市民共有財産を譲り渡してもいいのか? 金沢市ガス事業・発電事業の株式会社譲渡問題について中間報告

金沢市ガス事業・発電事業の株式会社譲渡問題について中間報告

2020年5月    森 一敏

新自由主義構造改革路線が、公営企業の民営化を利潤追求の市場への開放として推進する波が、いよいよ金沢市にも及んできた。「突如」のように市民の前に姿を現したのは、昨2019年6月の「金沢市ガス事業・発電事業のあり方検討委員会」が設置されて以降のことだ。初会合を含めわずか4回の会議で、あれよあれよと「両事業の株式会社への譲渡が望ましい」とする答申となり、年末のパブリックコメント、基本方針骨子、そして3月定例月議会中に基本方針に格上げされた。

=ガス事業と発電事業を併せて市内に本社を置く新たな株式会社に譲渡する=

しかし、この短兵急な動きの中で、現した姿を市民が認識できているかは別の話だ。実際は、「ご存じでしたか?金沢市は、都市ガスと水力発電事業を民間会社に譲渡しようとしています」と問わねばならない状況にあると思われる。

くるま座に関わる諸氏の尽力もあり、新年早々に、民営化阻止にとりくむ市民グループ「企業局が民営化するってさ」金沢市のガス事業・発電事業のあり方を考える市民の会が発足し、山野市長および企業局、さらには市議会に対して問題提起を行ってきた。今日段階までの議会内外での経過を振り返り、いよいよ重要な時期を迎える今後の運動の課題について以下に報告したいと思う。

      ー関連サイト「企業局が民営化するってさ」カス事業・発電事業のあり方を考える市民の会

Ⅰ 前史として

Ⅱ ガス事業・発電事業の株式会社譲渡方針とのたたかい

Ⅲ エネルギーインフラの公益性についての調査研究

Ⅳ これからの課題と運動について

末尾に関連議会会議録抜粋

Ⅰ 前史として

1.2010年12月山野市政誕生以来の問題意識

■山野之義市長の新自由主義志向には就任当初から警戒

 山野之義氏が金沢市長に当選就任したのは、2010年12月である。すでに小泉―竹中ラインの構造改革路線が進行し、2005年には郵政民営化解散総選挙で小泉政権が圧勝し、郵政民営化が実現していた。「官から民へ」の合言葉のもと、公共部門の縮小と民間開放による「小さな政府」路線がポピュリズムを形成していた。中田前横浜市長、山田前杉並区長が相次いで市長選挙応援に来沢したことは象徴的であった。(右翼的ポピュリズム)

 山野市長の誕生は、まさにこの波が金沢市にも到来したことを意味した。私は、この結果を受けて、金沢市企業局労働組合(公営企業労働組合)役員とも警戒を共有し、質問を行っている。

■背景前史としての法律・政策・政府の主要な動きをまとめておく
(内田聖子アジア太平洋資料センター代表による)

1985 通信民営化(NTT)  
1987 国鉄民営化(JR)
1995 都市ガス供給、大口対象の部分的自由化を開始
1997 財政構造改革法制定
1999 PFI法制定
2002 構造改革特区法制定、水道法改正
2003 公の施設の指定管理者の導入(地方自治法改正)、地方独立行政法人法制定
2006 市場化テスト法制定
2007 郵政民営化
2009 公共サービス基本法制定
2011 総合特区法制定 PFI法改正
2013 国家戦略特区法制定 PFI法改正
2016 PFI法改正、電力の小売り全面自由化
2017 都市ガス供給、全面自由化
2018 種子法廃止、PFI法改正、水道法改正、漁業法改正 
2020 種苗法改正法案提出の動き

 2.国の市場化路線に通底する「水道法改正」と金沢市企業局の業務委託問題

■2018年金沢市企業局内に「ヴェオリア・ジェネッツ営業所」の虚偽記載発覚

 国会で水道法改正(コンセッション方式導入)が与野党間の議論となっている最中の11月に、市民からひとつの情報と問い合わせがもたらされた。

 「金沢市の企業局にヴェオリアの営業所があるとヴェオリア・ジェネッツのホームページに記載があるが、金沢市は既に民営化しているのか?」

 金沢市企業局の公営企業管理者に真偽を問うと「調査をしたら、ホームページにそのような記載があること確認したが、営業所設置の事実はない」との回答。12月定例月議会で質問し、併せて企業局内で行われている新ガス・電力事業のあり方研究についても言及した。

Ⅱ ガス事業・発電事業の株式会社譲渡方針とのたたかい

1.金沢市ガス事業・発電事業のあり方検討に対する2019年6月議会での問題提起

 局内研究として実施されてきた両事業の経営のあり方検討が、公の場に姿を現してきた。「譲渡」を前提とするあり方検討であることは誰の目にも明らかである。

 委嘱された委員の顔ぶれは、後の検討委員会の討議の進行に色濃く反映していく。

■2019年6月10日に金沢市ガス事業・発電事業のあり方検討委員会を設置

◇検討委員の構成                    (議事録からの森の印象)

髙橋  啓  座長・金沢学院大学副学長・経営情報学部長    ・・・推進

佐無田 光  金沢大学人間社会学域教授            ・・・慎重

坂下 清司  公認会計士                   ・・・中間

中川 一成  金沢市町会連合会副会長             ・・・慎重

能木場由紀子 金沢市校下婦人会連絡協議会会長         ・・・慎重

青海 万里子 NPO法人消費者支援ネットワークいしかわ事務局長 ・・慎重

浜崎 英明  金沢経済同友会代表幹事             ・・・推進

北村 哲志  金沢商工会議所副会頭              ・・・中間

オブザーバー 角田 憲司 日本ガス協会地域支援担当理事(東京ガス、千葉ガス社長、経産省登録経営診断士)

■6月定例月議会での質問

 他方、企業局の主体的な10年間の経営計画である「金沢市企業局経営戦略2016」には、経営のあり方に関する局内検討が位置づけられているものの、企業局が公的責務をもってひきつづき経営すると明言している。私は、この方針矛盾を軸に、市長、公営企業管理者と議論を展開した。

1.検討委員会への諮問の趣旨について

2.ガス事業及び発電事業に対する経営主体としての評価について

3.金沢市企業局経営戦略2016との整合性 市長の真意 答申の市民的議論への手順

4.「水とエネルギー総合ライフライン事業者」の公共性とは

5.経営形態の想定

6.世界の再公営化の流れに学んで間違いのない議論と選択を

 

2.金沢市ガス事業・発電事業のあり方検討に対する12月定例月議会での問題提起

■金沢市ガス事業・発電事業のあり方検討委員会は、4回の検討委員会の審議(実質的な審議は3回)により答申をとりまとめ、10月8日に市長に答申した。

◇答申内容

「金沢市ガス事業及び発電事業は、両事業を併せて 『株式会社』に事業譲渡することが適当である。」

主たる理由は、①地方公営企業法の制約から、ガス事業、発電事業の完全自由化によるメリット(セット販売、ポイント還元など)を利用者に提供できない。②地方公営企業としての役割が希薄化している。近年、ガス事業では、導管の面的整備がほぼ完了しているほか、家庭用需要の減少により需要構造が大きく変化していること、また発電事業では、水力発電の開発が完了しているほか、電力小売の地域独占撤廃により卸供給のみでは地産地消が困難になっていることなど。③厳しい経営環境における事業の持続可能性の確保が必要。地方公営企業のままでは、ガス事業は、エネルギー間競争等による家庭用需要の大幅な減少、また発電事業は、電力会社との長期契約終了後の売電価格の変動により経営環境が厳しくなることが予想される。また、人口減少や地球温暖化対策の進展などへの対応から、経営の柔軟性を高め、事業の持続可能性を確保する必要がある。④株式会社によるガス・電気の一体経営は事業環境変化への柔軟な対応が可能であることから、株式会社で両事業を一体運営することによりサービス多様化が図られ、市民サービスの向上や、ガス事業の営業力強化、再生可能エネルギーの地産地消等を実現することが可能となるため。とし、

留意点に、①地域のエネルギーのあり方に対する市の責任 ②事業譲渡先となる株式会社は、金沢市内に本社を置く、新設会社とすることが望ましい ③事業譲渡先への金沢市の出資 ④事業主体の公正な選定(公募型プロポーザル方式で安全安心、地域貢献) 

⑤金沢市内事業者の活用 ⑥円滑な事業承継等のため金沢市職員を派遣 ⑦可能な限り早期に事業譲渡を ⑧市民等への周知(金沢市民や市内事業者に対する丁寧な広報広聴)を挙げた。

 閉じられた検討委員会での実質三回の検討での答申である。付された理由には、両事業に対する評価や、公営事業の意義を矮小化している点、譲渡による市場開放の持つ問題点などが十分に議論尽くされず、無批判な期待感で民営化という予め敷かれたレールに乗せようとする力が働いている。「社会的共通資本」であるエネルギーライフラインの観点から論争を挑んだのが、12月定例月議会であった。

■2018年度分企業会計決算審査(2019.11~12はじめ)において、企業局内のあり方検討は、2018年の秋にコンサルタント会社に委託して行われていたことが判明(PwCアドバイザリー合同会社に1,579万9,320円の随意契約により)

■金沢市ガス事業・発電事業のあり方検討委員会答申をもとにパブリックコメント(約6万件の利用者にはダイレクトメールにより)実施(2019.11.27~12.26)

 また、企業会計決算審査特別委員会で調査する中で、局内研究の実態が明らかになり、企業局が民営化を手がける外資系コンサルタント会社を通じて譲渡路線を描いていることが浮かび上がった。「スピード感」を強調する山野市長は、12月定例月議会を待たず、パブリックコメントに入っていた。

■12月定例月議会(12月10日)での質問

1.本答申の受け止めについて 果たして審議は尽くされたのか

2.局内のあり方検討について 

・随意契約PPP、PFIコンサルタント会社(Pwcアドバイザリー合同会社)の委託報告書

・金沢市の事業環境をどう分析、シミュレーション根拠の雑駁さ

・「公共的な便益」についての評価は

・2025年までの経営戦略(金沢市企業局経営戦略2016)に基づく局内検討としての妥当性は

3.ヨーロッパを中心に再公営化に向かっていることの認識について

 ・再公営化の理由の認識は

 ・国内での民営化先行事例の追跡調査は

4.基本方針策定とパブリックコメントについて

・想定タイムテーブルは

・情報提供、十分な対話とコンセンサス、先にスケジュールありきではあってはならない

3.市民運動の立ち上がりと連携した3月定例月議会での問題提起

■パブリックコメントに対し、複数の市民団体が拙速との批判の声を上げる

「企業局が民営化するってさ」金沢市のガス事業・発電事業のあり方を考える市民の会が発足

・意見交換の場を要望する申し入れ、公開質問(2019.12~2020.1)

