7月29日付けで、金沢市議会議会基本条例第19条の規定に基づき、議長に文書による質問を提出した。議長による適切な受理を期待する。
ー以下 質問書ー
2019年7月29日
金沢市長 山野 之義 様
金沢市議会議員 森 一敏
以下の通り文書により質問します。
1 件名
自衛官募集に係る対象者情報の提供に関して
2 質問
本年6月定例月議会に於いて、自衛官募集に係る対象者情報の提供を求められた場合の事務の改善を求める高岩勝人議員の質問に答えて、山野市長は、「自衛官募集に係る対象者情報の提供について、今年度、防衛大臣から紙媒体、電子媒体での提供依頼が初めてあったところだ。自衛隊石川地方協力本部より依頼があったら、しっかり対応していく。電子媒体での提供を求められたら、応じていくつもりでいる。」と答弁されました。
市民から寄せられる声により、この答弁は子や孫を持つ保護者や家族に驚きをもって受け止められていることがうかがわれます。特定の国家機関との間で個人情報を取り扱う重要な事案であるにもかかわらず、その関係法令の解釈にしては粗雑に過ぎるとの厳しい指摘も届いています。7月以降の現在、勧誘活動の対象者となっている生徒等やその家族等への心理的な影響も懸念されるところです。
議会でなされた答弁が多角的な視点から議論されることなく拡散されることは避けなければなりません。したがって、出来るだけ早期に市民に論点を提示する責任から、以下質問するものです。
(1)市長の答弁が政府見解を前提としているなら、防衛大臣が市町村の長に対し提出を求めることができるとしている自衛隊法第97条第1項及び同法施行令第120条のどの規定をもって「適齢者名簿」の提出を適法と根拠づけているのかお答えください。
(2)他方、住民基本台帳法第11条1項には、法令で定める事務の遂行のために必要である場合には,住民基本台帳の一部の写しの閲覧を請求することができると定められていますが、閲覧を超えて提供までを請求できる根拠として、同法にどのような規定があるのかお答えください。
(3)さらに、行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律8条第1項(本市「情報公開及び個人情報保護に関する条例」第24条)では、原則的に禁じられている目的外利用(個人情報提供)の例外について、同法8条第2項(本市条例では第24条中の各号)に定められています。
ただし、市が「他の行政機関」である防衛大臣に個人情報を提供する場合、提供先が当該個人情報を利用することについて「相当な理由」がなければなりません。(行政機関保有個人情報保護法8条2項3号、本市条例第24条1の5号)。
この適齢者名簿を提供する場合の「相当な理由」とはいかなるものと考えているのかお答えください。
また、行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律第8条(利用及び提供の制限)第2項、ならびに金沢市情報公開及び個人情報保護に関する条例第24条(保有個人情報の目的外利用等の制限)で禁じられている本人または第三者の権利利益を不当に侵害するおそれはないと考えているのか見解を求めます。
(4)自衛官募集に係る対象者情報の提供については、上記質問の通り、市民に疑問の声があります。「電子媒体による対象者情報の提供に応じていく」との答弁は撤回し、本市条例に基づく金沢市情報公開及び個人情報保護審議会における審議をはじめ広く市民の意見を聴取し、個人情報保護の趣旨に沿って対応することを求めますが、市長の所見を伺います。 以上
【関連法令】
自衛隊法第97条
1 都道府県知事及び市町村長は、政令で定めるところにより、自衛官及び自衛官候補生の募集に関する事務の一部を行う。
2 防衛大臣は、警察庁及び都道府県警察に対し、自衛官及び自衛官候補生の募集に関する事務の一部について協力を求めることができる。
3 第一項の規定により都道府県知事及び市町村長の行う事務並びに前項の規定により都道府県警察の行う協力に要する経費は、国庫の負担とする。
自衛隊法施行令
第120条 報告又は資料の提出
防衛大臣は、自衛官又は自衛官候補生の募集に関し必要があると認めるときは、都道府県知事又は市町村長に対し、必要な報告又は資料の提出を求めることができる。
住民基本台帳法
第11条(国又は地方公共団体の機関の請求による住民基本台帳の一部の写しの閲覧)
1 国又は地方公共団体の機関は、法令で定める事務の遂行のために必要である場合には、市町村長に対し、当該市町村が備える住民基本台帳のうち第7条第1号から第3号まで及び第7号に掲げる事項(同号に掲げる事項については、住所とする。以下この項において同じ。)に係る部分の写し(第6条第3項の規定により磁気ディスクをもつて住民票を調製することにより住民基本台帳を作成している市町村にあつては、当該住民基本台帳に記録されている事項のうち第7条第1号から第3号まで及び第7号に掲げる事項を記載した書類。以下この条、次条及び第50条において「住民基本台帳の一部の写し」という。)を当該国又は地方公共団体の機関の職員で当該国又は地方公共団体の機関が指定するものに閲覧させることを請求することができる。
行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律
第8条(利用及び提供の制限)
1 行政機関の長は、法令に基づく場合を除き、利用目的以外の目的のために保有個人情報を自ら利用し、又は提供してはならない。
2 前項の規定にかかわらず、行政機関の長は、次の各号のいずれかに該当すると認めるときは、 利用目的以外の目的のために保有個人情報を自ら利用し、又は提供することができる。ただし、 保有個人情報を利用目的以外の目的のために自ら利用し、又は提供することによって、本人又は第三者の権利利益を不当に侵害するおそれがあると認められるときは、この限りでない。
三 他の行政機関、独立行政法人等、地方公共団体又は地方独立行政法人に保有個人情報を提供する場合において、保有個人情報の提供を受ける者が、法令の定める事務又は業務の遂行に必要な限度で提供に係る個人情報を利用し、かつ、当該個人情報を利用することについて相当な理由のあるとき。