2020年 9月定例月議会報告
■9月11日 本会議一般質問事項
1.ガス事業・発電事業の株式会社譲渡方針について
(1)最低譲渡価格設定と歴史的文化的価値について
(2)「社会的共通資本」の視点から
(3)今後のスケジュールの見直しを求める
2.五感にごちそう金沢宿泊キャンペーンの展開について
・本事業の概要、助成対象プランの下限設定
・高額施設への偏りを招かないための具体的な対策
・飲食部門のない宿泊事業者、幅広い飲食事業者に効果が及ぶ工夫、制度の適正利用の担保
・対象外となる宿泊施設
3.市民のつぶやきから
「殉難おとめの像」を例に
戦争体験を継承する戦争遺跡の保存への憂慮について
■質問と答弁の全文(一問一答方式) ー議会映像はこちらからー
1.ガス事業・発電事業の株式会社譲渡方針について
(1)最低譲渡価格設定と歴史的文化的価値について
森 一敏議員:みらい金沢の一員としまして、以下、御質問をさせていただきます。まず、ガス事業・発電事業の株式会社譲渡方針についてお尋ねをします。最初に、最低譲渡価格の設定と歴史的文化的価値について御質問をいたします。この夏、暑い日に、一人の匿名の市民の方が「金沢市議会史」上・下から金沢市の発電事業に関するページをコピーをされて、これを控室に持参をされました。私は、読んで頭をよぎりましたのは、まさに発電事業は本市にとっての悲願であり、百数十年を遡る苦闘の歴史の重みでありました。議員もその重みをよく理解して事に当たれとの示唆ではないかと思っております。ちょっと御覧いただきたいと思います。 (パネルで説明)
ちょっと文字が小さくて大変恐縮です。テレビは大丈夫でしょうか。最初、1893年、森八さんが電灯会社を志されました。病等があられまして、これは停止をする中で、翌年、早くも金沢市は犀川の水力を利用した市営発電事業計画、これを提出を市長がしております。議会で大もめになりまして、2年、激論を交わされて、金沢公債方式というのが国の許可をされました。しかし、その矢先に日清戦争、この後の景気の急落で、この計画は断念をするということになります。その計画自体は、最初に計画をされた森八さんに引き継がれまして、金沢電気株式会社が設立をされます。そして、ガス事業も、その後に兼業なさいます。市は13年後に、これを買収します。1921年、市営発電・ガス事業を設立をして、手取川、犀川に6か所の水力発電所を持ちます。住民福祉と産業発展に大きく貢献するも、1941年、今度は戦時配電統制令、これによって北陸配電株式会社に強制統合されて経営廃止を余儀なくされております。
戦後は、公営電気事業復元県都市協議会に加盟をして、公営復元運動に取り組みます。復元の立法措置を全国の公営の事業体が求めたわけですけれども、GHQがこれを認めませんでして、ポツダム政令によって9電力会社に編成をされました。これで復元運動は中止に至ります。サンフランシスコ講和条約が発効して、復元運動も再開されますが、今度は電力会社が抵抗いたします。1962年、最終的には5,000万円の寄附と同額の貸与、これで北陸電力と妥結に至ります。16年間に及んだ公営事業復元運動は、これで終結となりました。この交渉過程で、犀川総合開発計画、この機運が高まりまして、県・市当局、議会、県選出国会議員、総がかりの運動が展開されまして、犀川ダム建設を中核とする開発計画が国に認可されることになります。この辺ですね、下のほうです。上寺津に全国初の市営、市直営の水力発電所、逆調整ダムを建設して、1966年、悲願の公営電力事業を開始し、都市ガス事業とともに今日に至っております。一番下に、犀川ダムの建設工事で12人の作業員の方が殉職をされております。
そこで、市長に伺います。今から126年を遡る1894年の最初の着想から1966年、上寺津発電所営業開始まで、実に72年に及ぶ市営発電所を切望し続けた本市の歴史をどのように受け止められますでしょうか。
山野之義市長:あらあらとした歴史は存じておりましたけれども、今改めて丁寧に御説明をいただたいたことによって、先人の御労苦に心から敬意を表したいというふうに思っています。恐らくは、安全で、そして利用者の方が安心をして、そして安定供給ができるように、できれば可能な限り安価に利用できるように、そんな思いで先人は取り組んでいただいたんだというふうに思っています。心から敬意を表します。
森 一敏議員:公営企業管理者に伺います。5月から設置された譲渡先選定委員会は、最低譲渡価格の設定の上で、10月からの公募に向けて募集要項を策定する予定と聞いております。この最低譲渡価格の設定では、市営発電事業を求め、心血を注いで実現し、ガス事業とともに今日に至る100年の歴史的文化的価値、全国唯一の市営発電所の希少価値、これはどう評価、数値化されるんでしょうか。
