8月22日から24日の三日間、経済環境常任委員会は行政視察を行った。22日、広島県福山市の都市ブランド戦略を、23日下関市の鳥獣被害とジビエ活用を、さらに24日は、広島市のごみ減量化を視察した。
議会棟を持つ福山市議会
広島県第二の都市福山市。平成の大合併を経て人口47万超の中核市になった福山市。昨日告示の市長選真っ只中だ。
福山市議会は、既に20年前に100億円を投じた議会棟を持つ。私たちは、この議会棟で、福山市の都市ブランド戦略の取り組みを視察した。
戦略スタートの問題意識は、福山市ってどこにあるんかな…?と答えが返ってくる、その知名度不足にあったという。一部上場の知名度高い企業が幾つもあり、築城400を3年後に迎える福山城、い草や三大焼き物など伝統的ものづくり産業も生み出してきたのに。
それは、点はあっても個別に止まり、連携した都市ブランドとしての発信力に欠けてきたと総括された。そこから、2014年に始まる福山市「都市ブランド戦略」が編み出されてきた。基本コンセプトはクリエイティブ。ロコにコウモリと市の花バラを組み合わせ、「何もないとは言わせない!」と挑発的なキャッチフレーズを織り込んだ。
戦略には、活発な市民活動をも都市ブランドに位置付けるユニークな発想で、ひとづくり、ものづくり、まちづくり、ブランド認定、発信の5本の柱を立てている。
その中のブランド認定では、市内18団体から委員を依嘱して構成する都市ブランド戦略推進協議会が実働。全国的に著名なファッションジャーナリストやコミュニティデザイナーなど審査委員4人による審査会を設置し、ものづくりの企業や個人からの製品提案に福山ブランドの認定を昨年度から始めた。加え、市民活動をも登録ブランドとし、市民生活・コミュニティにも発信力をつけてもらうよう支援施策を行っている。
私たちは、この後、鞆の浦の観光情報センターを拠点に福山ブランドに登録されて活発な観光ボランティア活動を展開している鞆の浦史跡めぐりガイドを視察した。リピーターが最も多いと評判の名物ガイドMさんに案内され、鞆の浦の景勝地、伝建指定に向けて官民が準備を進める鞆町の隅々を歩いた。
観光情報センターの事務局長曰く、発展途上観光地だった鞆の浦の転機は宮崎駿の「崖の上のポニョ」の舞台になったこと。フランスをはじめ日本のアニメコンテンツに惹かれる外国人観光客が激増している。また、いにしえから海上交易の要衝として発展した鞆の浦に伝承・・神后神話から村上水軍、朝鮮侵略、朝鮮通信使が愛でた縁ある対潮楼、坂本龍馬…解説はとどまるところを知らないという見事さだった。鞆の浦への深い愛情がボランティアを突き動かしている。
鳥獣被害対策としてのジビエ事業
下関市の鳥獣被害とジビエの取り組みを視察した。全国的に中山間地農業は、イノシシなど鳥獣被害に苦しんでいる。中山間地が広く市域を占める金沢も例外ではない。ハンターの高齢化、後継者問題。電気柵は今や集落全体を覆わなければ効果がない。その経費負担も重くのしかかる。設置補助対策を求める声は切実だ。
下関市は、隣の長門市と連携し、思い切った地域資源化に取り組んでいる。それが、イノシシとニホンジカの食材化、ジビエの開発普及である。猟師たちの私的な食肉以外は埋設廃棄の対象だったこれらの肉をジビエとして活用し、付加価値をつけたら鳥獣被害の低減と地域振興にも役立つ。
こうして、下関市は、2009年のイノシシ、ニホンジカのE型肝炎ウィルス感染検査を端緒に、猟友会、農協、食肉加工業者、保健所、建築住宅課、有害鳥獣対策室などが意見交換し、先進地視察を行った。これらを踏まえ、加工・販売・流通システムを構築する基本計画を策定した。と畜法には、イノシシ、シカの規定がないため、保健所の協力を得て、衛生基準を定めた。
2013年に誕生した「みのりの丘ジビエセンター」の敷地は、住民の意向を尊重し、市の農業公園の敷地内に建設、共用開始された。事業に乗り出すことを決定させたのは、市内飲食店、食肉販売店へのアンケート結果の4分の1が関心ありと回答したことだ。建設費5600万円余の半額は国庫補助金だ。給排水衛生設備工事費に半分近くが投じられた。施設は、と畜設備の維持管理と運営のみ指定管理とし、駆除された個体の買取、解体請け負い、精肉加工、流通販売は自主企画で自主採算営業にして、インセンティブを与えている。指定管理者は、市内の食肉販売業者に指定されている。
ジビエセンターは、捕獲処理機能と加工販売機能と地域ぐるみの鳥獣被害軽減対策機能を併せ持つ。建設にあたり、下関市ジビエ有効活用施設の設置等に関する条例を制定している。
だが、課題も少なくない。元来有害鳥獣対策なので、食材の安定供給は難しい。捕獲したイノシシなどは、猟師が食する以外が持ち込まれるので、搬入個体数は、それほどにはならない。他方、需要拡大も簡単ではない。家庭用食肉としては、他の食肉との価格競争で不利な面がある。そのため、販路拡大にイヴェントで試供品提供、ジビエ料理教室の開講、普及啓発事業、そしてジビエ料理レシピ集をレストランシェフの協力を得て作成頒布している。
指定管理者は、二年間の厳しい経営を乗り越え、今後の展望が見えてきたと言っているという。それは、意外にもペットフードとしての引き合いが急速に増えていること。また、都市圏の外食産業からの需要が増えてきたことにあるようだ。
「鳥獣被害が無くなれば、ジビエセンターもいらなくなる」(担当職員)という本質の中でも、施設の意義、経営を評価しなければならない。手探りからの新たな可能性を見出せるか、挑戦は続けられる。
翻って金沢の鳥獣被害対策。これまでの枠組みで施策を行っていくのか、新たな施策を打つべきなのか、委員の間でも議論は止まない。
ごみ減量化は事業系ごみがキーワード
視察三日目は、原水禁世界大会で度々訪れてきた広島市。今日は、広島市のごみの減量化について、環境局一課担当課長から説明を受けた。
被爆から街を起こした広島市は、市民生活の向上と経済成長により、廃棄物非常事態を出すまでにごみ問題に直面した。1975年に非常事態宣言を出し、翌年には全国に先駆けて、資源ごみ収集の概念を取り入れた5種類の分別収集を導入し、削減効果から、1983年には宣言を解除した。現在は、8種の分別収集が住民参加によって定着し、一人当たりのごみ排出量は、政令指定都市の中で10年連続で最少である。
有料収集されてきた事業系ごみの減量化、リサイクル率向上には、2005年10月から市内店舗で購入する市指定ポリごみ袋制度を導入して、排出事業者に減量化とリサイクル向上の意識化を促している。導入前に比較して25パーセントの削減効果が現れたが、近年増加傾向に転じており、さらなる重点的な取り組みを検討しているという。
それは、紙類の分別・リサイクルの徹底と、食品ロスの有効活用である。限界性があるNPO活動を支援し、市社会福祉協議会の関与を強めで、食品ロスが生ゴミの排出に繋がらないよう、福祉施設、困窮者支援、ホームレス支援団体と連携を深めると方針が示された。