2020年度 12月議会一般質問等報告

◆2020年度 12月議会一般質問 森 一敏

1.当初予算編成における歳入予算について
2.ガス事業・発電事業民営化について
(1)市民が抱く一体譲渡方針への疑問
(2)コンサルタント調査、あり方検討委員会、一体譲渡基本方針の流れへの疑問
(3)譲渡基本方針並びに譲渡準備スケジュールの見直しについて
3.ごみの減量化と循環型社会構築のとりくみについて
(1)ごみ減量化への評価
(2)家庭系ごみ有料化とコミュニティ活性化基金に関して
4.市民のつぶやきから  
   特別支援教育指針改定はどの子も共に学べる共生教育へ

以下一問一答ー   ー議会質問映像はこちらから

1.当初予算編成における歳入予算について
森:みらい金沢の一員としまして、以下ご質問させていただきます。
 まず第1点めは当初予算編成における歳入予算についてお伺いいたします。この1年、新型コロナウィルス感染症対策に充当した追加分を含めますと5度の補正予算総額は554億6700万円余に達し、さらに実質13億5000万円余の12月補正が提案されております。特別定額給付金事業費や新型コロナ対応地方創生臨時交付金など、国庫支出金が主要な財源ではありましたが、財政調整基金や予備費の取り崩しなど本市も独自の財政出動を行ってきました。そこで、新型コロナ禍のもとでの本市の財政状況について市長のご所見をまずお尋ねします。

山野市長:先の3月の追加補正におきましてはもう災害といってもいい緊急かつ臨時的な措置といたしまして財政調整基金の取り崩しをいたしました。その後数次にわたりまして講じてきた感染拡大防止と地域経済への緊急対策では国交付金の積極的な活用を図るなど、財源の確保に努めてきたところであり、今のところ市の財政状況は健全な範囲内におさまっているというふうに理解しております。

森:さて日本経済の景況判断は歴史的な落ち込みからは緩やかな回復基調にあるけれども、コロナ以前の水準への回復には2023年度にずれ込む。感染状況によっては大きく下ブレし、雇用政策如何では失業率の大幅悪化が懸念されるということです。こうした中、市長は新年度の本市の税収をどのように見通しておられますでしょうか。

山野市長:市税につきましては国の予算編成、税制改正等の動向を慎重に見極める必要があると思っております。ですから現時点で詳細に見積もるということはなかなか難しいのですけれども、現下の状況を考えますと大幅な減収になると見込まれています。

森:緊急的な財政出動、固定資産税等の猶予・減免による経済支援は自治体財政を圧迫するというジレンマにあって、全国市議会議長会は、予算編成に向けて地方財源確保を国に包括的に要望しております。本市としても財源確保と地方財政計画に対する課題をどう認識し、どのように取り組むのか方針を伺います。

山野市長:今後示される地財計画におきましては、高齢化の進展に伴う社会保障費が増長する一方、コロナ禍の影響を受けた税収の落ち込みにより財源不足を生じることが見込まれていますことから、地方の行政運営に必要な一般財源総額が確保されるかが大きな課題になってくると考えています。本市におきましても大変厳しい財政環境であると考えておりまして、選択と集中を徹底した施策の重点化をはじめ事業の年度間調整、資金の有効活用、国庫補助金の投入等にこれまで以上に知恵を絞り工夫を凝らしながら財源の確保にとりくんでまいります。

森:基本的な方針を伺いました。私たちみらい金沢としましても、年末に今年も政策予算要望書という形でいろいろなご提案を申し上げたいと思っておりますので、どうぞよろしくお願いいたします。

