2015 9月定例月議会報告 後付けエレベーター設置に道 教科書採択に大問題

9teirei 2 9月定例月議会終了から、国会が安保法案採決の攻防山場となり、報告が遅れてきた。金沢市政にも、この全体状況が反映していることを実感する議会でもあったと感じる。

 私が所属する教育消防常任委員会では、来春から使用する中学校歴史教科書に「新しい歴史教科書をつくる会」の流れをくむ育鵬社を採択した報告があり、約40分間、野口教育長に対し、採択への疑問、その不適正さを追及した。
 また、安保法案に反対するママの会石川が提出し、私たち「未来かなざわ」山本由起子議員と麦田徹議員が紹介議員となって支援した「安保関連法案の継続審議を求める請願」は少数否決となった。同趣旨の意見書が、羽咋市議会では社民党浅野俊二議員の尽力で採択されたことを考えると、金沢市議会の後進性が際だつ。私たちの側の力不足も痛感するところだ。以下、主要な事項、論点についてまとめて報告としたい。

9teireituki-anken◆教育消防常任委員会〔9月14日(月)10:00~12:00〕
 ー右 案件一覧参照ー

1.補正予算案について(補正予算額省略)
 ここで特筆しておくのは、中学校学校施設整備費として、紫錦台中学校と兼六中学校に耐震・大規模改修費が計上されたが、この中に、兼六中学校校舎に後付エレベーター設置費が盛り込まれたことだ。
 進学先兼六中にエレベーターがないことはバリアフリーとインクルーシヴに反すると昨年6月に、非議員として金沢つながりの会の役員、当事者当時6年生のS.Mさん親子と共に先進地豊中市教委と学校を視察し、設置を求める要望活動を開始したた。市内小中学校にはわずか7%(新設時に設置)しかエレベーターが無く、他自治体と比べても著しく遅れていることは看過できないと山本由起子議員とも連携。議会質問、市教委への要望申し入れ、山野市長への要望、さらには街頭署名活動を積み上げ、12月定例月議会に市内の小中学校施設に後付エレベーターの計画設置を求める請願を提出したのだった。
 この請願の採択に理解を得るために、私も同行しすべての会派を訪問し、インクルーシヴ教育の基礎条件としての必要性と当事者の願いを丁寧に伝える努力も注いだ。その結果として、全会一致での採択が実現した。それを受けての市教委の英断だ。
 私は、請願に賛成した各議員の見識と予算化に踏み切った市教委の英断に感謝し、今後の設置計画の考え方を質した。市教委は、大規模改修と増改築の際に設置を計画的に進めたいと従来の見解を繰り返したが、私からの通う子どもの状況にも柔軟に配慮し、必要な設置を優先的に考えて進めていってほしいとの要望にうなずいていた。これからは、設置のスピードと子どものニーズをいち早く把握するしくみを明確化することが課題だ。

2.中学校教科書採択結果について
 金沢市教委が、育鵬社の歴史教科書を採択したことは、全国的ニュースとして走った。地方教育行政の組織と運営に関する法律が改定され、この4月から市長部局(総務課)が主催する総合教育会議が設置され、市長が市教委と共に教育行政に関して協議することができることになった。これに関する文科省通知には、高度に政治的中立性が求められる人事と教科書採択は協議しないとしながら、「その方針については協議することも考えられる」と曖昧規定を加えている。法改正で最も議論になったこの政治的中立性、教育委員会の独立性の担保と、第1回総合教育会議での市長発言との関係の問題については、常任委員会で質した経過は報告済みだ。
 安倍政権下でこの間、教科書検定基準に伝統文化、歴史への理解と愛着、国民としての自覚が加えられ、「静ひつ」な環境で「教育委員会が権限と責任を持って採択する」ことが教科書採択に関する文科省通知に明記された。明らかに安倍政権をとりまく歴史修正主義が教科書となり、採択される道筋は引かれてきた。しかし、4年前の全国シェアはそれでも4%余りに過ぎない。金沢市教委の良識に期待を寄せすぎたのは、私一人ではあるまい。反省とともに正直、裏切られた思いは禁じ得ない。
 公教育においては、子どもたちが歴史の真実に触れ、史実に基づいた歴史認識を結ぶ学びを保障することは最も重要な責任だ。そのために、教職員はもとより、保護者、地域住民とも問題を共有し、この偏った教科書を乗り越えていかねばならない。

kyoukasyo-hyouka 私が常任委員会審議でまず問題にしたのは、教育委員会決定の客観的な根拠についてである。左に示した一覧表があるが、採択の過程で絞られたという東京書籍、帝国書院、育鵬社の評価を比較することができる。私は、野口教育長に繰り返して確認した。これが主たる検討資料であり教育委員共通の判断材料(根拠)に当たるものであることを。教科書調査研究委員の評価、学校の教職員評価が採択委員会に提出され、その答申に活かされた。本会議で田邊教育委員長が「三社にほとんど差はなかった。」と答弁しているが、どう読んでも、東京書籍が総合的に最も評価が高い。次いで帝国書院、間をおいて育鵬社となっている。項目によっては、評価がかなり下がるところもあるのが育鵬社である。現場の専門家である教職員たちは、東京書籍が最も相応しいと評価していたのだ。
 これは地元紙でも指摘され、山本議員が本会議でも指摘したが、私もかなり突っ込んで具体的に指摘し、最終の教育委員会で恣意的にひっくり返されたとしか言いようがない、これが尊重なのかと厳しい口調で詰問することになった。
9teirei 1 育鵬社の賛成委員は4人、帝国書院が3人の多数決だから、教育委員の総意ではない。相互議論がどのように行われ、個々の判断に至ったのか、育鵬社を押した委員には、どれほどの教育的識見があって評価したのか、それらの問いには、「学校訪問で授業課題に答える教科書だと判断した。」「答申を尊重した上で個々の教育委員が権限と責任において採択した。」との答弁しかない。各社授業を念頭に工夫がなされている点ではそれこそ差はないのである。これでは、教育内容の共通土台となる教科書採択としてはいかにもお粗末である。学問にもとづく教育研究からの遊離である。