・パブリックコメントの結果公表で過去に例のない異例の賛否の分類がなされ「恣意的な誘導」との批判

市民団体の検証活動が開始される。 

◇企業局発表

「ガス事業及び発電事業の事業譲渡に関する検討」についてのパブリックコメント

  • 募集期間:2019年11月27日(水)~12月26日(木)
  • 意見提出数:701人(延べ 1,463件)
  • 意見の内容

   意見者の状況 ・ 検討案推進 259人 ・ 公営維持 179人

・ 不明、意見なし等 263人    合計701人

意見合計 1,463件

◇「企業局が民営化するってさ」による検証結果

① 「不明、意見なし等」に分類された263名のうち166名の人々が、「民営化に明確に反対」、「民営化に疑問」、「提供される情報が不足している」、「パブコメのやりかたが問題」等々の “明確な意見” を記している。

② 「検討案推進」とされた259人の中にも、民営化に「反対」や「疑問」を唱える記述が、少なからず見つかった。

《「不明・意見なし》分類の中でも、明らかに「反対」を表明しているもの(番号は企業局が付した通し番号)》

  12  エネルギー自由化そのものに反対です。期待されるメリットとやらにも興味はない。

  40(発電事業の株式会社への事業譲渡には賛成だが)ガス事業の「株式会社」への事業譲渡は絶対に大反対。

  41  利用者が減少し続けているガス事業こそ市が責任を持って経営すべきです

  50  ガス事業だけは市営での存続を再考して頂くことをお願い致します。

147  金沢市のガスサービス事業は現状で十分(…)営利を目的とする株式会社の事業とすべきではない。

202  ガス事業について「株式会社」になる事に反対します。理由は料金が必ず高くなるからです。

298  安全・安心な供給が損なわれる可能性があることからガス事業を民営化することには反対です。

343  ガス事業の市からの事業譲渡は反対です。

369  ガス事業の民間会社への事業譲渡には絶対に反対です。

461  株式会社は本来利益追求が目的であるから、公共的なサービスを第一に考えることを強く望みます。

614  市民の貴重な財産である発電事業を(…)いとも簡単に民間企業に施設と共に譲渡してしまうとすれば大いに問題

《懸念や疑問を表明しているもの》

  38「株式会社」に事業譲渡することで諸問題が解決できるのか?

  93  果たして民営化して住民にプラスになることが現実的であろうか。民営化した場合 大幅な値上げに跳ね返って は来ないのか

126  事業譲渡することにより、将来災害がおきたりした場合、料金が急に高くなったりすることを心配します。

358  株式に変更するのと事ですが、料金高騰や会社倒産の恐れは無いのでしょうか?

359  拙速すぎるのでは?ガス・電気については公益性の高い金沢市企業局が担うのが最適と思われる

631  「株式会社」(収益を上げなければならない会社)へ譲渡した際の事業の安定継続、ガスの安定供給が危惧されます。

641  ガス・発電事業を一体的に運用できる株式会社が存在するのか少し疑問。

672  株式会社化しなくても他の施策がとれるのではないでしょうか。

■再度のパブコメ、説明会は行わないとする金沢市、金沢市企業局に対し、説明と意見交換を求める集会、公営エネルギーの民営化に関する学習会、研究集会が相次ぐ(経営企画課長、補佐出席 2020.2月~3月 「日本学術会議石川県支部」有志学者、市民本位の金沢市政をつくる市民の会)

■これら三団体からなる金沢のガス発電事業の民営化を考える市民連絡会が、金沢市議会3月定例月議会に対し「慎重な検討を求める陳情書」提出(2020.3.2)

■「企業局が民営化するってさ」による検証市民集会(2020.3.12 経営企画課長、補佐)
                ー新型コロナ感染症防止びため事務局メンバーで対応ー

 企業局当局の釈明は、両事業の一体譲渡に賛成の場合に「推進」、両事業の公営維持は「公営維持」、一方にしか意見を述べていない場合などは「不明・意見なし」とわかりやすさのために類別したもので、全ての意見を反映させるよう努めた結果であり、不適切ではない、というもの。

 しかし、企業局のこの論理ならば、両事業の一体譲渡に賛成していなければ、方針骨子案には賛同していないと表記するべきである。それが意見の多数派であり、公営への信頼感の高さが意見の基調になっていることを認めるべきである。この点に於いて結論を誘導し、市民の真摯な意見の無視である。

 これらの急速な市民有志の行動は、公共財であるエネルギーインフラの行く末に関する重要な課題が、所有者である市民の声をおざなりにし、民間譲渡ありきで進む事への危機意識に突き動かされるものである。約二ヶ月間の学習、調査活動により公営事業の価値を深く認識しながら、市民の代弁者であるべき議会に対し、市民の公共財を守ってくれるよう議員各人や議会そのものに要求する地道なロビイ活動も展開された。

 こうした活動に加え、後に報告するエネルギーインフラの公益性についての調査研究などを行いながら、3月定例月議会の論戦に臨んだ。

■3月定例月議会(3月12日)での質問・問題提起の骨子

1.ガス事業・発電事業の株式会社譲渡の基本方針に関して

(1)市民の意見の尊重について

・責任ある市長、管理者がなぜ出席して直接説明しないのか

・「恣意的な公表結果で誘導か」と疑う声にどう説明

・ガス・発電事業公営化以降約100年。この歴史の重み。骨子案策定に当たり両事業の礎となった方や発展を担われた方々から丁寧に意見を聴いているのか

・歴史的価値、投下されてきた資本、投入されてきた先人の労苦は大きな資産価値 これを市民の了解なしに売却してはならない。(保守系他会派議員の賛同意見)

・水利権の調整の見通しは

(2)基本方針骨子案と関連当初予算案について

・譲渡準備関連事業費が、骨子案の段階で譲渡前提の予算として計上されていることは釈然としない

・基本方針骨子案がどのような手続きで基本方針となるのか

・事業譲渡アドバイザリー業務委託費の業務内容、1億4000万円の積算根拠と選定手続

(3)公営企業の公益的な役割を再評価する観点から

・株式会社への譲渡がどう経営環境問題の解決につながるのか

・多くの市民が高く評価する上下水道と都市ガスの供給や故障対応、安全確保などのサービスを実質的にワンストップで提供してきた体制が譲渡後は維持できるのか

・新株式会社となっても、経営状況や利益配分など財務情報が「ブラックボックス」にならず公的なチェックができるのか

・これからの公益的な施策展開の可能性について

「せたがや版RE100宣言」  

気候変動対策への責任として、区内で使用する電力を100%再生可能エネルギー化する目標 

・神奈川県三浦市内の区有地に太陽光発電所を設置するとともに、地域分散型の再エネ調達を手がける新電力と提携し、福島県南相馬市の太陽光や県営長野水力の電力などを区庁舎や保育園ほか公共施設などに導入する取り組みを進めている。電力生産地の住民と区民、子どもたちとの交流事業が活発化するなど地域間連携も豊かに展開中。

・ドイツにおける「再公営化」で注目を集める「シュタットベルケ」
上下水道、発電をはじめ多様な公共サービスを組み合わせて暮らしを支え、その利益で自治体の財政にも貢献している。

・加えて、エネルギーの安全保障の観点  
北海道胆振東部地震によるブラックアウト、台風15号による千葉県の長期大規模停電 危機管理上エネルギーの複線化は重要課題。松江市の公営ガス民営化の検討は、災害時でも水素から電力を生産できる都市ガス機能を再認識し、議会が慎重市姿勢に転じた。あり方検討の中でこうしたエネルギー縮小時代の新たな役割や手法の検討は十分になされたのか。

・売電主体となれる本市公営水力は極めて優良な経営事業であり、さらに将来価値は高まる。少なくともガス事業との一体売却は見送るべきだ。(保守系他会派議員の賛同意見)

・金沢市の公営エネルギーがSDGsの核となり、公営水力をもつ稀有な環境未来都市として存在感が高まる時代が来ている。金沢の付加価値を高める資産を失って「もったいなかった」と後悔しないためにここで立ち止まり、腰を落ち着けて調査研究を深めること、行くべき道を説明・意見交換会、公聴会など市民参加のもとで共に考えることを改めて求める。

■2020年度金沢市議会内に特別委員会設置

    この3月定例月議会では、譲渡準備のための予算が31人の賛成多数で承認された。また、金沢のガス発電事業の民営化を考える市民連絡会が、3月定例月議会に提出した「慎重な検討を求める陳情書」は、みらい金沢、共産党、創生かなざわ議員の11人が賛成したものの、少数否決となった。

    しかしながら、市民の声を議会としても反映しなければならないとの総意により、ガス事業・発電事業の民営化に関する特別委員会が設置されることになった。議決したのは、準備のための予算であり、譲渡そのものに承認を与えたわけではない。独立機関である議会として独自に調査し、株式会社譲渡の是非について、的確な判断を下せるようにしなければならない。

Ⅲ エネルギーインフラの公益性についての調査研究

議会対策と市民運動とも連携させるべく、1月末に公営企業の民営化・市場開放の問題性と自治体の公営エネルギー事業の社会的価値や新時代の可能性について調査を行った。

 1.行政視察等

【アジア太平洋資料センター訪問】―2020.1.28―

◆内田聖子代表からの聞き取り

・金沢の動きは、水道コンセッション浜松市の動き、宮城県の同じく広域水道のコンセッション条例可決と共通している。

・共通しているのは、金沢での内部検討にPWC合同会社が入ったように、外資系のコンサルタント会社が参入し、民間譲渡しかないという報告書を出していること。

・だから、エネルギーにとどまらず、必ず水の民営化に繋がる可能性が濃厚。国内企業が参入するにしても、世界の公務分野を民間市場化するという共通利害が通底している。

・それを促してきたのは、総務省であり経済産業省だ。公共財を民間市場に投げ出す制度改変を政策的に誘導している。その公的検討の場に、民間企業が入り込んでいる。証拠はいくつも見出せる。

・公共的な役割と言えども、利潤追求の範囲内にとどまる。利益の配分では、株主配当、役員報酬が最優先する。生み出した富が域外に流出する。配管など地元中小事業者に仕事が回らず、効率的な県外事業者にとって代わられる。これは、地域経済には大きな打撃になる。

