分かち合いの自治社会建設
11月27日金曜日は、金沢で社民党北信越ブロック議員団会議。金光男在日韓国研究所長から、ソウル朴元淳市政の進展を聴くことができた。徹底した現場主義と市民主体・行政サポート手法。市民とは、労働者と公務員と退職者であると規定し、正規転換はじめ尊厳ある労働政策を社会基盤施策として推進。社民主義の力を再認識できた。
ソウル市朴元淳市政の挑戦には、市民の政策研究会「くるま座」が「金沢国際地方政府宣言」を起草する二年間に、大きなインスピレーションを得た。
11月初旬の訪韓では、日程上面会がかなわなかった朴元淳市長だが、今日の金光男所長の報告は、断片だった朴元淳市政の全体像を詳しく伝えてくれるものだった。
市政革新の具体的実践は、市職員の非正規から正規職への転換で口火が切られた。そのために、補欠選挙当選後2ヶ月余りで60回を超える労働組合、現場労働者と市当局担当者を交えた協議を重ねたという。彼の手法は、現場に仮事務所を置いてでも、課題解決の知恵を練り上げ合意することだ。ソウル市庁地下フロアは、市民誰もが自由に意見発表できる「市聴」と呼ばれているという。
独裁政権時代の労働組合統制が残る中、就任早々複数ナショナルセンターにインセンティブを与え、庁舎内にオフィスを提供した。国からの中止指示を振り払ってだ。
彼は市長は市民だと言い、市民とは、労働者と退職者と公務員だと表現し、労働者に尊厳ある労働環境を保障するのは、当然の正義だと言い切る。そして公約通り、市職員の正規転換を推進する。清掃、交通、市関連職へ順次拡大している。
一般に、行政改革とは、人減らし・人件費抑制が常識だとみなされている。正規転換は道義的であっても、非常識だと思われている。ところが、派遣会社への派遣労働者からの中間搾取分の支払いがなくなった分、賃金増を上回る人件費削減効果が出た。所得が向上すれば、税収も上がる。財政は好転を始め、地域にお金の循環が始まった。
隠されていた新自由主義のカラクリという真実が行革神話を覆したのだ。
朴元淳市政は、徹底した市民参画でもある。小規模でも地域に密接な様々なサービスを住民自らが協同組合を設立し、社会的企業活動でコミュニティを活性化させている。ソウル中央部のソンミマウル共同体が有名だが、すでにマウル共同体はソウルに3000箇所つくられ、ネットワークを形成している。今や、市は行政の中心ではなく、住民自治を支援する存在へと変化を遂げている。
「堂々と享受する福祉」!
福祉は住民の権利であり、行政は保障する立場だ。そのために、待つ福祉から訪ねて行く福祉に転換している。妊産婦、高齢者、困窮者宅を市職員が訪問し、生活保護受給資格や福祉サービスを受けるよう促す。そのために、職員を増員し、地区に拠点センターを配置した。
これらの他、第三セクター化した一部地下鉄を完全公営化したり、原発一基分相当の節電施策を成功させたなど、短期間に多様な成果を発揮している。
これらの実績に、高所得層の支持も獲得され、今や当人の思惑を超えて大統領候補一番手であるという。
私は思う。分かち合いの市政革新により、人々の中にあった新自由主義競争にある非人間性への忸怩たる思いが、洗い流されているのではないか。自治と分かち合いにより、人間性回復までもが働き出したと。
朴元淳市長は、自らの市民運動の仲間たちに、政党新政治民主連合が合流した厚い基盤に支えられて、市政革新を断行している。それは、社民主義の可能性と地方政府の姿を私たちに明らかにしてくれるものだ。
金光男所長とも名刺交換し、今後の情報交換を約束した。ソウル市の視察を是非実現させたい。