲渡でなければならない。

(2)民営化による効果について
① ガス事業・発電事業の事業譲渡の必要性及びメリットについて、具体的事例を提示して、市民に対してさらに丁寧な説明が必要である。
② 電力・ガスの小売全面自由化後、本市において新規参入業者がない中で民営化の効果は得られるのか。民間による独占市場化についても念頭に置く必要がある。
③ ガス事業・発電事業の民営化・株式会社化が、市民生活の安定・向上に貢献する事業形態なのか。

(3)市民及び市職員への影響について
① 民営化後、6年目以降においても、現行のガス料金水準を維持するよう努めること。
② 災害時や新型コロナウイルス感染症の影響により、ガスの安定供給に支障を及ぼすことがあってはならない。
③ 新会社のサービス提供の履行を監視し、需要家の要望等を相談できる常設の独立的監視機関を設置すべき。
④ 新会社の株式を市民が取得できるような仕組みを設けるなど、市民参加による経営の在り方を検討すべき。
⑤ 事業譲渡について、直接、市民に説明し意見を聴取する場を設けること。    
⑥ 新会社への市職員の派遣については、本人の意向を尊重し、法制度に基づいた適正な対応を行うこと。
⑦ 新会社への派遣職員の相談窓口を設置すること。

4.まとめ

 本特別委員会は、ガス事業・発電事業の民営化について、その必要性、有益性、経済性、また、組織的な課題や市民または経営側の便益性、さらには譲渡に当たっての検討期間、ひいては是非についてまで、多面的かつ多角的視点から議論、調査を重ねてきた。

 今後、民営化に向けた事務作業等を進めるに当たっては、議会へのさらなる説明を含めて、民間譲渡の有益性、市民福祉の向上といった視点から、市民へのより丁寧かつ具体的な説明がなされ、市民等の不安を払拭する努力がさらに求められるところである。

 刻々と変化していく現在の社会においては、それらの変化に的確に対応し、市政の基本的役割である市民福祉をいかに増進していくかということに鑑みるとき、本市における公営企業としての長い歴史を持つガス事業・発電事業の民間への譲渡についても、そのことが基本理念となるべきであり、市民が夢や期待を持てるものとすべく、市民合意が目指されるべきである。市当局においては、拙速に陥ることなく、上記に記載した意見等についても十分に留意され、今後の作業に当たられることが期待される。なお、議論の中において、民間譲渡を是とする、または非とする等の相反する意見並びに執行部での事業譲渡の検討の経緯について、さらに調査を進めるべきという意見が出されていたことを付言し、本委員会の報告とする。