・しかも、民間企業となれば、基本的に自由競争の中で、財務状況の開示を求めても、私企業の経営情報は出せない。説明責任はこうして放棄される。契約書の内容は要注意。

・多面的に問題を明らかにし、社会的共通資本の意義を改めて市民共通のものに提示することが、喫緊の課題だ。

【「公営ガス事業は地域自治政策」自治労公営企業局訪問】―2020.1.29―

 1月29日は、自治労公営企業局を訪れ、石川公営企業局長から聴取させて頂いた。事前に提出した質問事項に丁寧な文書回答も用意された。

◆石川さんは、松江市長、同市公営企業管理者が前のめりになってきたガス事業の民営化に対し、自民公明が多数を占める松江市議会が、反対でまとまる状況になってきた伝えてくれた。

・その決め手は、ガス事業を単なるエネルギー供給ではなく、地域自治と暮らしの危機管理に大きく寄与するものであり、残すことの意義を理解したことに拠るという。

北海道胆振地震でのブラックアウト、千葉県の広域停電は、バックアップエネルギーの重要性を教えている。都市ガスはエネファームのように発電機能を発揮する。

・松江市も金沢市同様、管路は地域に閉じたもので、狭いエリア供給だからこそ細部まで熟知されている強みがある。だから、地域の様々な課題にエネルギー供給を通じて貢献できる。エネルギー公共政策、まちづくりに力を発揮する潜在能力を持つ。

・職員には、営業マン的な感覚だけではなく、政策遂行者としての意識が望まれる。公営企業管理には、そのための人事や政策的な公営企業の制度的な改革の先頭に立つべきだ。

・一旦、民間譲渡してしまえば、料金体系の適切な設定や利益配分、財務状況などがブラックボックスに入ってしまう。ライフラインでありながら、行政も議会も関与できない。

私企業となれば、株主配当、役員報酬、道路使用料、公租負担などが生じるが、それが適切に行われるかチェックできない。経営上の秘密になるからだ。

例え、職員派遣しても、次第にこうしてエネルギーインフラから市行政は遠ざかっていくだろう。

・また、公的関与は、民間会社化の目的とは真っ向から反する。仮に3割程度市が出資して発言権を得ても、私企業の経営論理を超えて経営を左右できるものとはならないだろう。これらが、ヨーロッパの民営化で事実となり、再公営化の動きになった。

・金沢市は、経営状態は良好であり、他からの民間参入の環境もないものを売り払いなどもったいない。小売自由化の推移を見極めてからでも遅くない。

◆終わりに、石川さんは、ドイツで広がるシュタットベルケ(まちの事業)の可能性と日本での導入の必要性を語った。

・シュタットベルケは、水、エネルギー、公共交通、廃棄物、文化施設など暮らしに関わる公共分野を連関させて経営する公益事業体だ。生み出した利益は、公的政策の原資に使われる。相互補完も可能だ。

・日本政府は、公営企業の連結決算すら認めず、経営の自由度を縛り、廃止、民間市場化を誘導している。市民的な共通資本・公共財を守り、発展させる政策転換が必要だ。その問題意識を今こそ広げる機会だ。

【世田谷区保坂展人区長との政策意見交換】―2020.1.29―

 1月29日夕刻からは、私が市民派政治家のロールモデルとして尊敬する保坂展人世田谷区長と、しばらくぶりに政策論議の機会を得た。

・世田谷は、保坂さんが区長になってすぐに、3.11を教訓に、再生可能エネルギーの導入に大胆な施策を取り入れた。福島の自治体と連携して再生可能エネルギーの買電協定を結び、支援と同時に、再生可能エネルギーの世田谷を発信した。それを担う「みんなの電力」株式会社を通じ、長野県から水力発電電力を買電しているという。東電よりは安く、しかし長野県には高い料金設定で買電している。

・既存の発電所を持たない世田谷が、再生可能エネルギー政策を自治体間連携で進めている。その世田谷から見れば、水力発電所をもち、都市ガスからエネファームで発電もできるプラントを持つ金沢市が羨ましいという。売却なんてもったいないと、二人は口をそろえる。

・時代の要請からクリーンエネルギーは付加価値を高めていく。都市経営の財源を生み出す可能性が高まるガス事業・発電事業は金の卵だ。

保坂区長や新電力関係者を招いた金沢市民集会の話も持ち上がった。ー再生可能エネルギー政策が新たなまちを創るー

【新電力「みんな電力」視察】―2020.2.27―

 始発で来て最終で帰る。世田谷区三軒茶屋に会社オフィスを構える「みんな電力」。保坂世田谷区長の紹介で、詳細に聴取できた。ビジネスから見た金沢市発電事業の公益性の認識を深めることができた。

ー詳細は割愛ー

◆まとめ

 この視察では、世界の投資家の置く価値は再エネであることを認識。それは持続可能性。その投資家に促され、日本含め世界の企業は、再エネ、気候変動対策を前面に出している。大手電力が再エネに走る経済的背景。

 だから、良質の再エネに殺到している。これからさらに。ここに、公営再エネが、資金調達しながら公共的な役割を果たせる必然がある。

 それだけではない。再生可能エネルギーによる電気が、作り手と買手を結びつけ、コミュニティ同士の交流を仲立ちしている。エネルギーがエネルギー以外の公的便益を付加価値化する。こうしたコミュニティビジネスを担う志高い人々は他にもたくさん生まれている。その連合に行政が連携する。そのツールに公営エネルギーがなり得る。

2.研究会

【「金沢市ガス・発電事業民営化計画の内容と問題点」まとめ】

3月14日、15日の両日、金沢大学包括的再生のガバナンス研究会、日本科学者会議石川支部が共催する市民講演会「金沢市ガス・発電事業民営化計画の内容と問題点」

■中山琢夫特定講師の専門研究対象 ドイツの「シュタットベルケ」※

※都市のエネルギーインフラ・公共サービスの総合公益事業体(自治体出資による)・・再エネ発電、ガス事業、熱供給事業、公共交通等を総合的に担う 日本語に意訳すると「公営企業」となる

◆シュタットベルケは、ドイツでは1990年代に進んだ民営化の失敗から、自治体がエネルギーを市民に取り戻そうと、2010年前後から急速に拡大してきた。「うまくいかなかったから買い戻そう」

しかしこれには多大な時間と金と労力がかかった・・・

民営化による流出から取り戻そうとしたものは

①公平公正なエネルギー   ②エネルギー事業から生まれる利益

◆シュタットベルケは、再生可能エネルギーを供給し、持続可能な都市政策に貢献し、併せて自治体に利益を還元する。その拡大のために地域を越えて相互に連携する。民間企業とも連携し、再エネ事業への出資や研究開発にも取り組む (代表例は自治体系電力シュタットベルケ・ミュンヒェンなどなど)

◆つくり出す地域経済循環 

→事業の利潤と地方税の地元自治体への還元→自治体収入の増加による投資機会の増加→地元地域への投資(道路、学校、公園等の建設投資財源)→自治体市民の生活向上→より多くの顧客によるより多くの利益→

◆金沢市公営企業は、5つの公益的事業を総合的に経営している点で言えば、日本におけるシュタットベルケと言える

□ガス事業の単年度黒字(8億5千万円余)、累積欠損、企業債残高の順調償還 発電事業の単年度黒字(2億7千万円余)、企業債の償還完了

  合わせて年間11億円余の利益を生み出す優良事業「金のなる木」を本当に易々と手放すのか? 

□発電、ガス事業それぞれの小売り完全自由化により、市場は極めて流動化している・・・熾烈なM&A合戦の展開、ガス・発電事業者間の食い合い 

その意味では民間市場の先行きは見えない

・金沢市の両事業を株式会社に譲渡してもその先に出資主体がどう変転していくのか不確定
                               (ガス部門の売り抜きも?) 

・その動向を見極める腰を落ち着けた構えがむしろ市民の利益になるのではないか公営であるが故に守られる面あり

□金沢市の両事業のもつ独自の環境

①ガス管路とLNG製造プラントは域外から遮断され市域内で完結している

・金沢市自らが開放しない限り参入者が現れるとは考えにくい

・長年に亘って築いてきたノウハウ、安全体制、市民利用者からの信頼は資産である。企業局が経営する限り、これを上回る事業者が現れることは難しいのではないか

・人口減少への直接的な手だては難しくとも、ガス需要は無くなることは(ガス再評価の動きもある 需要縮小安定での営業展開もあってよい)

・エネルギーのリスクヘッジとしての都市ガスの施策展開(緊急時代替え)

②水力発電所は再エネ投資の側からは注目の的 

・保有する唯一の基礎自治体としてESD投資、SDGsなど世界の趨勢に自治体として参画できる未来資産である 自治体財源への寄与大に

・気候変動への自治体政策上自治体が保有することの価値を再評価すべきではないか 
 多様な意味で「打ち出の小槌」

□文字通りのシュタットベルケとなるには制度上の壁があるが・・地方公営企業法による制約は確かにある

・連結決算ができない

・付帯事業が限定され、ドイツのような自由広範な経営展開はできない

・電力の小売りは事実上困難

▽それでもできることはある

 →国が自由化を促すなら、地方公営企業法の規制改革を自治体運動に

・公営を堅持しながら制度改正を待つという考え方

 →再エネ新電力への卸売電により売電価格の引き上げ効果
     (新潟県営水力2年間で96億円増収など)

  北陸電力への卸売電価格は地方公営企業法適用事業体全国25の中で下位2位 

  長期相対終了R7年以後に積極売電の施策可能に 

  2億7千万円余→10億円越えの可能性も

   新電力との提携による実質的な家庭売電、売電戦略の高度化、自治体間連携・交流人口拡大等

□どうしても株式会社の自由度を優先選択するなら・・

・金沢市100%出資の株式会社

・最低でも51%出資で決定権を握っておくことが市民財産への責任、エネルギー政策の担保条件、透明適正な経営のチェック権限

・この条件で参加企業がないなら孤塁を守る

・市民の利益を持っていかれることがないよう 一度手放したら取り戻すのは至難の業 考えて考えて検討すべき

3.近年の「規制改革」の動向

■背景としての国の規制改革推進

 ▼公営企業の経営のあり方等に関する調査研究会(2014.11.6~2015.3.25)
           ~ 公営企業の広域化・民間活用の推進について ~
        (人口減少社会における公営企業の新たな展開について)
   ー村山 卓現金沢市副市長・当時香川大学大学院教授が委員として参加ー