平嶋正実公営企業管理者:御指摘の点は、対象としておりません。現在検討しております譲渡先の選定委員会におきましては、事業用資産を客観的に評価するため、複数の手法を用いまして事業価値を比較し、最低譲渡価格の検討を行っているところでございます。
森 一敏議員:客観的に数値化できるものでなければ、最低譲渡価格の設定には、これは対象外になると、こういう御答弁でした。市民が自治体と共に悲願を持って今日まで営々と築き、運営を続けてきた、この歴史的な価値、あるいは文化的な価値と言えると思いますが、これらを評価できないような公営事業の譲渡というものは、私は大変な違和感を感じますし、金沢市がずっと今求めております歴史的文化的価値、資産、こういうものが正当に評価されないまま譲渡価格の設定がなされるということは、私は賛同ができないと。これは、アドバイザリー含めて新しい手法というものが講じられないのか、検討してしかるべき問題ではないかと思います。これは、私の意見として申し上げておきます。
(2)「社会的共通資本」の視点から
2点目に、社会的共通資本という視点からお尋ねをします。新型コロナ禍の下、命や暮らしに関わる社会インフラの問題は、経済学で言う社会的共通資本の考え方で捉える必要を痛感しております。社会的共通資本とは何か、市長はいかなる言葉でお答えになりますでしょうか。
山野之義市長:社会的共通資本は、社会全体にとっての共通財産であるというふうに思っています。道路や鉄道も、私はその中の一つに含まれるんではないかというふうに思っています。当然、ガス、水道、上下水道もその中に含まれるんだというふうに思っています。大切なものだと思っています。
森 一敏議員:社会的共通資本、社会生活を営む上の基盤になる大変大切なものである、その御認識はそのとおり、そう思います。この概念を提唱された宇沢弘文さんと呼ばれる経済学者がこう言っていらっしゃるんですね。一つの国ないし特定の地域に、その全ての人々が、豊かな経済生活を営み、優れた文化を展開し、人間的に魅力ある社会を持続的、安定的に維持することを可能にするような社会的装置。社会的共通資本は、一人一人の人間的尊厳を守り、魂の自立を支え、市民の基本的権利を最大限に維持するために、不可欠な役割を果たすと。この後が大事なんですが、したがって、社会的共通資本は決して国家の統治機構の一部として官僚的に管理されたり、また、利潤追求の対象として市場的な条件によって左右されてはならないと、このことがつけ加えられているんですね。私は、この株式会社への譲渡の問題を考えるに当たって、この点を深くしんしゃくをしなければいけないんではないかと、こう考えているわけです。そこで、先ほど午前中でも再公営の問題が話題になりました。この再公営について、私のほうからも見解を尋ねていきたいと思います。 (パネルで説明)
これがオランダに本部を置くシンクタンク─トランスナショナル研究所が公表した最新の2019年調査報告、これは世界地図、分かると思います。ヨーロッパを中心に、これは再公営された事業の数を表しております。ドイツ、フランス、PFI手法の先進国イギリス、あるいは新自由主義の権化のような国アメリカでも再公営の事例が報告されております。日本でも若干あるんですね。先ほど水の民営化についての報告ではないかという御指摘がありましたが、この公営化事例1,408件、ここに報告されておりますが、この中でエネルギーは374例もあるんです。水は311なんです。地方行政サービス223、情報通信192、医療・福祉サービス138、地域交通47、廃棄物回収処理85、教育、こういうあらゆる公共分野で民営化が一旦進んで、それが再公営化の動きになっていると、こういうことを確認をしておきたいというふうに思います。そこで、2017年の前回の調査時よりも13か国、1,500件も拡大をしていると。公営企業管理者には、この再公営化の動きについて把握することをかねがね求めてきていたわけですけれども、再公営化の原因、自治体や市民の問題意識、どのようなものと把握されていますでしょうか。
平嶋正実公営企業管理者:私どものほうは、国の調査を基にして、いろいろと検討してきております。今ほど、水以外にもというお話でございましたけれども、主としてやはり水道事業において再公営化された事例というものはあるということでお聞きをしています。ただ、近年は、ほとんど従来どおり契約更新がなされてきておりまして、必ずしも一律に再公営が進んでいるという状況にはないのではないかというふうに考えております。再公営化の原因につきましては、その地域性、それから社会的要因、そうした様々な事情によるものであるというふうに考えております。なお、午前中の市長答弁でもございましたが、国内でガス、それから発電において、今までのところ再公営化された事例はございません。以上でございます。