2.ガス事業・発電事業の民営化について
(1)市民が抱く一体譲渡方針への疑問について
森:それでは2点めに移ります。ガス事業・発電事業の民営化についてです。ガス事業・発電事業の一体譲渡準備はブラックボックスの中で2月の二次審査に向けて動いております。しかしこの間の各関連委員会での審査・調査によりさらに深めるべき論点が浮き彫りになりました。まずその第1です。市民が抱く一体譲渡方針への疑問についてご質問します。ある住民からの電話です。「職員の熱心な勧誘にほだされ都市ガスに切り替えたばかりなのに、民営化するとは何事か。企業局なら先行き安心と思っていたのに。」こうした声は裏返せば公営ガス事業への信頼と言えます。「経営戦略2016」は5事業には公共性及び公益性が求められるため、今後も引き続き企業局が水とエネルギーの総合ライフライン事業者として市民に貢献していくとしています。しかもこれは2020年4月のガス導管事業の法的分離までの自由化を織り込んでおります。では経営理念・経営ビジョン、さらにエネルギー自由化対応戦略についてどう書かれているか市長にお尋ねします。

山野市長:経営理念ですけれども、快適な水環境の創造とエネルギーサービスを通して豊かな市民生活に貢献をします、これが経営理念であります。具体的には水というのは水道であり公共下水道であり工業用水道だと思います。エネルギーというのはガスであり発電であり、また公共下水道や工業用水道も広い意味でのエネルギーの側面もあるのだと思っております。経営ビジョンですけれども基本方針といたしましては安定供給の確保を基本とし、投資と料金のバランスを図るため、投資の選択と集中、経営の高度化及び効率化を推進するというふうに書かれております。またエネルギー自由化対応戦略、これちょっと長くなりますので都市ガスと電力のことだけ申し上げますけれども、エネルギー自由化を踏まえて新たな営業戦略を展開する、そして電力のことにつきましては適切な見直しを図っていく、事業形態を再検証し適切な見直しを図っていくというふうに書かれています。制度が変わる前のものではありますけれども、しっかりと理念・ビジョンとも明確に示しているものと理解しています。

森:この経営戦略の掲げている、私たちに対するお約束だと思うんですけれども、それについては今市長が仰ったように、たいへん大切な指摘がなされていると思います。この間様々な議論をさせていただきましたが、現在の企業局のこの5事業体制、この形態はもっともドイツのシュタットベルケ、これは公営総合企業と訳したらよいでしょうか、これにもっとも近く改革方向になりうる、このことを私もう一度取り上げてお話をしていきたいと思います。「経営戦略2016」について言及していただきましたけれども、この5つの事業形態というものが将来の新しい可能性を築いていく、こういう指摘が今の言葉で表されている、これをお聞きになってどのような感想をお持ちなのか。

山野市長:様々な考え方があるというふうに思っています。私は理念というものは絶対に依って立つところですから大切なものでありますけれども、やはり時代を捕まえた上で理念の実現をしていくためには、柔軟性を持って対応していかなければいけないと思っています。理念というものはしっかりと守っていきたいと考えています。
(2)コンサルタント調査、あり方検討委員会、一体譲渡基本方針の流れへの疑問
森:第2に、コンサルタント調査、あり方検討委員会、一体譲渡基本方針の流れに対する疑問についてご質問します。まずその1は、2017年度、2018年度の局内検討に加え、昨年のガス事業発電事業あり方検討委員会での支援業務もPwCアドバイザリー合同会社であったことが判明しました。現在の譲渡先選定委員会アドバイザリーまで5年連続の受注です。制度上の委託手続きとはいえ、いかにも不自然で特別な関係との批判に公営企業管理者はどうお答えになりますか。

