丸亀商人の先見性と商人魂
高松市滞在二日目は、午前中、水戸市議会の一行と共に、全国から注目され進化を続ける丸亀商店街再開発を視察した。
確か8年ほど前に、常任委員会視察で訪れたから、更に進化を遂げている商店街だ。今回は、丸亀商店街振興組合理事長の古川康造さんの説明に強いインパクトを受けた。
古川さんほか地権者数人の有志は、バブル絶頂期活況を呈する商店街が、市街地の郊外拡張と瀬戸大橋開通により流入する中央資本進出によって15年以内に消滅の危機に瀕すると予測した。全国の商店街再開発の失敗は、官主導の土地買収型にあると 分析し、要である土地問題解決に、利用権分離の60年間定期借地権設定とまちづくり会社設立による配当分配契約方式を編み出した。事情で商売ができなくなった地権者には廃業支援し、定期借地権収入を確保して、切り離した土地利用権をテナント入居者に認め、商店街エリアに住民として住み続ける仕組みで合意形成した。
まちづくり会社の商店街再開発は、居住者確保を核にしたコンパクトで住んでみたいまちづくりだ。そのため、他業種店舗集積、集合住宅、医療機関誘致、市民広場の開設を実現し、市道と民地の共用、斬新な構造物の許可取り付けなど、法の柔軟運用を許容させてきた。
古川さんは、官主導の限界性を指摘しながらも、適切な官民連携が不可欠であることを強調した。彼ら仕掛け人は、再開発計画への支援を市に提案して受け入れられなかった時に、経済産業省に掛け合い、都市計画、金融、商業流通、さらには民法の第一人者を集めたワークショップを重ね、新手法の開発計画をまとめ上げた。地権者の合意は、収支計画の立案が全てだった。再開発投資は個人地権者1000万円程度。各種公的補助金は税収増に結びつく回収可能な先行投資として採択させた。
危機意識を生み出した先見性。地元地権者からの自発的リーダーシップ。法の柔軟運用のため大胆な専門家ワークショップ。官民連携による課題解決。これらのユニークな取り組みは言うが易く行うが難しだ。新幹線開業による活況にある金沢市も中心商店街再開発が始まっている。老朽化対策に留まるのか、先見性を働かせた危機意識、新たなコミュニティづくりの気概に支えられた再生となるのか、丸亀商店街の挑戦は、大いに問いかけてくる。
土曜日にも拘らず、高松市議会事務局には随行でお世話になった。濃密な二日目に深く感謝申し上げる。