森 一敏議員:地域性とか社会的要因と、そのあたりに原因があるという御答弁がなされました。エネルギー貧困、あるいは公共サービス貧困、こういった概念、こういった言葉が再公営の運動が起こっている地域で大変な問題として指摘をされてきている、このことをはっきりとやっぱり認識しておく必要があると私は思います。市議会の特別委員会で、民営化推進の立場から野村宗訓関西学院大学教授、慎重な立場から太田正作新学院大学名誉教授、それぞれの御意見を伺いました。意外なことに、共通していたのは、民営・市営化は万能ではない、世界で起こってきたことは日本とて例外ではない、公的なガバナンスを確保しなければ株式会社化の効果の前提であるはずの競争が自然独占へと行き着き、民営化のメリットは幻に終わるとの御指摘でした。この公的ガバナンスを将来にわたって確保し続ける確証が市長にはおありでしょうか。
山野之義市長:法令等に基づきまして、需要家利益の保護や保安の確保などについて、国による監視体制が確立されています。法律にのっとっています。消費者庁や公正取引委員会によります消費者保護の仕組みがあります。あり方検討会からも、やはり安心感を持ってもらうためにも、市が一定の出資をすべきだと、一定の関わりを持つべきだというような御指摘をいただいているところであります。まさに今おっしゃっていただいたような公的なガバナンスをしっかりと見ておかなくちゃいけないよと、法律は当然あると同時に、市として責任を持ってやらなければいけないと、そんなあり方委員会の御指摘だというふうに思いますし、両先生も、そんな思いでおっしゃっていただいたんだというふうに思っています。そこはしっかりとやっていかなければいけないと思っています。
森 一敏議員:マーケットサウンディングの参加をした企業からの御意見、そういうものについて、前回の常任委員会で若干包括的に御報告を受けたりしているわけですけれども、その中に出資比率について言及があるんですね。柔軟な経営を確保するためには、その出資比率はできるだけ小さくしてほしいと、こういう御意見なんかが出ているんですね。金沢市が本当に公的ガバナンスを行使できるほどの出資という主体に果たして契約によってなるのかどうなのか、大変これ疑問に感じています。
管理者に、もう少し踏み込んで伺いたいんですが、出資によるガバナンスの確保、もう1つは契約によるガバナンスの確保ということをこれまでおっしゃってこられたと思います。今、その条件について議論しているんだろうと思いますけれども、仙台市の例などを見ますと、経営監視期間とか、あるいは料金を現行よりも上げないとか、本社の移転とか、あるいは他社への売却とか、そういうものは5年間はやらないという、そういう契約条件なんかが過去の仙台市の取組の中で明記をされて、それが公開されたりしているんですね。現在、募集要件、募集要項の内容等、議論されていると思いますが、この公的ガバナンスの確保のために、どの程度その中にそうした観点が入っていくのか、その辺の見通しをお聞かせいただきたいと思います。
平嶋正実公営企業管理者:3月に策定いたしました市としての基本方針、そこでお示しをしてありますけれども、サービス向上、あるいは市民の安全・安心の確保の観点から、柔軟な企業活動を阻害しない範囲内で出資を行うと、一方で、経営状況の確認や料金水準の確保といった要件を新会社に求めていくという方針を出しておりますので、その方針に沿って、今御指摘いただいた先行市、他市の事例なんかも踏まえながら、今、選定委員会の中で慎重に審議をしているところでございます。
森 一敏議員:市民が大変心配をするのは、そうした公的なガバナンスが将来的に確保できるんだろうかということなんですね。そういう意味で、果たして確保できるような条件を付すことができるんだろうか、そこに根本的な疑問を私は感じざるを得ないと思っています。これについては、また議論していきたいと思っています。
この民営化の問題に関わってきたある弁護士さんが指摘をなさっているんですが、公営よりも価格を下げつつ、少なくとも上げないで、公租公課を負担し、株主配当となる利益を生み出すには、人的経費を3分の1に抑えざるを得ないと、それが人減らしや不安定雇用、地域経済の劣化を招くという問題を指摘しておられます。譲渡により、本市財政が億単位の収益を失うだけではなくて、現在は10億円超えているわけですけれども、投資のグローバル化の時代ですから、市民が公営企業を通じて共有してきた利益が私的利潤となって域外に流出をする、こうした市民の暮らしと地域経済の悪循環を招かないという、この責務を市長はこの譲渡によって果たすことはできるんでしょうか。