     総務省自治財政局公営企業課においては、一般財団法人 自治総合センターが設置する「公営企業の経営のあり方等に関する調査研究会 ~公営企業の広域化・民間活用の推進について(人口減少社会における公営企業の新たな展開について)~」に協力することとなりました。公営企業に係る広域化や民間活用の方策等の検討を中心に、公営企業の今後のあり方等の検討を行う予定です・・・。
1.背景・目的
    公営企業は、地域において住民の暮らしを支える重要な役割を担っているが、少子高齢化・人口減少、施設の老朽化の急速な進展等により、取り巻く経営環境は厳しさを増しつつある。このような状況の下で、必要な住民サービスを確保するため、総務省においては、各公営企業が経営状況等を的確に把握した上で、中長期的な経営の基本計画である「経営戦略」を策定し、同計画に基づく計画的な経営基盤の強化に取り組むことを要請している(「公営企業の経営に当たっての留意事項について」(平成26年8月29日付け自治財政局公営企業課長等通知))。
    しかしながら、人口の減少等が著しい市町村をはじめ、特に経営環境が厳しい地方公共団体の公営企業においては、現在の経営形態を前提とする検討、取組のみでは、将来にわたり住民サービスを確保することが困難と見込まれることも想定される。これらの地方公共団体においては、住民サービスの担い手や手法の新たな展開等を検討することが必要である。
これらのことを踏まえて、公営企業に係る広域化や民間活用の方策等の検討を中心に、公営企業の今後のあり方等の検討を行うため、「公営企業の経営のあり方等に関する調査研究会」を設置する。

    ▼公営企業経営のあり方に関する研究会(2016.5.27~2017.2.21 計9回)
   ー金沢市企業局から経営企画課長が委員として参加ー
1.背景・目的
 公営企業は、飲料水・工業用水の提供や下水の処理、公共輸送の確保、医療の提供をはじめ、地域において住民の暮らしを支える重要な役割を担っているところ、高度経済成長期以降に急速に整備された社会資本が大量に更新時期を迎えつつあり、人口減少に伴う収入減等も見込まれる等、取り巻く経営環境は厳しさを増している。
 このため、総務省は「公営企業の経営に当たっての留意事項について」(平成26年8月29日付け公営企業三課室長通知)において、各地方公共団体が公営企業の経営健全化等に取り組むに当たっては、その前提として、まず現在公営企業が行っている事業の意義、提供しているサービス自体の必要性について検証することを求めているところである。
 また、一部の地方公共団体では、民営化や公共施設等運営権方式(コンセッション方式)の導入等、民間経営主体の活用による、より効率的な経営手法の導入が模索されている一方で、上下水道事業では、地域の実情に応じて、広域連携や事業の最適化等に向けた検討も進められているところである。
 こうしたことを踏まえ、公営企業について、廃止・民営化・広域化・民間活用といった抜本的な改革について検討を行うため、「公営企業の経営のあり方に関する研究会」を開催し、関係者の意見を伺いながら、公営企業の各分野について、抜本的な改革に関する考え方や、対象、課題、方策等について整理を行うものである。

 ▼同 研究会報告書発表(2017.3.22)
 「公営企業の経営のあり方に関する研究会 報告書」の公表
 総務省では、人口減少等に伴う料金収入の減少や、施設の老朽化に伴う更新需要の増大など公営企業を取り巻く厳しい環境を踏まえ、経営基盤の強化と財政マネジメントの向上を図るため、「経営戦略」の策定とあわせて、事業廃止、民営化・民間譲渡、広域化等(*1)及び民間活用といった抜本的な改革の検討を推進しているところです。
 その基本的な考え方は、平成26年8月に発出している通知(「公営企業の経営に当たっての留意事項について」(*2))において示されているところです。
 平成28年5月より「公営企業の経営のあり方に関する研究会」を開催し、公営企業各事業における抜本的な改革について、地方公共団体が改革の検討を行うに当たって参考となるよう、より具体的な考え方や留意点等に係る検討を行ってまいりました。
 この度、同研究会において報告書がとりまとめられましたので、公表いたします。
報告書の概要は以下のとおりです。
○ 抜本的な改革の検討に当たっては、事業そのものの必要性・公営で行う必要性及び事業としての持続可能性について検証するとともに、経営形態や担い手のあり方について抜本的な検討を行うことが必要であると整理している。
○ 水道及び下水道事業の改革の方向性は広域化等及び民間活用であり、その類型及び検討に当たっての留意点を分かりやすく整理している。
○ 事業分野全体の中で民間事業者の構成割合が大きく、民間代替性の高い事業の代表例であるバス、電気、観光施設及び駐車場整備の各事業は、「経営比較分析表」(*3)の新たな作成・公表対象事業とし、客観的な経営指標を活用した改革の検討が行われるよう、抜本的な改革の方向性及び留意点を整理している。
○ これら以外の公営企業の事業についても、事業ごとの特性に即して抜本的な改革の方向性を整理している(*4)。
*1:広域化等とは、事業統合をはじめ、施設の共同化・管理の共同化などの広域的な連携、下水道事業における最適な汚     水処理施設を選択し整備する最適化を含む概念。
*2:平成26年8月29日付け総務省自治財政局公営企業課長等通知(参考資料3)。
*3:「経営比較分析表」は、各公営企業の経営及び施設の状況を表す主要な経営指標とその分析から構成されており、平成28年2月より水道及び下水道事業について作成・公表を開始している。本報告書を踏まえ、総務省としては、順次、作成・公表対象事業の拡大を図る予定。
*4:病院事業については、別途、「地域医療の確保と公立病院改革の推進に関する調査研究会」を開催し、検討を行っている。.

 ▼国の規制改革推進会議におけるエネルギー分野の規制改革に関する意見
   「ガス事業の競争不十分、促進を」(2018.5.18)
「他方、ガスシステムは、2017年4月に都市ガスの小売全面自由化が行われたものの、いまだその成果は限定的である。・・ガス料金の低廉化のみならず、電力とガスの組合せ、ガスと他のサービスとの組合せなど、多様なエネルギー関連サービスを享受できるよう、早急に具体策を検討し、電力と歩調を合わせたシステム改革を行うべきである。」

Ⅳ これからの課題と運動について

1.譲渡準備のタイムテーブル

令和2年(2020年)度 
  譲渡アドヴァイザリー業務委託先決定、譲渡先選定委員会設置、募集要項公表、募集開始、優先交渉権者決定

令和3年(2021年)度 
  関係条例等議決、事業譲渡契約締結、新会社設立、事業引継

令和4年(2022年)度 
  事業譲渡(2022年4月1日)

    これが、金沢市及び金沢市企業局が描く譲渡までの基本的なタイムテーブルである。既に企業局は、5月に入って、1億4千万円(次年度分債務負担行為6千万円を合わせて2億円)で譲渡アドヴァイザリー業務委託先を公募型プロポーザル方式により選定を終えた。またしてもPWCアドヴァイザリー合同会社を委託先に選定した選定会議は、非公開で行われたことを第1回建設企業常任委員会で明らかにさせた。譲渡先選定委員会の設置、PWCが主導する固定資産・事業価値評価を9月にかけて行う。その後に募集要項の公表から公募が開始される運びである。

    この譲渡アドヴァイザリー業務委託に係る情報の公開請求運動から、議会内外を結ぶたたかいは始めなければならない。

2.譲渡阻止の運動課題

 多くの議員の認識は、市長の方向が譲渡であることを十分に分かりながら、まだ決めたわけではないというもの。それが、二元代表の片翼である議会権能の顕現であると言いたいわけだ。3月定例月議会で、多数議員が承認したのは譲渡ではなく、譲渡までの準備に係る予算執行権限だけであると。

 理屈の上では、条例改正こそが譲渡の承認である。否決もあり得る。そこまで費やす億単位の経費をまさに無駄にしてでも。私たち議会内少数派は、その奇妙な理屈を多額の既成事実を踏み越えて優先させる勇気が賛成議員にあるとも思えないながらも、この手続きにかけるしかない。

 言うまでもなく、この手続きを行えるのは、議会内の38人の議員以外にはあり得ない。準備予算を承認した38人-(議長+不承認6人)=31人の議員から13人を条例改正反対に回らせるにはどうするのか?この一年あまりの期間というのは、これにつきる。

(因みに陳情不採択議員は27人 条例改正反対には9人を転換させることに)

 その方法は煎じ詰めれば4つに整理できる。

  ◇譲渡に係る手続きに違法性を見つけ出すこと。   ・・少数精鋭でも可能

  ◇手続きに偽りを見つけ出すこと。           同

  ◇手続きに利権的不法性を見つけ出すこと。       同

    ・国家の権力的介入(政策的な市場開放圧力)

    ・経済界への利益誘導(官民連携の体制)

  ◇有権者市民多数が譲渡に反対し、議員を包囲すること。・・大衆的運動の広がり必要

    ・エネルギーの公益性、エネルギーの安定性と安全担保

    ・気候変動対策とSDGsに位置づける自治体のエネルギー自治政策

    ・公営企業の生み出す価値と富の市民的共有への理解

    ・水、福祉等の全般的な公共性の破壊へと道がつながることへの共通認識

  これらに関わる情報を市民と共有するための仕掛け 

  また、法律的な可能性を調査検討する必要がある。

 3.たたかう体制について

 私たちの主体を強固にし、外へ広げる柔軟な運動と不退転の行動。くるま座が培ってきた人脈の最大限の活用を。

また、各地の公営事業の民営化市場化に反対してたたかってきた市民労働運動渡航流連携すること。

弁護士との相談、地方公営企業法、契約法の専門家から見解を得ること。

 

【関連議会会議録】

―以下2010年12月議会(12月10日)での質問より抜粋―

森:次に、所信で表明された方針について、マニフェストにも照らしながら、幾つかお尋ねをします。

 その第1は、企業経営の視点からの徹底した行財政改革による財政健全化、そして、市長の中で対の方針となっていると思われます民間活力の導入、経済界からの副市長登用による経済対策、これについてです。私は、これこそが山出市政と一線を画する方針ではないかと受けとめております。マニフェストでは、市職員の給与・退職金の見直し、市の外郭団体制度の見直し、行政委員会の報酬見直しにも踏み込んでおられます。その一方で、来年度予算編成方針では、民間活力の積極導入を求めています。いわゆる小さな行政、官から民への路線、まさに、あの世界で破綻の憂き目に遭った新自由主義構造改革の路線ではないでしょうか。選挙戦において、中田前横浜市長、山田前杉並区長が相次いで山野候補の応援に金沢入りをしました。・・・企業経営の視点からの徹底した行財政改革、民間・経済界からの副市長登用による経済対策とは、今述べた横浜市や杉並区をモデルとする市場原理主義の市政運営を志向しているのでしょうか。その具体像をお聞かせください。