 この採択経過の議事録が、この常任委員会の席上で公開された。同時に、広報広聴課で閲覧、市ホームページで検索できるようになった。しかし、読み込む時間が無く常任委員会での審議にはいきなり使えない。教科書採択の教育委員会議は非公開、さらにこの議事録は発言委員名は伏せてある。これでは重大な採択判断について、個々の教育委員は説明責任を果たさなくても済んでいく。議会も市民に説明責任を果たせない。公開を繰り返して求めたが、今後の教育委員としての公務に支障が出るからと応じていない。これが「権限と責任において採択」の実態だ。

 私はさらに、政治的介入がいろいろと取りざたされてきて10年、なおも全国シェア6%と一部の採択に留まっているのはなぜか、内容に問題があると大多数の教育委員会が判断したからではないかと野口教育長に見解を質した。教育長は、評価は様々だろうが、検定を通ってきている教科書だから問題はないの一点張りだ。これも根拠にはならない。
kokusaikikann-kannkoku 私は、日本の教科書検定制度が政治介入によって歪められてきたことへの所見、教科書には愛国心の強化や民族的同一性を強調するべきではないとの指摘、教師の教科書選択の役割を認める勧告などの国連機関からの問題提起を紹介し、過度に自国の歴史を美化し、史実にもとづいて植民地支配、侵略戦争を伝えようとしない教科書では、国際化時代の子どもたちの学びを保障できないと懸念を表明した。
自由法曹団教科書プロジェクト報告参照ー
 これに対し、教育長は、検定制度は国の制度だから、国に意見を伝えて頂くしかないと述べ、「本市の子どもたちに一番いいと思うものを採択したと思っている。」と開き直った。しかし、そうではない、検定を通った教科書でもこれだけの違いがあるのだ。育鵬社であるべき理由はない。

 印象は、育鵬社先にありきで力が加わったということだ。県内右派勢力の採択運動、保守政界の政治的圧力が山野市長の歴史認識の傾向と採択意向に合流し、教育委員の多数派形成を促した疑いが消えない。

 公民も育鵬社でなかったのはなぜか。金沢を取り上げているならば自由社だ。愛郷心から愛国心は自然だ。謝罪の宿命からの解放、自虐史観からの脱却は必要。自国の歴史を悪く言う者はテロリストと見なされる・・・首相語録のようだ。これら正副委員長が終わりに述べた歴史修正主義の常套句に、戦争責任・反省にもとづく不戦平和憲法の世界観から脱却を目指すという政治的背景を垣間見ることになった。

 今、採択会議の議事録を読み込んでいる。東京書籍が選からはずれるとき、南京大虐殺記述など戦争記述に「強烈な表現」があるからとの意見が通っている。採択の真相がこの議事録からどれだけ読み取れるか、さらに精読したい。教科書は、そのまま教えられるものではないが、子どもにとってはバイブルであり、通説として認識されるものでないがしろにはできない。学問と教育研究の成果を子どもたちの届ける責任を果たすために、徹底して教科書内容を批判し、自立的創造的な教育実践を応援し、採択撤回を求める市民の声を集める努力を私も始めていく。まずは、育鵬社歴史教科書の読書会からかなと思っている。
 何度でも確認したい故ヴァイツゼッカー元西独大統領演説「荒れ野の40年」を掲載しておく。

3.副議長の辞職

 「 なぜ引き受けた?」から始まり、恒例の祝賀会もせず、4ヶ月というあっという間に辞職。教科書採択抗議か?そろそろ自由に物が言いたくなったんやろと今は噂されているようだ。(苦笑)副議長職は、あくまでサポート職、多くの議員が経験しておくのも良いと思っている。私はいよいよこれから本領を発揮する。座長であった政務活動費等検討会では、ます政務活動費手引き改定と金額削減で座長案をとりまとめた。議長に中間報告を文面で提出し、次回の検討会で合意の運びだ。その後の課題については文面の通りだ。地方自治の進化発展のために処遇を含めた制度論を展開してほしいと申し送った。

 議場では退任の挨拶をこう述べた。「議長はじめ議員各位が広い心で支えて下さり、職務を全うできたと感謝している。私としては、今日本の平和主義と民主主義が危うい状況にあると思っている。こうしたときにその砦としての地方自治の重要性は高まっている。一議員となって、引き続き、議会改革、市勢発展と市民福祉の向上に努力を傾けていきたい。一層のご指導とご鞭撻をお願い致します。」