山野之義市長:域外へという表現もありました。電源につきましては、金沢市は小売を行っておりません。電気の小売の自由化が始まりました。今は北陸電力さんに契約をしてお買い求めいただいておりますけれども、電力さんも域外でもう既に活動をなさっているところであります。法律が変わりました。このまま金沢市が持っている意義というものは、私は薄れてくるんではないかという思いもしているところでもあります。なお、事業選定の要件といたしましては、何といっても市内に本社を置く事業者にするということ、さらには地元雇用の創出ということもお願い、期待もしたいというふうに思いますし、市内事業者との連携、これもこの本会議でも明確に申し上げておりますけれども、市内事業者との連携等だけではなくて、やはり企業市民、法人市民として金沢市のまちづくりに関わってほしい、そういうことも条件としてつけていきたいというふうに思っています。法律が変わりました。そのメリットを市民の皆さんに共有できるような形で取り組んでいきたいというふうに思っています。大前提は、公的なガバナンスをきちんとするということは当然のことだというふうに思っています。
森 一敏議員:域外に富が出るということは現在もあるんだということをおっしゃいますわね。そういう面も確かにあるでしょう。しかし、全体として上がった収益が、その富がどこを循環しているのかというところで大きな変化が起きてくるんではないのかと、それは投資環境が大きく今グローバル化しているから、私はそういう問題意識を申し上げました。これも慎重な検討の一つにぜひ加えておいていただきたいと思うわけです。
(3)今後のスケジュールの見直しを求める
さて、今後のスケジュールの見直しに関して御質問します。新型コロナがもたらした深刻な経済的打撃も先行き不透明です。これが両事業の一体譲渡に及ぼしかねない影響と、それへの対策を公営企業管理者はどう想定しておられますか。
平嶋正実公営企業管理者:民間事業者向けの見学会、それからそこへの参加企業数、それと参加企業を対象といたしました聞き取り調査、そういったものの結果を踏まえますと、新型コロナウイルス感染症による企業の投資意欲そのものについては影響は小さいというふうに考えております。引き続き、感染状況を十分注視しながら、譲渡に向けた準備に取り組んでまいります。
森 一敏議員:先ほどもちょっと触れましたが、マーケットサウンディング、この中に報告されている参加企業からの御意見の中に、そうした留意事項についてはできるだけ努力をしたいと、しかし公募に参加するか否かは募集要項等を確認した上で最終的に判断するというふうにやっぱり述べていらっしゃいますね。それは当然かと思いますけれども、やはり実際に手を挙げるかどうかというところには様々な考慮が当然なされていくわけで、その中でこうした経済状況等々がやはりかなり勘案されていくというような可能性も否定できないんじゃないかなというふうに思います。このまま本当に突き進んでいけるんだろうか、その疑問を払拭することは、私はできません。
市民への周知と理解、当局が言うほど進んではおりません。なぜなら、先ほどもありましたが、市長選挙でも市議会議員選挙でも、両事業の民営化を公約して選択が行われていないからです。再公営化の教訓の一つは、一旦、企業を私企業に手放せば再取得は極めて困難ということです。巨額な公的資金を要することになります。市民の共有財産の処分となるこの問題は、市民に信を問うて行うべき大きな問題です。それが可能となるよう、年度末の優先交渉権者の選定、来年度6月の契約、2022年4月譲渡を想定するスケジュールを同年の市長改選後に先延ばしをすることが市民に責任ある対応ではないかと思うのですが、市長の見解を改めて求めます。
山野之義市長:2017年に、ガスの自由化が制度改正がなされました。これまでも議論をずっとしてきましたけれども、2018年には、予算をつけて企業局の中で具体的な検討を進めさせていただきました。予算もお認めいただいたかというふうに思っています。11月、私の市長選挙がありました。リーフレットの中に書いたわけではありませんけれども、いわゆる座談会といいますか、意見交換会の中で当然その話も出ましたし、私も私の思いを述べさせていただきました。翌年、去年の4月の統一地方選挙、当然、法律も改正を御存じかというふうに思いますし、2018年の予算をつけて議論をされていることも御存じかというふうに思っています。選挙ということにこだわるようですので、今こんな申し上げ方をしましたけれども、大切なことは、制度が変わった、その制度が変わったことを受けて、市民にとって安全で、そして安心で安定供給ができるものをできる限り安価に御利用いただくためにはどうしたらばいいか、そのことを検討をしていくことだというふうに思っています。私は、それをこうやって森議員と議論をしていることも大切な議論だと思いますし、御指摘も幾つもいただきました。そのいただいた御指摘も真摯に受け止めて、管理者もそうですけれども、それを具体的なこれからの施策に取り組んでいく、そのことこそが私は市民に対する責任だというふうに思っています。