山野市長:・・・そしてまた、市場原理主義の市政運営を志向しているのかということでありますけれども、限られた財源の中で、効率的で無駄のない行財政運営を求められているところから、企業の経営感覚、民間の経営感覚というものを大切にしながら、これまでにない発想で事務事業の見直しなどに努め、健全財政の堅持に資することができればというふうに考えております。・・・いずれも、市民福祉の向上に寄与するものというふうに考えておりまして、単に経済効果だけを訴求する市政運営を考えているわけでは決してありませんので、御理解をいただければというふうに思います。

―以下2018年12月定例月議会(12月20日)での質問より抜粋―

森: 12月6日、臨時国会で、与党などの賛成多数で水道法が改正されました。大きな問題とされてきたのは、水道事業は自治体保有のまま、運営権を民間会社に譲渡できるコンセッション方式の導入です。・・・このように、周回おくれの民営化と批判されてきた今水道法改正を市長はどのように受けとめておられますか。

山野市長:・・・ただ、本市は、これまでも経営の効率化に積極的に努めてきたところでありますし、何よりも水は生命の維持に不可欠なものであり、安全・安心な供給を確保するということが最も大切なことであるというふうに思っておりますので、今のところ、金沢市はコンセッション方式の導入は考えてはいません。ただ、やはり老朽化であったり、課題があることは事実でありますので、広域連携の推進など、一層の経営改善に取り組み、水道事業の基盤強化に努めてまいります。

森:・・・市民から、世界の水道事業の民営化に参入してきたフランスの水メジャーヴェオリア社の日本法人であるヴェオリア・ジェネッツの営業所が、社のサイトによりますと、金沢市企業局に置かれている、民営化は始まっているのかとの問いでありました。企業局は、料金徴収部門をヴェオリア・ジェネッツに委託しているとのことですが、営業所記載の事実関係並びに事業委託の経過についてお尋ねします。

桶川公営企業管理者:ヴェオリア・ジェネッツのホームページにおける金沢営業所の記載について、今月4日に、この会社へ事実を確認しましたところ、企業局の委託業務を開始した平成28年2月1日から、営業所の実態がないにもかかわらず、事実と異なる内容を記載していたとのことであったため、直ちにこの会社に対し厳重に注意し、間違った記載を削除させたところであります。

森:このヴェオリア・ジェネッツに業務委託をしているということですが、この経過、内容面含めてお聞きをしたいと思います。

桶川公営企業管理者:ヴェオリア・ジェネッツに対しましては、・・・ガス・水道料金や下水道使用料の収納及び滞納整理等の業務を委託しております。経緯でございますけれども、その選択方法といたしまして制約つき一般競争入札でございまして、参加業者4者により入札を行った結果、ヴェオリア・ジェネッツが落札をしたものであります。

森:3点目に、本市公営企業のあり方検討に関してお伺いいたしますが、・・・しかし、国連が水は人権と位置づけ、SDGsの6番目の目標に安全な水が掲げられていることを踏まえると、安易に民営化に活路を見出すことは厳に慎むべきだと私も思います。さて、企業局内で新ガス・電力事業のあり方研究が始まっていると伺っておりますけれども、ここでの活動や検討内容についてお尋ねをします。

桶川公営企業管理者:自由化が進むガス事業と発電事業につきまして、エネルギー市場の現況や他事業者の動向、また、本市の経営状況について分析を行うとともに、今後の事業環境の変化を予測しながら、最も適した経営形態のあり方を研究しているところでございます。

森:・・・SDGsの7番目の目標はエネルギーなんですね。エネルギーが何人にも安全・安心でクリーンなものが提供されるべきであると、これは目標になっているわけですね。この分析や研究がこれらの事業の民営化に安易につながっていくということになると非常にクエスチョンがつくということは申し上げて、おきたいなということを思います。

―以下2019年6月定例月議会(6月24日)での質問より抜粋―

森:それでは、ガス事業、発電事業のあり方検討についてです。まず、本市のガス事業及び発電事業の今後の経営形態のあり方について諮問しました。市長に、この諮問の趣旨についてお伺いします。

山野市長:本市のガス・発電事業は、・・・ただ、御案内のとおり、国のほうでは、平成28年には電力の全面自由化、平成29年にはガス小売の全面自由化にかじを切りました。電力とガスを合わせた総合的なエネルギー市場が創出され、全国的にも、料金メニューやサービスが多様化するとともに、新規参入や企業間連携が進むなど、事業環境はここで大きく変化してきているところであります。そういうものを踏まえた上で、こちらは、やはり有識者、また、実際に利用される方の御意見をお聞きするためにも、この委員会を設置し、本市のガス事業、発電事業の今後の経営形態のあり方について諮問を行ったところであります。

森:・・・企業局内で行われているあり方研究を通じ、企業局は、ガス事業及び発電事業に対して経営主体としてどのように評価を行ったのかお聞かせを願います。

平嶋公営企業管理者:まず、ガス事業についてでございますけれども、近年、効率化によりまして利益は計上はしておりますけれども、家庭用需要が大きく減少いたしますとともに、過去に行いました熱量変更事業、それによりまして生じた多額の累積欠損金や企業債残高を抱えておりまして、経営改善はまた途上にあります。加えまして、人口減少や自由化の進展によりまして、さらなる競争の激化が予測されますことから、より一層のサービス充実や経営効率化が求められるというふうに評価をいたしたところでございます。また、発電事業についてでございますけれども、現在のところ経営は安定しておりますけれども、北陸電力との売電に係る長期契約終了後は一般競争入札へ移行となりますので、価格の変動が予測されますことから、経営力の強化が求められるところでございます。

森:私も、企業局が取りまとめてこられた幾つかの数値を読ませていただきましたが、・・・現時点で見ると、それが功を奏していると、決して企業局の経営全体が危機的状況に直面しているというような評価ではないというのは、私もそんなふうに評価しているわけですね。・・・企業局の経営戦略2016との整合性について御質問いたします。・・・金沢市企業局経営戦略2016、7ページに企業局の経営方針が掲げられております。5つの事業には公共性及び公益性の確保が求められるため、今後も引き続き企業局が経営するものとし、市民生活や産業を支える水とエネルギーを総合的に担う総合ライフライン事業者として市民に貢献していく責務、永続的に目指すという使命をうたっております。民間譲渡も選択肢にあるとすれば、2025年度までの経営戦略である金沢市企業局経営戦略2016との整合性が問われることとなります。市長の真意を伺うとともに、年内に取りまとめられるあり方検討委員会答申は市民的議論にどう供されていくのか、今後の手順をお聞かせ願います。

山野市長:・・・経営戦略2016は、平成28年3月に策定、発表をいたしました。翌平成28年4月に、国のほうが電力の小売自由化を行いました。翌平成29年4月、ガス小売の自由化を行いました。これは、私は大きな社会情勢の変化であるというふうに思っています。・・・そのことを踏まえて取り組んでいかなければいけないというふうに思う中で、有識者による検討委員会を設置させたところであります。まずは、検討状況の報告をしっかりと受けながら、当然、逐次、議会の皆さんにも御報告し、市民の皆さんにもホームページ等々を通じて会議資料の公開もしていかなければいけないというふうに思っています。・・・

森:・・・エネルギーの総合事業というものの自負というものと、これまでの実績というものが全て覆されるということであってはならないんだろうと思うのですね。私、水とエネルギー総合ライフライン事業者というふうに企業局が述べていらっしゃる、そこでいうところの公共性、これについて市長御自身の言葉にするとどういうふうな言葉になりますか。

山野市長:一番は、市民の皆さんへの安全であります。そして、安心感も持ってもらえる、そんな体制にしていかなければいけないというふうに思っています。その安全、そして安心感の中には、私はコストというものもあるんだというふうに思っています。そういうことを安全・安心という形でエネルギー施策を展開していかなければいけないというふうに思っています。

森:あえて伺わせていただきますけれども、・・・具体的に言うとどういう経営形態を想定しているのか。・・・検討ですから、いろんな選択肢があると思う。その複数あるだろう選択肢、これ具体的にどういう形態を想定して諮問されていますか。

山野市長:まさにこれから議論・・・民間というものもあるのかもしれません。空港などで行われていますコンセッション方式というものもあるのかもしれません。現在の形態を維持をしながら工夫していくということもあるのかもしれません。いずれにいたしましても、市民の皆さんに安全に使っていただくということと、そして安心感の中には、私はコストというものもある・・・。安心して使っていただくということ、そして全国的どころかグローバルという表現もありました。そんなことも踏まえた形で考えていかなければいけないと思っています。

森:・・・安全・安心、あるいはコスト、これらの幾つかの大事な指標を当然踏まえたもの、イギリスなんか25年の経験がありまして、いずれも民間譲渡、あるいは官民連携、これがその目的に逆行したという評価が二十数年かかって出ておりまして、それが再公営化の流れというものにヨーロッパ全体に流れ込んでいったと、水のことについて昨年末に申し上げたところですけれども、そういうやはり世界の現実というものからもしっかり学んでいきながら、間違いのない議論と選択というものをしていかなければならないんだろうと、そのことを御意見として申し上げておきたいと思います。

―以下2019年12月定例月議会(12月10日)での質問より抜粋―

森:それでは、ガス事業・発電事業の株式会社譲渡の検討に関してお伺いします。

 ・・・ガス事業・発電事業あり方検討委員会が10月8日に、両事業をあわせて株式会社に譲渡することが適当であると答申しました。6月の設置から3カ月間、取りまとめの9月24日第4回まで、実質討議3回のスピード答申です。検討委員会の議事録を読むと、これからの時代のエネルギーの公共性や政策のあり方から、経営形態の選択を急ぐ意見まで、幅がありました。それらが収れんされたとは言いがたい中で、株式会社への譲渡という結論にかじを切ったという印象です。ほぼ100年の歴史を持ち、公営企業という市民的な所有と経営がなされてきた公共財産の行方を方向づけるには、余りに早計に過ぎませんでしょうか。果たして審議は尽くされたのか。・・・市長に、本答申をどう受けとめておられるか、まずお伺いします。