平嶋公営企業管理者:いずれの面でも法令等に基づきまして適正に契約事務を執行してきたところでございます。

森:法令や制度手続きに則って行ってきた結果であるということですが、2017、2018、2019、2020年2億2500万円余の委託料を金沢市はPwCに支払っています。これだけのことを続けてまいりますと、お金はもちろんのことですが、情報もこのPwCに集中的に提供されていくという経緯とも言えるのではないでしょうか。そうしますと一般競争入札といえどもそうしたことが作用する、それが特別な関係と市民には見える。このことを指摘させていただきたいと思います。
 次に2点めに移ります。パネルをご覧いただきたいと思います。―パネルー 今回ちょっと大きくいたしました。
その「PwCアドバイザリー2018年報告書」「2019年あり方検討支援業務報告書」これにはガス事業売却による経営改善への効果の疑問、民間譲渡による収支改善は困難、それから競争環境の見通しそうすすんでいない、緊急的課題ではない、競争激化は考えにくい、こういう指摘があります。それから事業価値評価によっては巨額な資産価値の可能性があるということ。数字をあげました。水力発電については相対的価値が高まる。それから売電単価の引き上げで5億円から15億円の純利益の可能性がある。ガス事業でも最大420億円という試算の手法がある。発電でも最大133億円という試算の手法がある。こういうことが書かれております。この、水力の価値がさらに高まっていくということからガス事業債全額返済のための発電事業の譲渡という手法が言及されております。ここは非常に議論のあるところです。そして一番下ですが、公営でもセット販売に法的制約なし。電力小売りに法的制約なし。電気事業がガス事業に出資または長期貸付も可能。そういう記述もなされております。これらの調査報告を市長は直接目にしておられましたでしょうか。

山野市長:逐次企業局から報告を受けているところであります。調査内容であったり、他の公営事業者の状況に関しましても2019年度予算編成の過程の中でも報告を受けているところでもありますし、後日その資料も手にして目にしているところであります。

森:ご自身でご覧になって、これを認識したうえでこの間の施策の推進のご判断をなさってきたと、こういうふうに理解してよろしいでしょうか。

山野市長:企業局と意見交換を重ねながら、様々な資料を背景にしながら判断したものであります。

森:そうしますと、このような流れにどうして判断をなさったのかということが改めて私には疑問に思えると申し上げなければいけない。3点めですがすでに指摘したように、あり方検討委員会は意見の違いを残したまま答申に至りました。その答申すら基本方針では変えられております。それは留意事項の第1、地域エネルギーのあり方に対する責任、これが消えました。留意事項第3、市民の安心安全を確保するため出資を行う、これに柔軟な企業活動を阻害しない範囲内で、と加えた。これらを高橋・元あり方検討委員長は市のご判断と答えているおられますが、市長のご判断なんでしょうか。

山野市長:冒頭、市民の方のお話もおっしゃいました。やはり私は市が一定の範囲で関わっていくことが大切だというふうに思っています。ただやはり柔軟な企業活動というものも大切になってきますので、企業局と話し合いをしながらそういう判断をいたしたところであります。

森:現在、募集要項に沿いまして第一次審査が終わったという段階に入っております。この募集要項にあり方検討委員会そして基本方針、そして募集要項というその流れの中に、この中で議論されたたいへん重要な視点、今そのうち2点だけ私は言及いたしましたけれども、このことを左右するような内容が市長が公営企業管理者とともに協議をして判断をなさったということが色濃く反映しているということですので、たいへんお二人の責任は重いものがあるということを私改めて申し上げたいと思います。
(3)譲渡基本方針並びに譲渡準備スケジュールの見直しについて
森:3点め。譲渡基本方針並びに譲渡準備スケジュールの見直しについてご質問いたします。今ほどご紹介しましたように、私たち議員も含めてまさに聞いてないことがあったなと。こういう事業経過や両事業に対する評価内容が議員サイドの深掘りによってようやく明らかになってまいりました。ほとんどの市民にはあの恣意的だと批判されているパブリックコメント、あの段階での情報提供しかなされていません。公営企業の経営責任、説明責任、そして市民のエネルギー自治への参加の権利に応えるには3月の優先交渉権者選定から6月の条例改廃に至るスケジュールはいかにも拙速です。方針とスケジュールを見直す勇気ある判断を求めます。市長の見解を伺います。

山野市長:国の制度改正また他の公営事業者の状況も勘案していきながら、電力・ガスを併せた総合エネルギー市場へ市場の形態が変化しているということ、さらには人口減少や地球温暖化など事業を取り巻く環境が大きく変化しているということ、将来にわたり市民に対し安全で安心で安定したエネルギー供給を確保するということ、また先人たちが担ってきた両事業に対し消費者のメリットある多様なサービス提供を図ることが私は必要であるというふうに考えております。