森 一敏議員:先行き不透明、投資環境の変化、そしてもう1つは、実際にこの2つの事業を譲渡するかしないかということを直接市民に問うという場がないまま今日に来ているということを私は指摘をしているんです。今の御答弁は、それに直接的に回答になるものではありません。そのことを申し上げておきます。
2.五感にごちそう金沢宿泊キャンペーンの展開について
質問の2点目に移ります。五感にごちそう金沢宿泊キャンペーンの展開についてです。本事業案は、宿泊事業者等の再三にわたる切実な要望、6月市議会での陳情採択を受けた新規事業であると認識をして、国・県の旅行補助事業の効果が及ばない全ての事業者に公平に支援が行き渡る事業となるのかを視点に、以下伺います。
まず、本事業の概要及び多くの地場宿泊事業者が2,000円から3,000円の低料金競争を強いられている中、助成対象プランの下限を6,000円とした考え方を伺います。
山野之義市長:全国39の道府県で、それぞれの地域の中での観光を促進する施策を取られました。石川県でも、県民割キャンペーン、たくさんの方が御利用されたというふうに聞いております。GoToトラベルも国のほうで行っています。GoToトラベルは今真っ最中ですから、それぞれこれから検証がなされてくるんだと思いますが、報道で出されていることであったりとか、私も直接お聞きしている限りにおきましては、今おっしゃったような低価格、簡易宿所や民泊の皆さんには影響が及ばなかったということをお聞きをしております。前、3月の追加補正のときにつくった施策を一旦打切りをさせていただきました。それは局面が変わったからだということで思っていまして、今回は、ただ給付金を出すという形ではなくて、それぞれ工夫をしてくださいと。素泊まりではなくて、金沢の強みであります食文化であったり工芸体験、そういうものをセットにして工夫をして、これからのことも考えながらやっていただきたい。それで6,000円というのは、私は簡易宿舎や民泊の皆さん方にも十分利用できるものだというふうに期待をしています。
森 一敏議員:国のGoToトラベルキャンペーン、石川県民割で顕著になった高額施設への偏りを招かないための具体的な対策、これは検討されているでしょうか。
山野之義市長:もう既に問合せも幾つかあることはありますけれども、予算をお認めをいただきましたら、具体的な説明会にも入っていきたいというふうに思っています。高額な形で利用される方もいらっしゃるかもしれませんが、できるだけ、繰り返しになりますけれども、ビジネスホテルであったりだとか簡易宿舎であったりだとか民泊の皆さんにとにかく工夫をしてほしいと、アイデアを出してほしいと、これは今だけじゃないと、これからのことをずっと考えたときに、ぜひ工夫をしてアイデアを出して、それでこれを活用してほしいということを強く提案をしていきたいというふうに思いますし、時には一緒に考えていくこともあるんだというふうに思っています。
森 一敏議員:飲食部門のない宿泊事業者、幅広い飲食事業者に効果が及ぶ工夫、制度の適正利用を担保するための方法をどう講じるのか伺います。
山野之義市長:簡易宿所やビジネスホテルや民泊というものは、宿泊施設の中にレストラン等々がないところがむしろ多いというふうに思っています。そういう場合は、近隣の店舗としっかりと連携をしてほしいというふうに思います。繰り返しになりますけれども、今だけではなくて、これからのことを考えた施策をぜひ取っていただきたいというふうに思っています。加えて、金沢市観光協会が発行しております美味クーポンも利用が可能となっておりまして、その活用についても周知を徹底をしていきたいというふうに思っています。幾つかサンプルがありますから、それを活用いただくということもあってもいいんではないかというふうに思っています。
森 一敏議員:様々な連携、こういうもので工夫をしていただきたいと。観光協会のクーポンのお話もありました。これがもう少し多様性があるといいなという御意見もありますので、ちょっとそのことは申し上げておきたいと思います。キャンペーンの対象外となる宿泊施設はあるんでしょうか。
山田啓之経済局長:対象とする宿泊施設でございますけれども、新型コロナ感染防止対策を講じることを前提として、さきに実施をいたしました宿泊施設魅力向上等奨励事業と同様に、旅館業法、または住宅宿泊事業法に基づき市内で営業するホテル、旅館、簡易宿所、民泊施設といたしますが、前回対象外となりました共同住宅などの一部を使用して営業する施設は、今回、本事業の対象ということにいたします。なお、いわゆるラブホテルや研修施設等のほか、施設を営む者が市税を滞納している場合は、奨励事業と同様、本事業の対象外ということになります。以上でございます。