山野市長:大前提として御理解いただきたいのは、平成28年には電力の自由化が決められたということ、そして平成29年にはガスの小売自由化が決められたということであります。・・・地方公営企業として事業を行う今日的意義はどこにあるのかということ、そして自由化のメリットを利用者に還元することはできるのか、還元するために最もふさわしい経営形態はどんなものなのか、私はこの2つの論点で議論を進められてきているというふうに思っています。・・・また、全国的なトレンドもきちんと踏まえながら、今後の経営形態として、民間による柔軟な経営と市民の安心確保への公共関与が必要であることなど、各委員の立場から、建設的で真摯な議論がなされ、答申がなされたものと受けとめています。

森:私、議事録を相当詳細に読ませていただいたんですけれども、・・・ですから、私は、3回で実質的に方向づけがなされたという中での議論は相当幅があったし、なぜこの段階で答申しなければいけなかったのかなというところに依然として疑問を持っています。

 次の質問へいきますけれども、局内のあり方検討です。私は、企業会計決算審査で、・・・金沢市ガス事業及び発電事業経営形態等検討支援事業委託の報告書を見ました。これを1,579万円余の随意契約で受託したのは、官民連携、民営化手法であるPPP、PFIを専門的に手がけるコンサルタント会社でありました。・・・一読して、売却想定の値踏みの報告書のようにさえ私には映ったわけです。この報告書では、金沢市の事業環境をどう分析しておりますでしょうか。また、公的所有と経営を政策的に行うことがもたらす公共的な便益について多面的に評価されているでしょうか。御所見を伺います。

平嶋公営企業管理者:御指摘の報告書でございますけれども、まず本市の事業環境につきまして、ガス事業では、人口減少等による長期的な市場規模縮小や、公営では法令等によりサービスの範囲に制約があることで他地域とのサービスに違いが生じていることなどが、また、発電事業では、卸電力市場等の価格が今後の経営に影響を及ぼすことなどが分析結果として示されているところでございます。企業局では、公共的な便益につきまして、市民の安全・安心の確保や市民サービスのあり方など、さまざまな観点から官民の比較検討を行っているところでございまして、今後、人口減少や自由化のさらなる進展により、より一層のサービス充実や経営効率化が求められると評価しているところでございます。

森:この報告書の中に経営環境の分析というものがなされているわけですけれども、自由化という環境のもとでの将来予測の中に、果たして金沢市企業局が所管しているエリアでの新規参入が差し迫っているのか、あるいはそれに向けての具体的な動きがあるのか、ここについて言うと、必ずしもそうではないと事業環境を評価していますね。そのことについて、公営企業管理者にもう一度確認したいと思います。

平嶋公営企業管理者:おっしゃるように、現時点で、さまざまな市場の自由化によりまして複数の業者が参入しているという状況は見られません。ただ、検討委員会の中でも、今後の経営形態というものをどう将来像を描くかという中では、早晩、自由化の影響というものが金沢のほうへも波及してくることは必須であろうといったような視点で、さまざまな議論がなされたというふうに理解しております。

森:・・・自由化後のパイプラインの延伸として、報告書の中では、富山が糸魚川とつながったと、糸魚川から関東方面につながっておるんですね。これが金沢にまで来た場合を想定しているんですね。ところが、自由化後にパイプラインの延伸が想定したようには進まないと評論家が書いていますね。それは莫大な経費と、そして投資効果がどれだけ見込めるか、費用対効果、こういうものによって自由化というものは大きく左右される。北陸という、特に山を挟んで石川、この位置的環境について、私は、余りにも雑駁に想定がなされてシミュレーションされているんではないか、こういう思いを禁じ得ません。後ほど申し上げることとあわせて、ぜひお考えいただきたいと思います。

 2点目に、5つの事業には公共性及び公益性の確保が求められるため、今後も引き続き企業局が経営するものとし、市民生活や産業を支える水とエネルギーの総合ライフライン事業者として市民に貢献していく、この2025年までの経営戦略に基づく局内検討としては、いささかのりを越えたものじゃないかと思いますが、公営企業管理者、いかがでしょうか。

平嶋公営企業管理者:経営戦略は、電力・ガス小売全面自由化が実施される以前の平成27年度に策定されたものでございます。その後、国の制度改革が進展し、電力とガスをあわせた総合的なエネルギー市場が創出され、全国的に料金メニューやサービスが多様化するとともに、新規参入や企業間連携並びに競争が進むなど、事業環境が大きく変化してきたことから、今後の事業のあり方を局内において検討してきたところでございます。

森:少なくとも2025年まで行動計画が策定されて、この主体は企業局がと記載されている、このことの意味を軽視してはいけないんではないでしょうかね。これは今後の検討のプロセスの中でも、そのことをしっかりと認識しながらやっていただく必要があるんではないかと思います。議会としても、これを報告書として報告を受けているんですね。私どもはそう受けとめております。

 3番目、私は、昨年来、1980年代にヨーロッパを中心に先行した社会インフラ事業の官民連携、民間譲渡が今日、再公営化に向かっていることを指摘してきました。それは一体なぜなのか、本市としてどのような見解を持っておられるのかお尋ねします。

平嶋公営企業管理者:これは水道事業の例でございますけれども、国が調査いたしました海外の水道事業におけますコンセッション方式の状況によりますと、再公営化された事例は確かにございますが、近年もほとんどが契約更新されておりまして、一律に再公営化が進んでいる状況にはないとされております。一方、我が国のガス事業並びに発電事業につきましては、その大部分が民間で経営されておりまして、また、過去に公営から民間に事業譲渡された事例の中でも、現在までのところ、再公営化された事例はございません。

森:再公営化というものが事実起こっているということは否定できませんし、その際に契約を解除することによる違約金に莫大な税金がつぎ込まれていくケースもあり得るんだということを私は示していると思うし、そのことは念頭に置いておかなければならないんではないかなと思います。今ほどのお話の中で、国内の先行事例について言及がありました。先ほど指摘した報告書の中で、幾つかの自治体の譲渡についての条件などが書かれていました。例えば最低3年間は現行料金を上回らないようにすることとかです。これは、多様な、あるいは柔軟なサービス提供ということにかかわる部分だと思いますけれども、それがその後どうなっているのかという追跡調査の結果というものがこの報告書の中にないんですね。公営企業の局内の検討の中で、この追跡調査という手法はどの程度とっていらっしゃったんでしょうか。

平嶋公営企業管理者:・・・現段階で、その後の経営状況等について今のところ追跡していることはございませんが、今、検討され、本市といたしましても事業譲渡についての答申を受けて検討を進めておりますし、パブリックコメントもやっておりますので、その結果を踏まえながら、今後の基本方針策定に向けて努めてまいりたいと思います。

森:現在、既にパブリックコメントが始まっておりますし、利用家庭に直接ダイレクトメールでアンケートが送付されております。何を手がかりにして利用者が判断するかという大変重要な視点なので、今お伺いした次第です。今後、検討の時期がありますから、そうした先行のケースが、利便性の向上とかサービスの向上とか、そういう観点で見たときでも、それが円滑に進んでいるのかどうかということは市民にお知らせする責務があるんだろうと思います。

 その基本方針策定とパブリックコメントについてお伺いしたいと思います。パブリックコメントが届いた市民からは、戸惑いや意味がわからないとの声が寄せられております。市長の言われるスピード感なるものに、ほとんどの市民はついていってはおりません。検討骨子案では、できるだけ早期に譲渡することを明記しておりますが、その時期、タイムテーブルが既に想定されているんではないかとさえ思えるほどです。市長の真意を改めて伺います。

山野市長:議論は、私や公営企業管理者が申し上げたとおりであります。留意事項といたしまして、早目に自由化のメリットを市民に供与するため、可能な限り早期に事業譲渡をという留意事項が付されたところであります。また、安心感も持ってもらうために、公共の関与というものも中につけ加えられております。私もそのことは大切だというふうに思っておりまして、そういうことも踏まえた上で、自由化のメリットを市民の皆さんに還元できる、それも少しでも早い段階で還元できるようにすることが大切だというふうに思っています。・・・そういう視点から本年度内に基本方針を策定していきたいと考えています。

森:公共的な関与の必要性については、複数の委員さんも大変何度にもわたって発言をなさっていると思います。その中で、一定の出資をするべきだという、こういう留意事項が付されたんだろうと私は理解しておりますが、51%出資するとなったら買い手が出てくるんだろうかとか、3割ならばどの程度の関与ができるんだろうかとか、こういうことが市民にはわからないんですね。そういう意味で、私は、もっと情報提供の必要があるということを改めて申し上げたいと思います。

 その上で、以下の理由から、私は、こうした市民置き去りの面がある手法を中止して、広範な市民が直接議論を交わせる市民の広場の設置、そこでの市民への説明、コンセンサスのありかを慎重に見定める取り組みなどを求めたいと思います。その理由というのは、1.民間譲渡ありきと委員すらが感じた検討委員会で議論が尽くされていない面がある。2.その検討の下敷きになった局内検討報告書は、本市のガス事業及び発電事業が他市と比較しても健全経営を維持していることを過小評価して、不確実な条件を設定したシナリオで将来不安を強調して、民間譲渡に誘導している。3.返送用封筒すら同封されておりませんで、これ一体どうしたらいいんやという率直な声も私に届いてきております。特に、企業局は人減らしをしながら累積債務を償還してきた、そして累積欠損も大幅に減らしてきた、キャッシュフローで見ると相当の現金が内部留保されている、これらを決算審査で確認して、決算審査で決算報告が承認されておるんですね。良好な経営だということを私たちは承認しているわけです。このことと将来のリスクというものをどれぐらいのバランスで判断していくのか、このことが市民に示されないと、市民は冷静な客観的な判断ができないんではないか。そういう情報提供をして、十分な対話をしながらコンセンサスを探っていくこと、先にスケジュールありきではあってはならないこと、そういうことを私は求めておるわけです。改めて、市長の御所見を伺います。