森:この基本的なお考えというのは何度か伺ってきたわけですが、市民の利益、利用者のメリット、これはいったい何なのかということについて、先ほど見ていただいたPwCの報告書の中にもいろいろと考えさせられる指摘がありますし、あり方検討委員会の中での議論も何のために経営形態を変えるかということについての、一体目的は何なのかということについての深掘りがなされないまま答申になった。しかもその中で議論された一番の眼目・重要な点が基本方針からも消える。消えた状態のまま現在の募集要項になると、こういう流れをたどっているわけです。このままいくのはたいへん拙速です。
 繰り返し申し上げておきますけれども、「経営戦略2016」含めて、すでに始まっている自由化のプロセスを織り込んで、それを想定して前提にしてあの戦略は作られているということをもう一度確認しておきたいと思います。住民監査請求が今なされております。審査が始まったようです。この中に、私も市長も管理者も含めてともにこれからさらに考えたいという記載があります。それを申し上げたいと思います。「『経営戦略2016』の公共サービス・総合ライフライン供給の視点を発展させた場合、どのような将来像を描くことができるのか。」先ほど法的規制なしということを申し上げました。「どのような将来像を描くことができるのかという点は、市長・議会・市民の判断に大いに貢献する知見となり得る。企業局の解体再編に話を短絡させてはならなかった。」「現段階において有用な」昨年は併せて13億を超える純黒字が決算審査いたしました。「エネルギー部門を切り売りすることは市民の共有財産のひとつを失うだけではなく、企業局が多部門経営型の総合地方公企業として発展する道を閉ざすものである。」こういう指摘がなされています。その可能性、私は非常に注目しますし、これを閉ざすということをお二人の責任者によってなされるということになってはいけない。私たちがそれを追認するということになってはいけないという思いを改めて持ちます。
 市民の関心も今高まってきておりますので、市民が参加しながらこの私たちの財産、特にエネルギーライフラインというものを市民のためにどうすることがより発展させることになるのか、課題を克服することになるのか、この議論の場を設けていただきたいと思います。もう一度スケジュールの見直しについて市長のお考えをお尋ねしたいと思います。

山野市長:先ほど申し上げました多様なサービスを図ることが大切だというふうに考えていまして、令和4年4月1日の譲渡に向けて準備を進めていきたいと思っております。

森:民営化だけで解決する問題ではないという指摘を重く受け止めて今後も議論させていただきたいと思います。

3.ごみの減量化と循環型社会構築のとりくみについて
(1)ごみ減量化への評価
森:3点めに移ります。ごみの減量化と循環型社会構築のとりくみについてです。1点め、ごみ減量化への評価について。―パネルー
 スタートした第6期ごみ処理基本計画は、パネルを用意しました。前期分、三区分しておりますが、前期分の末、これを令和6年度末に置いております。ごみの総排出量を家庭系で8万6000t、事業系で5万8000t、これがいちばん右側のグラフです。これが目標です。令和6年の目標です。有料化導入年の平成30年度からのごみ排出量の推移を見ますと、家庭系の燃やすごみと埋め立てごみの合計は平成30年度は前年比17.4%減、この動きです。7万2248tへと大きく減少しております。しかし元年度は1.4%増の73,272トン。令和2年度は上半期の速報値ですけれども上半期比で3.3%さらに増加をしております。懸案であった事業系では搬入手数料の引き上げと事業者への働きかけによって、家庭系を上回る、割合で年度実績が順調に上がってきております。コロナ禍の影響を考慮しても、この傾向では家庭系でも、家庭系を前期後期に分けてグラフ化したものがブルーのグラフです。濃いのが前期、うすいのが後期、今年度の後期はまだ集計値が出ておりません。前期後期それぞれこの幅は少し加工してありますが悪い意図を持ってしているのではありません、分かりやすくするために、上昇傾向にあることを知っていただきたいというその意味でグラフ化をしました。この傾向では目標達成楽観できないように思うんですけれども、市長のご所見をお伺いします。