森 一敏議員:宿泊事業者の団体の方たちが再三にわたって要望されてきたことの中に、今、対象外になったという御説明がありましたけれども、ラブホテル等のそうした施設、こうした方々も大変経営に窮しているわけですね。工夫をして、このキャンペーンの趣旨に沿うような商品を造成することは可能であるという御意見も聞いているんですが、今回はそれ以前にもう足切りになっていると。これは、前回もいろいろと地方の動向、国の動向を申し上げて、改善の余地があるんじゃないかということを申し上げましたけれども、今回はそれは至っていないと、大変残念に思います。引き続き検討をお願いしたいというふうに思います。
最後に予定しておりました感染状況、これが深刻化した場合の対応ということをお尋ねするつもりでしたが、これにつきましては既に答弁が出ておりますので、割愛いたします。
3.市民のつぶやきから
「殉難おとめの像」を例に
戦争体験を継承する戦争遺跡の保存への憂慮について
では、最後に、市民のつぶやきから、戦争体験を継承する戦争遺跡の保存への憂慮について御質問します。
戦後75周年を迎えた今年は、戦争体験者の一層の高齢化に新型コロナウイルス感染症が加わり、体験の継承を憂える声を耳にしました。私は、昨年から8月7日に、卯辰山相撲場観覧席上部の丘陵に建ちます殉難おとめの像、慰霊の集いに参加をしております。敗戦間近の1945年8月7日10時30分、愛知県豊川海軍工廠の女子挺身隊寮を米軍の29編隊が空襲をしました。石川県からも派遣されていた少女たち52人が貴い命を奪われました。そのときに、御自身も大けがを負われた生存者─西村八重子さんが95歳の高齢を押して山を登ってこられました。「ああ豊川女子挺身隊」を感慨深げに口ずさんだ西村さんがこうおっしゃいました。妹のような隊員の助けての声がそのうち聞こえなくなっていった。
金沢美大、矩教授が制作をしたこの殉難おとめの像は、再来年2022年に建立から50周年を迎えますが、追悼と維持管理、継承事業を行ってきた豊友会も高齢化をして、今後の困難さを心配しているというお話も伺っております。こうした戦争の実相を伝え、平和意識を培う戦争遺跡の保存と活用が政策的に検討されるべき時代状況だと思います。そこで、本市として、こうした地域に多種ある戦争遺跡をどこまで把握しているのか伺います。
また、併せてお尋ねします。現在策定中の文化財保存活用地域計画への位置づけや本市独自の教育文化施策としての保存継承支援事業といった施策の検討について、市長のお考えをお伺いします。
山野之義市長:戦争の悲惨さ、平和の尊さを伝えるために、私は、そういう遺跡の類いのものは大切だというふうに思っています。ただ、その多くの場合が私有地であったり、個人が設置したものでもありますので、必ずしも行政のほうで全てを把握しているわけではありません。ただ、現在策定中の文化財保存活用地域計画におきまして、来月、地区公民館等に地域の歴史的所産についてアンケート調査を行うこととしておりまして、回答内容を精査することで、これらの像や碑文の把握にまずは努めていきたいというふうに思っています。
把握をした上で、多くのいろんな皆さんのお声を聞きながら、その価値の定義というものもしていきたいというふうに思っています。いや、その心は皆さん同じです。同じですけれども、物としての、文化財としての価値等々もあるかと思いますので、その保存・活用を図っていくためにも、それは一度きちんとしなければいけないなというふうに思っています。個々の事例ごとに設置の経緯であったりとか、先ほど私有地、個人の建てたものとありましたけれども、その持ち主の思いもありますので、そういうものを大切にしていかなければいけません。また、老朽化しているものも多いかというふうに思います。安全面のことも確認をしていかなければいけません。その中で、どんな施策が実施をすることができるのか、金沢市文化財保存活用地域計画協議会の中で議論をしていきたいと思っています。大切なテーマだと思っています。
森 一敏議員:成立の経緯というものは、まさにその歴史的な意義というものがむしろそこに込められていると思うのですね。そういうものも時間がたった現在、将来に向かって、これを絶やさないで、より市民が共有をすることができるようにする、そういう地域計画になっていくということが大変必要なことではないかというふうに思います。ぜひ、まずアンケートから始まるということですけれども、そのアンケートの結果、把握された様々な多様なものがあると思いますので、それらについての定義づけ、整理、これは丁寧に一つ一つの経緯をたどりながら、そして今日そこに関与している方々の御意見も市のほうから積極的に聞いていくというような作業を通じながら、ぜひ策定をしていただきたいというふうに思います。これは要望もさせていただきます。
以上で、私の質問、これで終わらせていただきます。 (拍手)