山野市長:大前提として、ルールが変わったということがあります。繰り返しになりますから申し上げませんけれども、そのことがありまして、議論を重ねてまいりました。森議員、検討委員会の議事録を詳細にお読みになったというお話がありました。議事録も詳細にお伝えするように、オープンになっています。検討委員会も原則公開で行われています。議事録のみならず、資料もホームページ等々で公開しているところであります。議会でも、会議の進捗状況について御報告もさせていただきました。今ここでも、こうやって議論させていただいているところであります。パブリックコメントも行っています。利用者以外の方も御意見もおっしゃっていただける環境をとっているところでもあります。新聞広報やホームページでも周知しているところでもあります。これはおっしゃっていただきましたけれども、都市ガス、簡易ガスの全てのお客様に対してダイレクトメールも送付し、幅広く市民の意見募集に努めているところであります。

森:そうした情報提供、検討、こういうものの中に必要な情報をぜひ盛り込んで、市民の判断を仰ぐという対応をぜひとっていただきたい・・・これからそういうことが非常に大事になるということを申し上げて、3点目に移ります。

―以下2020年3月定例月議会(3月12日)での質問より抜粋―                 

1.ガス事業・発電事業の株式会社譲渡の基本方針に関して

森:みらい金沢の一員としまして以下数点ご質問いたします。まず最初に、ガス事業・発電事業の株式会社譲渡の基本方針に関して質問いたします。

(1)市民の意見の尊重について 

 その一点目、市民の意見の尊重について。市長の仰るスピード感とは裏腹に、本当に譲渡するのかの声が相次いでいます。この間、複数の市民団体が説明を求める集会を開いていますが、なぜ、責任ある市長、管理者が出席して直接説明しないのか、まずその理由を伺います。

山野市長:あのう、こうやってて森議員と議論をさせていただいています。私も選挙によって選ばれた市民の代表です。森議員も選挙によって選ばれた市民の代表です。私は森議員と議論していると同時に森議員の後ろにいる市民の皆さんにも私の思いをお伝えしているというふうに思っています。森議員のご発言は森議員個人のお考えということもあるかと思いますけれども、森議員の背後にいる市民の皆様の声として、私たちしっかりと受け止めているところであります。で、所管の職員が説明会で説明をさせていただいたりしたかと思いますけれども、その職員も個人の資格で参加をしているわけではありません。金沢市企業局、金沢市を代表した形で説明会に参加して説明をさせていただいているところであります。ご理解をいただければと思います。

森:もちろん私も公的な立場でありますし、それから職員の方も分掌を担って対応されていることはもちろん承知しております。ただ、これだけ大きな問題ですから、市民からすると、決定権、決定権は議会と言わなければならないかもしれませんが、政策判断の上での決定権、責任のある方と対話をしたい、そういう気持ちがあるということで、なぜ出てきてくれないのだろうかという声が出るわけです。これは受け止めていただきたいと思います。

 次にパブリックコメント結果への疑問です。過去最多の701人から提出された1463件の意見を公表するに当たり、検討案推進259人、公営維持179人、不明、意見なし等263人と分類されました。賛否を示すのは異例です。疑問に思った市民団体が情報開示で得たすべての意見をチェックすると、不明、意見なし等に分類された中の160人以上、具体的に言いますと166人と数えられたと思いますが、明確な民営化反対、疑問、パブコメのやり方に問題ありなどの意見があったわけです。推進の中にも民営化反対や疑問の声が少なからず含まれておりまして、「恣意的な公表結果で誘導ではないか」と疑う声まで上がっていますが、公営企業管理者はこれをどう説明されますか。

平嶋公営企業管理者:え、ガス・発電事業に関しましては、市民生活や産業活動を支えてきた大切なライフラインでありますことから、検討委員会からの答申に基づく内容につきまして広く意見bを効く必要があると考え、パブリックコメントを実施したものでございいます。で、多くのご意見をいただきましたことから、参考までに「検討案推進」と「両企業とも公営堅持」とする意見者の状況について併せてお示ししたところでございます。

森:私も読ませていただいているわけですけれども、たいへん熱心、真摯、真剣な意見が綴られています。一つひとつ読みますと、市民がこの問題をいかに重く受け止めているかということがよく伝わってきます。賛否という形で参考資料といえどもこれが公表されると、あぁ賛成の人が多いんだなと、こういう印象を持ちます。それから私の出した意見は自分の思いとは違うところに分類されているなぁと、こういう感想を持たれた市民の方の

ご意見も私は複数聞いておるわけです。これが結論ありき、誘導ではないかとの受け止めにつながってしまっております。あらかじめ、先ほど、昨日の答弁も含めまして、決してその賛否を問うものではないという定義づけのご答弁がありました。その通りだろうと思います。しかし、結果的にはそうではないパブコメになってしまっているんじゃないのか、このように言わざるを得ません。こういう指摘に対して公営企業管理者はどう説明されますか再度ご答弁願います。

平嶋公営企業管理者:え、まぁ繰り返しになりますけれど、パブリックコメントそのものは、やはり多くのご意見をお聞きするために実施をしているものでございまして、ま、特に今回は、非常に多くの方々からご意見をいただきました。まぁあそ、これは実際にガスをご利用いただいているお客様に意見募集をしておりますというご連絡といいますか、え、ダイレクトメールでお知らせをしたということも原因かなと思いますけれども、そうした貴重なご意見をやはり公表するにあたりまして、一つの参考資料として検討案そのものについてどういうようなお考えかということをひとつの目安としてお示しすることも必要かなというふうに思いまして、先ほど答弁させていただきましたけども、「検討案の推進」、そして「両事業とも公営堅持」という意見者の方々の状況をあくまでも参考までにお示しをしたものでございます。

森:ま、これからスケジュールが進んでいくにあたりまして、やはり市民の判断というものを私たちは仰いでいかなければならない、そういう公的な立場にありますから、ミスリードにならないように慎重に真摯に対応していただきたいと改めて申し上げておきたいと思います。因みに、全部紹介する時間のゆとりはありませんけれども、幾つかご紹介しますと、明らかに反対の意思を持って書いていらっしゃる、これは「意見なし等」に分類された方、「利用者が減少し続けているガス事業こそ市が責任を持って経営すべきです。」これ41番。147番「金沢市のガスサービス事業は現状で十分。営利を目的とする株式会社とすべきではない。」143、「ガス事業の市からの事業譲渡は反対です。」614番「市民の貴重な財産である発電事業をいとも簡単に民間企業に施設とともに譲渡してしまうとすれば大いに問題。」こういう意見が出ております。また賛成に分類された中にもやはり市民のガヴァナンス、これに対する留意がかなり書かれています。裏を返せば、公営企業としてやってきたこの二つの事業について非常に信頼が高い。これは利便性とかサービスの向上とかという概念とは次元を異にする、市民や利用者が寄せている公共的なものに対する信頼感、これ非常に大きいと思います。次の質問に移りますけれども、そのことを十分受け止めていただく必要がある。そのことを申し上げておきたいと思います。

 ところで、このガス・発電事業公営化以降約100年。ということは民営の時代があったということです。なぜ公営化したかということも考えなければなりません。振り返っておかねばなりません。この歴史の重み、市民生活を支えて営々と積み上げられてきた先人の努力に敬意を払うべきです。骨子案策定に当たり両事業の礎となった方や発展を担われた方々から丁寧にご意見を聴いているのか、そのことを伺います。併せて水利権の調整の見通しについてもお聞かせください。

平嶋公営企業管理者:今ほどご指摘ありましたように、本市のガス事業、発電事業はいずれも大正10年に、民間から事業を譲り受けまして、今日まで議会また市民の方々の理解と協力の下運営されていることに深く感謝を申し上げたいと思います。また戦後の復興期や高度経済成長期をエネルギーの安定供給で支えるなど一定の役割を果たしてきたと考えておりまして、事業に尽力されてきた諸先輩方に敬意を表するところでございます。で、これまでに、ガス、発電事業の運営に携わった先輩方に対しては、あり方の検討内容についてご説明をし、今後の方向性についてご助言もいただいております。

 でまた、水利権の関係ですけども、え、水利権の調整につきましては、用水土地改良区などの水を利用していらっしゃる方ですが、利水関係者に対しまして検討状況などを説明をしてきたところでございまして、引き続き水利権の円滑な移管に向けまして関係機関と協議を進めて参ります。以上でございます。

森:この間担ってこられた方々のご意見を聞いておられるというご答弁でしたけれども、「誰に聞きましたか。」とかそんなことはここでは伺うことは致しませんけれども、本当に理解を得ているのかどうなのか、私は一抹の不安を感じながらご答弁を聞いております。

それから水利権について、まぁ協議、情報交換をやっていらっしゃるということであります。これ非常に複雑な利害関係が絡む、公営でやってきた事を前提にした水利権の調整というものが長い間行われてきているものというふうに理解しますので。ま今の時点ではっきり調整はできますという答弁ではありませんでしたから、これは今後のかなり大きな課題になるということだけ確認をさせていただきたいと思います。

(2)基本方針骨子案と関連当初予算案について

 この項目の二点目に移ります。基本方針骨子案と関連当初予算案についてお伺いします。 譲渡準備関連事業費が、骨子案の段階で譲渡前提の予算として計上されていることは釈然としません。まず、両事業の譲渡に関する基本方針骨子案がどのような手続きで基本方針となるのかお答えください。次に、事業譲渡アドバイザリー業務委託費について、その業務内容、1億4000万円もの積算根拠と選定手続きを伺います。

平嶋公営企業管理者:え~先ず基本方針の手続きについてお尋ねでございます。え~2月の建設企業常任委員会におきまして報告した骨子案をもとに、、現在基本方針策定作業を進めておりまして、この定例月議会の会期中に基本方針をお示ししたいと考えております。それから事業譲渡のアドバイザリーに関してのお尋ねですが、え、そこへの業務委託でございます。先ず、業務委託の内容に関しては、両事業が保有する固定資産等の現況詳細調査。それから最低譲渡価格設定のための事業価値評価。また公募から譲渡契約に至るまでの法的な手続きなど事業譲渡に関する専門的な事項についての支援を受けるものでございます。で、委託費については、複数の事業者から見積もりを聴取するとともに、他の公営企業が民間譲渡した際の委託業務内容や委託金額を参考に積算をし、新年度予算に所要の額を計上しているものでございます。で、選定の手続きは、公募型プロポーザル方式として、え、企画提案書に基づき外部委員を含めた選定委員により審査をし、委託事業者を決定することとしております。以上でございます。

森:え、私、局内検討の中である外資系のコンサルタント会社に1,500万円で随意契約をして調査を行ったということについて、この場でもご質問しております。また今度は

そうしたコンサルかなと、こんな話が関心がある方々の中から話が出てきております。これを予算執行していくということになれば、透明性が求められる。先行して、この公営分野の民営化の中で、業者との間での問題、こういうものが市民から厳しく指摘をされて動きが止まっているという事例、後ちょっと触れるかもしれませんが、こういうことも起こっていきておりますんで、透明性をいかにして確保するかこのことに十分に配慮していく必要があると思います。