山野市長:ご指摘の通り家庭系のごみが増加している傾向であります。いわゆる「巣ごもり」であったりとか、テレワークということがまさに普及してきた。自宅で過ごされる時間が多くなってきたということが大きな原因であるというふうに思っています。事業系ごみにつきましてはもちろん事業者のご努力もありますけれども、やはり社会経済活動が一定期間止まってしまった、停滞してしまったということによるものが大きいのではないかと思っております。家庭系ごみが増えつつありますけれども、先ほど申し上げたような理由だと思いますけれども、そうは言っても指定ごみ袋収集制度導入前と比較して上半期で13.9%の減となっています。減量効果というものは持続されてきているというふうに思っています。推移を見極めていかなければいけませんけれども、引き続き市民の皆さん、そして今年度事業者の皆さんのところに入っていって説明会をする予定でありましたけれども、1、2回私も直接行ったこともありますけれども、さらに感染状況を見ながら、ご理解をいただけるならば、事業者の皆さんにもさらなるご説明をさせていただきながらご協力をいただくようにとりくんでいきたいと考えております。
(2)家庭系ごみ有料化とコミュニティ活性化基金に関して
森:有料袋の売却収入に関してのご質問に移ります。家庭系ごみ有料化とコミュニティ活性化基金に関して。本市は、有料袋販売収益は地域コミュニティ活性化基金を通じて地域コミュニティ活性化事業に充てるというしくみを作りました。この基金が年々大きくなっております。有料化導入年年度末に残高が3億666万余でありました基金が、令和元年度末には6億97万円、今年度は予算額としてですけど残額が6億9297万、そういう予定をしております。有料化は税の二重取りとの批判を本市は否定しますが、基金の使途である地域コミュニティ活性化施策、従来の一般会計業務、これを辛辣な市民は資金洗浄と揶揄するんです。高齢者や生計が不安定な世帯では有料袋価格を下げてほしいとの声が止みません。その一方で使途の拡大を求める地域住民の声も上がっております。有料袋販売益を同基金を経由して一般会計事業へ充当するという施策は再検討が必要ではないでしょうか、見解をお願いします。

山野市長:制度変更にあたりましてこの議場でも何度も議論している当初から、地域へ還元したいとずっと意見を申し上げていまして基金を作らせていただきました。現に多くの地域の皆さんにも有効に使っていただいているところであります。ただやはりいろんなご意見をお聞きしながら、大きな方向性としては私その方向性でいいというふうに思っておりますけれども、さらなる充実ということを考えていかなければいけないと思っております。今ほど申し上げました大きな方向性につきましてはしっかりと堅持をしていきながら柔軟に対応し、多くの方に地域コミュニティの活性化に利するように使っていただければというふうに思っております。

森:ひと言で言うとわかりにくいという感覚を持った住民の方が多い。私は施策の基本理念とか整合性とか、こういう問題を宿したまま基金が膨れ上がっている、この根本的な問題についてやはり問題意識を持っていただきたいということを申し上げておきたい。本来手数料を徴収するならば個別収集すべきというところ地域住民の善意によってステーション収集体制が維持されている。地域住民も高齢化に直面しております。これから気候変動対策やプラスチックごみ削減などの地球的規模の課題に立ち向かう時代にあって、経済的インセンティブと行政の都合を優先するのではなく、市民生活に根ざした具体的な目標設定のもとで市民の環境意識と参加意識に直接働きかける施策の工夫が重要だと思います。ごみ減量化の施策体系についても再考する必要がないか、市長の課題意識を伺います。

山野市長:ご指摘のようにこれまでも市民の皆さんの環境意識や参加意識に直接働きかける様々な施策にとりくんできました。議場でも何度も申し上げていますけれども、平成5年に国は全国の市町村に有料化の提言をされました。金沢市も所属している全国市長会も平成5年の段階で全国市長会としてとりくんでいくという意思表示をしています。本市におきましても半透明ごみ袋であったりとか、また粗大ごみの有料化にとりくんでいきながら皆さんのご理解をいただきながらとりくんできているところでもあります。また、食品ロスを減らしていかなければならないという現況の課題に対応すべく推進計画に基づく様々な施策にとりくんでいます。それも市民の皆さんの環境意識に期待するところでもあります。雑紙の回収等の徹底などもそうであります。多くの皆さんにご理解をいただくべく出前講座をさせていただきながら市民の皆さんに参加意識を持ってもらうとりくみもしていきます。引き続きとりくみを続けていくことによって森議員ご指摘のように環境意識、参加意識に直接働きかける形でのとりくみをすすめていきたいと考えています。

