「今、地方政府を展望する市民集会」
世田谷発の市民協働は、住民自治から地方政府への道を歩んでいる。金沢国際地方政府宣言の肉付けに学ぶべき示唆は大きい。12月19日は、近江町交流プラザで保坂展人世田谷区長が縦横に語った。
地方政府への光を投げかけて
私たち市民の政策研究会「くるま座」が呼びかけた 「今、地方政府を展望する市民集会」には、土曜日の9時半という非常識な時間にもかかわらず、60人を優に超える方々が参加された。幅広い年齢層の市民に加え、会派の同僚議員、盛本県議はじめ県、他市町市議も熱心に耳を傾けてくれた。感謝。
二期目に入った保坂区政は、徹底した住民参加を土台にコミュニティ施策を大胆かつ着実に前進させている。まさに、「コミュニティデザイン」のタイトルに相応しい。 3.11の避難者支援から、空き家利用の施策化を進め、「地域共生のいえ」18箇所開設に発展してきた。オーナーと市民活動家、地域住民を結んで様々なアイデアが具体化され、就労支援、子育て支援、高齢者支援、障害者支援の地域拠点を形成しようとしている。
住民参加の核は、無作為抽出のワークショップだ。一日かけて議論を重ね、市民が提案者になり、やがて担い手になる。そこには、区職員も参加する。中高生が自ら泊り込み討論会を開き、区長を招いて相互討議する。こうして市民提案が区政に取り込まれてきた。
保育所の子どもの声への苦情から、子ども・子育て応援宣言を発信し、産後ケアセンターはじめ地域に根ざす子育てコミュニティを施策化している。引きこもり対策から若者支援センターを開設し、当事者交流でピアサポートに踏み出している。
教育ジャーナリストから衆議院議員に転身し、虐待防止法制定に深く関わった保坂区長だが、教育行政には少し距離を置いてきたという。しかし、安倍教育政策により、教育総合会議が制度化され、区長として口出しせざるを得なくなった。(保坂さん) それならばと、総合会議には、一般市民に公開し、幅広い意見を聴取するワークショップとしている。学校支援のしくみづくり、特別支援教育にインク
ルーシブの視点から支援学級を全小学校に設置した。そこでの教育活動に関心がわく。PTAとのくるま座談義では、学びとは何かの根源的な議論が始まっているという。
地産地消と自治体間連携を二本柱にする再生可能エネルギー施策は、事業者、交流自治体との相互協力で既に成果を上げ、国も評価を高めている。脱原発首長会議参加だけではなく、世田谷がキーステーションとなった首長会議が創設されてきた。
最近では、同性婚のカップルに、パートナーシップ宣誓書を交付する人権施策を開始した。 また、保坂区政は、戦後70年を記念し、区立の平和資料館を開設した。これには、東京大空襲だけではなく、広島、長崎被爆、沖縄戦も展示に加えてい
る。まさに、保坂展人の真骨頂だ。
質疑は、権限問題、行政文書管理と公開、コミュニティビジネス施策にも及んだ。世田谷区にももちろん課題は山積している。しかし、間違いなく、国政のベクトルとは違う価値観を具現化する独自性は際立っている。私は、そこに、地方政府の内実のひとつのモデルとそれへの確実な歩みを見る。