【質問関連資料】
①金沢市ガス事業・発電事業年表(『金沢市議会史』より)
明治10年代から20年代 | 電気の供給を営業として事業化の時代 もっぱら都市の公共的な場所での照明用として |
1893 明治26年 | 森下八左衛門が谷与右衛門(米穀商)の協力で金沢電燈会社の設立申請 犀川の水力で発電計画 森八病気等により設立には至らず |
1894 明治27年 | 長谷川市長が市営電気事業案を提出「資本金5万円、120馬力」 (犀川水力利用、工業用、余剰金は市歳入に) 市議会は全議員を調査委員とする調査 1法的問題 2技術的問題 3財政的問題 臨時電燈点灯式 (関西共進会にあわせ発電機械は外部から搬入 森八寄付3分の1、県3分の1、市3分の1) |
1895 明治28年 ~29年 |
市議会は公債発行は法的に問題なしとしたが、技術的、財政的には問題ありとした ・・需用者の望みを充たすには、10万円、600馬力必要との意見(金沢に於いては家庭用ではなく、軍隊と寺院と学校) 工学博士等の現地調査により紆余曲折して「資本金10万円、600馬力」の新計画に 28年7月市議会金沢公債方式を承認 同年9月 長谷川市長内務・大蔵大臣の起債許可を求め上京6ヶ月余りの長期に市議会で問題に 28年年末には水源地となる村に反対運動「一揆の観を呈した」灌漑水の欠乏を憂えて この後自然消滅 29年3月 起債認可 |
1896 明治29年 | 4月 起債認可の市議会への報告 5月 逓信大臣への認可申請 7月 認可 事業の準備は整った 日清戦争後の企業熱に対し、金融逼迫の傾向現れる |
1897 明治30年 | 金融逼迫より顕著、株式価格の低落、公債交際募集困難 4月 長谷川市長公債募集価格を100円から90円に引き下げ提案 異論、審議延期動議可決 議長からの動議「市営化断念民間に移すべし」全員により可決 5月 長谷川市長「市立電気事業既得権の民業委譲に関する議案」提出 電気事業市営化は挫折 最初事業計画者森下八左衛門に引き継がれる |
1900 明治33年 | 金沢電気株式会社設立認可 犀川村辰巳発電所完成(320馬力・240?)当初経営難 前田家、横山家、本多家が支援 |
1907 明治40年 | 金沢電気瓦斯株式会社と改名 ガス事業も兼業 経営順調化 |
1920 大正 9年 | 金沢電気瓦斯株式会社と買収に合意 |
1921 大正10年 | 再度市営化 公営の精神に則り 「施設・設備の充実と事業経営の合理化みより供給の円滑化と料金の低廉化をはかり、住民福祉の安定向上と地域産業の発展助長に貢献大なり」(金沢市議会史下241ページ) 手取川、犀川に6カ所伸す威力発電所、一般の電気供給も |
1925 昭和10年頃より | 配電統合問題論じられはじめ |
1941 昭和16年 | 国家総動員法に基づく配電統制令公布 本市電気事業は、北陸配電株式会社(北陸電力の前身)に出資 |
1942 昭和17年 | 3月いっぱいで経営統合公営廃止 評価格1664万1904年←→北陸配電からは1400万円株券、748万余円の現金、昭和26年度までの公納金支払い 電気事業利益が一般会計の40%であったことから統合による損失は想像して余りある(金沢市議会史下242ページ) |
1945 昭和20年 | 敗戦 ―公営復元運動― 敗戦により、配電会社の意義は消滅し、強制的に統合された元の所有者(金沢市)に一切の権利は返還されるべきものであるが、電力国家管理が続き、全国九電力体制が続いた |
1946 昭和21年 | 配電事業都市移管期成連絡委員会が結成され、金沢市も加盟 |
1947 昭和22年 | 市議会内に電気事業に関する特別委員会設置公営電気事業復元、公納金問題に本格的に取り組む |
1949 昭和24年 | 1都5県12市が公営電気事業復元県都市協議会結成 国に復元要望、立法措置、公納金の物価スライド要望 |
1950 昭和25年 | 吉田内閣 電気事業再編要綱 公営復元認める方針 GHQ反対、不同意 政府はポツダム政令による電気事業再編成令、公益事業令制定し、発電送電一貫経営の九電力会社に分割帰属させる 公営復元運動は事実上中止のやむなきに至った |
1951 昭和26年 | 電力再編成令により北陸配電解散、北陸電力株式会社発足 電力料金大幅値上げ案が多方面の反発を買った 市議会電気事業特別委員会電気料金値上げ反対決議案満場一致可決、北陸電力株式会社に提出 |
1952 昭和27年 | サンフランシスコ講和条約発効でポツダム政令失効 電気事業の復元運動再び台頭 「電気設備等の復元に関する法律案」衆議院解散で審議未了に |
1953 昭和28年 | 「発電設備の復元に関する法律案」会期末で審議未了 |
1955 昭和30年 | 12月「公営電気事業復元に関する要望書提出の件」可決 |
