4月22日 午後
いよいよ研修視察の最後のプログラムになった。エルシノア市議会議員との懇談である。最初に訪れた児童福祉・教育局のある建物に再び入った。たまたま来ていた救急車が民間の救急サービス会社のものだったので、珍しく、写真に納めてしまった。職員の誰かが倒れたのだろうか。
我々との懇談に出席してくれたのは、
社会福祉委員会委員長 イァン・イーヴァル市議(3期・元退役軍人)
児童青少年委員会委員長 イァーリン・ハンセン市議(1期・漁師)
同 副委員長 ギッテ・コンドロップ市議(1期・自治体労働組合)の3人の方々である。
【懇談の概要】
ーイァン・イーヴァル市議からの高齢者福祉に関する説明よりー
エルシノア市には65歳以上の高齢者が9000人、80歳以上は2400人いる。この方々のための施策が市議会でも大きな目標である。ケア、トレーニングを提供し、一人ひとりが可能な限り自立できるよう支援している。
大切なことは、アイデンティティ、自己決定、個人的責任、互いの人権尊重である。
エルシノアでは、この分野に関係する職員が1000人、年間4億クローネを支出している。その内訳は49%が施設ケア、25%程度が在宅ケア、残り25%が配食サービスと管理業務である。市の予算総額は22億クローネなので、福祉関連予算は教育を除けば約半分を占めている。次年度予算は、高齢化の進展に応じ、予算配分増を財務委員会に取り付けている。
施設は建設予定含め10施設(市立が8、民間が2)で、540人から550人を収容できるものである。在宅ケアは職員が300人で1900人がサービスを受けている。在宅ケアの家事援助の4割に民間事業者が参入している。政府方針があり、今後は、身体介護へも民間が参入することになる。サービスは時間が基礎だが、内容はできるところは柔軟に行っている。例えば、家事援助の予定が外出援助に変わるというように。
ーイァーリン・ハンセン市議による青少年教育に関する説明よりー
市内には17の公立学校、100の幼児教育(児童福祉)施設がある。そこに働く公務員は学校に700人、幼児教育施設に1200人、その他に200人で、合計2100人である。8億クローネの予算は、学校、幼児教育施設、青少年クラブ、健康と予防、子ども相談の分野に支出されている。
子どもたちは、9年生の終わりに卒業試験を受けるが、私たちは子どもたちを最小限の知識を身につけ、社会人として育てたいと考えている。保健師はそのため0歳児から家庭訪問を行い、幼稚園や学校にも出向いている。学校では9年間を一貫してみていく。幼児教育から中学生(7〜9年生)までの連続性をスムーズに行かせるように情報の共有を図っている。議会の青少年委員会は、社会福祉委員会と密接に協力している。
ーフリートーキングー
Q:エルシノア市議会の構成は
A:社民が7人、民主社会が2人、自由党が2人、保守党だ13人、極右が1人。地方政治においてはそれほど大きな対立はなかった。女性議員は6人で、立候補自体が少ない。
Q:議会の動きはどうなっているのか。
A:3週間に一度、平日の夜に2時間、議会が開催される。委員会は年に10回、5〜6時間の会議時間である。青少年委員会と社会福祉委員会は、加えて現場との対話の会が20回程度開催される。プロジェクトを起こすときは、関係機関の代表、市民、専門家、議員からなるワーキンググループが組織される。
Q:選挙運動はどういうものか。
A:150人ぐらいが立候補する。選挙がはじまると、討論会、座談会を活発に行う。お金はいっさい使わなかった。(ギッテ市議)18歳以上が選挙し、投票率は80%
選挙は個人名投票と党名投票で、第1党から市長が選出される。
Q:前回選挙の公約を一つ挙げてほしい。
A:「21世紀の高齢者のための住宅政策」(イァン・イーヴァル市議)
「調和のとれた子どもへのサービス」(イァーリン・ハンセン市議)
「中学校以降の教育福祉政策の向上」( ギッテ・コンドロップ市議)
Q:議員の報酬はいくらか。
A:議員の手当は少ない。市長は年80万クローネだが、議員は8万クローネで、委員長 は20万クローネである。伝統的に地方議員は公僕と考えられており、職業ではないと見られている。行政マン主導ではいけないが、熱意をもって専念するには報酬は少ない。
Q:現在市で関心が高いのはどんなことか。
A:教育・児童福祉では、遊びから学びへのスムーズな移行、学年の壁を越えた学びをどうつくるのかということである。(イァーリン市議)
Q:地方分権に関して政府方針で困ると思っていることはあるのか。
A:例えば、施設に夫婦で入居できるようにすると政府は言っているが、夫婦の一方で元気で残った方を施設から出すわけにもいかない。現在の行政改革は30年ぶりのものだが、国が地方に介入してくることに危機感を感じている。(イァン市議)
ー感想ー
議員という立場で他国の議員と意見交換したのは、初めての体験であった。退役軍人、現役漁師、労組の若い活動家と三者三様の議員は、その雰囲気も三者三様で興味深かった。 地域の市民の声をよく聞き、政策立案の段階から関与しているという市議会議員の姿がイメージされた。決して名誉職ではなく、一般市民と同じ目線で、平場で活動を共にする議員の存在は、民主主義と自治の典型であろう。保守党の長老議員であるイァン市議が国の行政改革のスタイルに批判を述べたことに、デンマークの地方分権の厚みを感じた。
ところで、職業政治家としての身分の確立は、議員の性質を変えることになるのだろうか。海外に出て、自分自身の身分は既に職業政治家なのだということを再認識することになった。「市民と密着した職業政治家」たらなければならない。
・・・・以下は、また近々。・・・・
エルシノア市での若干の観光
聖オーライ教会とブクステフーデ
クロンボー城
対岸スウェーデンのヘルシングボリ市
コペンの人魚姫
コペンのチボリ公園
ウィーン
感想
小国デンマークは生活・福祉・教育大国
立憲君主の下での協同組合的社会主義の歴史的実践 |