(3)公営企業の公益的な役割を再評価する観点から

 三点目お伺いします。公営企業の公益的な役割を再評価する観点から幾つかご質問いたします。

 まず、人口減少や省エネによるガス需要の減少が経営環境を厳しくするとの予測が譲渡理由3ですが、株式会社への譲渡がどうその解決につながるのかお答えください。

平嶋公営企業管理者:え、株式会社という事業形態は、事業環境の変化に合わせ、柔軟かつ迅速な対応が可能であることに加えまして、ガスと発電の両事業を一体的に経営することによりまして、総合エネルギー事業として競争力を有し、多様なサービスの提供が可能となるものです。で、こうしたことから両事業の株式会社への譲渡は、市民サービスの向上に寄与するとともに、事業の持続性の確保につながるものと考えております。

森:え、競争力が向上する、そのことがサービスに寄与する、ま、こういうお考えを示されました。逆に競争力を向上させるために、サービスが脆弱化するというケースもこの間の経過の中で指摘をされていることは以前から申し上げてきている通りです。そして、この金沢市の公営企業ガスについて一体どのような競争相手がどんなふうに入ってくるのか、このことが定かではないんですね。新たな民間の独占市場になるんじゃないかとの識者の懸念なんかも私は聞いております。本当に今答弁なさったことが現実になる蓋然性、それはどの辺に見ていらっしゃるんでしょうか。もう一回伺いたいと思います。

平嶋公営企業管理者:え、現在小売りの自由化に伴いまして、全国的に異業種の企業間連携、或いは各社が業種の垣根を越えまして料金水準やサービス等の部分で、やはり消費者に様々な提案をしているという状況でございます。で、本市におきましても、え~将来的にこうした市場の中で様々な競争というものが起こってくることはこれ必然であろうと考えておりまして、そういったことにつきましては、あり方検討委員会の中でも多くのご意見をいただいておりまして、そうしたことも踏まえ民営化、株式会社への譲渡ということは、私としては必要なことだと考えております。

森:それは一般論としてはそういう理屈もあろうかと思います。私は蓋然性と聞いているので、その条件というものは、現実的にこうこうこうであるということが明確でないと蓋然性をも持ったとは言えないんじゃないかと申し添えておきたいと思います。そして、金沢で公営ガスが存在する限り、これを上回る民間事業者が現れるということは考えにくい

、こういう経済環境学者のご意見なんかもあるんですね。自ら門戸を開くことによって事業者が替わるということはありますよ。自ら開けばね。開く必要があるかどうかを大いに議論しているわけです。

 次の質問にいきます。公営企業の公益的な役割は果たして希薄化したのか私なりの観点で伺います。まず、多くの市民が高く評価する上下水道と都市ガスの供給や故障対応、安全確保などのサービスを実質的にワンストップで提供してきた体制が譲渡後は維持できるのですか。もう一つ、新株式会社となっても、経営状況や利益配分など財務情報が「ブラックボックス」にならず公的なチェックができるのか、見解を併せて伺います。

平嶋公営企業管理者:え~事業譲渡後のガス事業は、市民生活を支える重要なライフラインでありますことから、緊急保安体制、またガス管の改良工事につきまして上下水事業と密接な連携を図っていくことは必要でございます。え、このため、事業譲渡先と十分に協議を行いますとともに、円滑な事業承継に必要な期間、本市職員を派遣することで、譲渡後も市民の安全安心を確保していきたいと考えております。新たな株式会社が公告する決算を確認いたしますとともに、財務諸表の開示等を求め経営状況を把握していきたいと考えております。

森:民間の経営、これは株主への配当、役員報酬、これ優先しないといけないということですね。そのうえで、様々な公的役割をちゃんとしなければいけない。どこかを削らないといけない。競争が激しくなればなるほどそうなる。どこを削るか?職員の数を減らす、あるいは非正規化する、こういうことはこれまで起こってきていることですね。そうすると、冒頭に申しましたように、市民が公的な信頼感を寄せているこれらのことが本当にこのインフラ全体にわたって緊密にできるのだろうかこの疑問は解消できません。そのことを申し上げておきます。それから、情報開示、これたいへんな問題ですね。私たちが決算審査ができるようなそんな環境にはならんと思います。もしなるんだったら、また別の場でご説明いただきたいと思います。

 さらに、これからの公益的な施策展開の可能性についてです。1月末に視察した世田谷区では、いちはやく「せたがや版RE100宣言」を行いました。、企業の国際的なとりくみであるRE100に賛同し、気候変動対策への責任として、区内で使用する電力を100%再生可能エネルギー化する目標を掲げたのです。そのため、神奈川県三浦市内の区有地に太陽光発電所を設置するとともに、地域分散型の再エネ調達を手がける新電力と提携し、福島県南相馬市の太陽光や県営長野水力の電力など、これ県営です。公営が自ら電気を売っとるわけですね。区庁舎や保育園ほか公共施設などに導入する取り組みを進めています。電力生産地の住民と区民、子どもたちとの交流事業が活発化するなど地域間連携も豊かに展開しております。ドイツにおける「再公営化」で注目を集めるのは「シュタットベルケ」です。その数347社、上下水道、発電をはじめ多様な公共サービスを組み合わせて暮らしを支え、その利益で自治体の財政にも貢献しております。加えて、エネルギーの安全保障の観点。北海道胆振東部地震によるブラックアウト、台風15号による千葉県の長期大規模停電などを経験し、危機管理上エネルギーの複線化は重要課題です。松江市の公営ガス民営化の検討は、災害時でも水素から電力を生産できる都市ガス機能を再認識し、議会が慎重市姿勢に転じたと聞いております。あり方検討の中でこうしたエネルギー縮小時代の新たな役割や手法の検討は十分になされたのか伺います。

平嶋公営企業管理者:え~ガス発電量事業のあり方の検討におきましては、市民にとって最も有益な経営形態について様々な視点から検討が重ねられたところでございます。で、議論の過程におきまして、一つに、エネルギーのあり方が今後変化していく中で、積極的かつ柔軟に市民のエネルギー環境を改善していくことが理念として重要であること。で二つに、地域エネルギー政策を自治体として積極的に推進していくべきなどの意見が出されまして、答申書の留意事項の中に今後も脱炭素化や省エネルギーの推進などを含む地域エネルギーのあり方に市が責任をもって政策を進めていくことが付されているところでございます。以上でございます。

森:地域エネルギー政策。これに市が役割をもってどこまで関与できるのか?このことが株式会社に譲渡をするうえでいろいろと議論が検討の中でもされておりましたね。今回の骨子案というものが、本当にそれに資することができるのか、これは専門家の間でも大いに議論が分かれておる。このことは十分に踏まえておく必要があると思います。時間がありませんので、もうこれ以上展開できませんが、はやり環境経済学者の中には、金沢市の公営企業はこれ既にある意味でシュタットベルケだ、非常に価値があるということをおっしゃっている研究者の方がいらっしゃるんですね。それはどういう意味かということは、私たち傾聴しておく必要がある。最終的に判断していくまでに。やらなきゃいけないことはいっぱいあるんじゃないでしょうか。

 市長に伺います。金沢市の公営エネルギーがSDGsの核となって、公営水力をもつ稀有な環境未来都市として存在感が高まる時代がやて来ております。金沢の付加価値を高める資産を失って「もったいなかった」と後悔しないためにここで立ち止まり、腰を落ち着けて調査研究を深めること、行くべき道を説明・意見交換、公聴会など市民参加のもとで共に考えることを改めて求めます。市長の見解を伺います。

山野市長:あのお、これまでも先人の皆さんがたは、様々な工夫をしながら。先ほど来おっしゃっていただいてます市民の皆さんから高い評価を得ているんだと思っています。ただ、2017年都市ガスの小売自由化というものが明確になりました。すでに、金沢市は電気卸しで北陸電力さんに卸しておりますけれども、電力さんは積極的に首都圏にも進出しています。我々公営が電気を持つのは、やはり、先ほど地産地消のお話をされました。私はすごい大切な視点だと思っています。ただ、金沢市の水力発電でできたエネルギーが必ずしも地産地消というふうに私は明確に言えないそんな時代になってきているところであります。ルールが変わったということもご理解をいただければというふうに思っています。そしていくつか事例を出されましたけれども、やはり忘れてはならないのは、ん~企業局は固定資産税を払っていません。事業所税も払っておりません。果たしてその中で、この小売自由化の中で公正な競争、公正な共生?というものが成り立つのかということも私は考えて行かなければいけない視点であるというふうに思っています。昨日、私は、あ~不作為の損失を与えることになりかねないというふうに申し上げました。それはすでに都市ガス利用者に対して明確に損失を与えていることに私はなっているというふうに思っていまし、今ほど申し上げました固定資産税云々のことにおきましても、私は市民に対して不作為の損失を与えかねないんではないか、そんな視点からも。考えていかなければいけないというふうに思っています。あの、信頼性安全性のお話がありました。これはガスの場合もガス事業法でしっかりと担保されているところでありますし、一定の出資をすることによりまして行政としてもこれからしっかりと関わっていかねばならないというふうに思っています。

森:え、私も不作為の損失を与えるとのそしり、この言葉をお返ししなければいけないと思っていたんですが、再び市長の口から出て参りました。水力を見てみますと、地方公営企業法適用の 電力事業体、この平均が10円ちょっと。2年か3年ほど前ですね。金沢市は7.5円前後で卸売電してきましたね。他の同様の事業体の単価を調べてみますと8円とか9円とか10円とかあるいはそれを超える、まFITの適用を受けるかどうかによっても変わりますけれども、そういう不作為のそしりというのであれば、現在の卸売電の中でも市民に利益還元をするための契約の仕方というものがあったんじゃないかと私はそんなふうに思うんですよ。これだけこれからの時代を考えたときに公的な価値の高い水力発電とそしてエネルギーの安全保障を担うこの都市ガス、これを簡単に一体的に本当に売却してしまっていいのか?これが不作為のそしりとなっていく可能性、私はそのことをたいへん懸念をしておりますので、これ以上このことについてお伺いすることはできませんが、ぜひ残された時間、きとっと慎重に研究を深めながら最終的な判断をしていただくことを求めて次の質問に移ります。