―電気事業の復元立法は難航 電力会社と電気事業復元県都市協議会とが対立激化― | |
1957 昭和32年 | 自民党三役 復元問題は立法措置によらず、各地方自治体と格電力会社との個別折衝によって解決との方針 復元県都市協議会受入れ 金沢市議会特別委員会として「電力委員会」設置 北陸電力値上げ反対、電気事業復元問題についての対策 7月北陸電力側に復元問題についての申し入れ書を社長宛手交 11月第1回交渉 市側「誠意を持って円満解決を」 会社側「復元と限定せず」 復元問題とは別に、犀川総合開発事業への北陸電力の事業協力が話題に |
1958 昭和33年 | 1月交渉 会社側から「市内の工場誘致のために新たに15万ボルトの送電線配線、犀川ダム建設について会社として調査したい」 |
―以後 昭和35年にかけて交渉に進展無しー | |
1959 昭和34年 | 議会内に超党派の電気事業委員会設置(自民党、社会党、公正同志会、正副議長) |
1960 昭和35年 | 電気事業復元県都市協議会で妥結の動き 宮崎県に九州電力が補償金3億円、県事業への協力金2億円 仙台市の協定 市営プール建設事業への東北電力の協力 1月金沢市は、復元問題の一環として観光会館建設費の半額無利子融資を北陸電力に申し入れ 3月電力復元に代わる要求額5億4000万円を北陸電力に要求 土井市長「交渉には全力を尽くしたい」 11月徳田総務常任委員長「北陸電力の増資問題の一方で復元問題は何ら進捗していない」 要求額5億4000万円には北陸電力未回答 北陸電力回答「5億4000万円の要求額は高すぎる」 12月北陸電力回答「極力早期に解決したい 犀川総合開発の発電事業には協力できる」 総務常任委員会北陸電力株の増資引き受け議決 |
1961 昭和36年 | 2月北陸電力口頭回答 要求額の9分の1程度 折衝 北陸電力「金沢市の要求は膨大で話にならない」 対立論争 |
1962 昭和37年 | 電気事業委員会妥結方針「5000万円の寄付、5000万円の貸与」 8月最終交渉復元問題の大綱決定、実質的に妥結 北陸電力 犀川ダム建設に伴う売電問題などについて会社側はできるだけ協力することを確約 12月土井市長と金井社長との間で協定書、確認書締結 16年間の復元問題に終止符 |
―犀川総合開発事業ー | |
1957 昭和32年 | 土井市政「犀川総合開発計画」産業都市化の最重要課題と位置づける 犀川上流に多目的ダム、水道用水、洪水調整、灌漑 |
1958 昭和33年 | 9月犀川総合開発促進期成同盟会結成 市議会内に犀川ダム建設小委員会設置 |
1959 昭和34年 | 中央省庁に陳情 県知事への陳情 事業分担水道事業、工業用水事業、発電事業は市の事業 共同事業(治水、農業)は県事業だが市に委託 県選出国会議員との懇談 8月大蔵大臣、厚生大臣、大蔵政務次官が寺津の逆調整ダム等現地視察 上京、発電事業の市直営陳情 「地元で市による電気事業に意見の一致あれば差し支えない」 ダム建設も市に委託陳情 最終確認 市が発電事業を直営することが認められたのは全国初のケース |
1962 昭和37年 | 10月 ダム起工式 |
1963 昭和38年 | 4月 全国初の市営発電所の建設開始、上寺津逆調整ダム建設開始 12月 定礎式 |
1965 昭和40年 | 6月 深刻な水不足に悩み一部貯水で渇水期を乗り切る 12月 堤高72メートル、堤頂長160メートル 満水式 |
1966 昭和41年 | 1月 上寺津発電所16200kWで営業発電開始 年間ピークで6869万3000kWを北陸電力に売電 2億4000万円の収益上げる 5月 上寺津逆調整ダム完成 犀川総合開発計画事業完成式 ―工事で失った命 12人 ダムサイトには慰霊碑― |
②世界ですすむ公共サービスの「再公営化」(出典:トランスナショナル研究所2019年版調査報告書より)
【議決事項について】
補正総額44億9582万3000円 小中学校普通教室にエアコン完備へ
昨日、金沢市議会9月定例月議会が終了した。
補正額には、保健師増員維持など保健所体制強化費、PCR検査装置追加配備など市立病院感染症対策強化費、石川中央都市圏の医療機関を支援する新型コロナウイルス感染症医療支援費。
避難所感染防止対策費、高齢者・障害者福祉施設感染症クラスター対策費。
保育提供体制強化臨時対策費。
ずっと関わってきた路線バス利用促進緊急対策事業費、商店街団体が発行するプレミアム商品券支援事業費、
行く末が気にかかる「五感にごちそう宿泊キャンペーン」に8億3千万円。
4月28日以降に生まれた新生児に10万円
財源は、臨時特別給付金事業に3億2千3百万円等々。国の新型コロナウイルス感染症対策地方創生臨時交付金が過半を占める。12月は、来年度予算に向けて、財源論について議論を深める必要がある。