森:この体制を支える地域の実情、これに対する配慮、これを怠ってはならないという思いです。経済的インセンティブだけに頼っているということはリバウンドというものに直面する可能性が高い。ですからやはり市民の環境に対する問題意識、これを生活にどう落とし込むかというあたりの市からの提案や市民との対話、そういうとりくみをぜひすすめていかなければならない。これは私の課題としてもそうです。

4.市民のつぶやきから  特別支援教育指針改定はどの子も共に学べる共生教育へ
森:では4点めの質問に移ります。市民のつぶやきから。特別支援教育指針改定はどの子もともに学べる共生教育という願いがある。就学相談の時期になると地域の通常学級への進学を願う保護者の思いがなかなか届かないという悩みを聞きます。今般指針改定のためのパブリックコメント。骨子案で基本理念、共生社会形成に向けて、に賛意が寄せられる一方、そのためにインクルーシブ教育ではなく、特別支援教育の推進を掲げていることが疑問視されております。共生社会形成に向けての特別支援教育とはインクルーシブ教育とは同義語なのか、また本指針改定により同じ場でともに学べることがどう進むのか、教育長の見解を伺います。

野口教育長:まず特別支援教育とはインクルーシブ教育とは同義語なのか、についてお答えしたいと思います。特別支援教育指針につきましては、インクルーシブ教育システムのしくみに立ちまして、学校がすべての児童生徒に対し多様できめ細やかな学びの場になることを示しているものであります。特別な支援を必要とする児童生徒への教育をより一層充実させることが、共生社会の形成に向けたインクルーシブ教育システム構築のために必要不可欠のものと思っています。今後もインクルーシブ教育システム構築のために特別支援教育を着実に進めていきたいと思っております。
 もうひとつ、指針改定によって同じ場でどうやって進むのかでございます。まずこの中身についてはいろいろなお考えがあると思いますが、私が今考えているのは障がいの有無に関わらず、保護者の希望や子どものニーズを踏まえ児童生徒の健全育成の観点から多様な学びの場や教育環境の充実が図られるようとりくみたい。このことを大事にしなければならない。   もうひとつはすべての児童生徒が多様性を受け入れられる心情や態度を育むことができるよう指導の充実に努めていかなければならない、こうしたことを大事にしながら新たな指針の基本理念の具現化を図っていきたい、このように考えております。

森:前回の指針に比較しますとインクルーシブ社会への方向性というものをそれを一番上に掲げるということについてはたいへんな前進だと思いましたし、そのことを保護者の方々も大変評価をしている。ただ、今教育長がお答えになった「障がいの有無に関わらず、保護者や本人の希望を尊重する、ニーズに対応する、きめ細かな学びの場を」このことが否定されることはもちろんないし、たいへん重要な課題なんですけれども、インクルーシブ教育と特別支援教育の違い、インクルーシブ教育とスペシャル教育との違いというのはそれらが基本的には同じ場でなされる、そういうしくみを整えなければいけないという、これが大きく異なってくるわけです。分けた場でこれらに対応しようとする基本方針、これが指針と異なってしまうというんじゃないかという懸念が表明されているし、私もそのように思っております。とりまとめは来年の2月あたりかなと思いますので、さらに深い議論をしていただきたいと思います。
 続いて、設置する特別支援教育サポートセンターに、移転予定の小将町中学校から特学分校を切り離し、中央小学校芳斉分校と一体設置することは、同じ場でともに学ぶことから逆行する分離教育にはなりませんか。教育長の見解を伺います。

野口教育長:ちょっと長くなりますが、自分の思いを述べさせていただきます。私金沢の子どもたちには日々学んでいる場においていつも友だちを慈しみながらともに仲良く学んでほしいと考えております。そうした学びの場について考えたときにインクルーシブ教育システムの考え方に立つ、居住している地域の小学校・中学校で学ぶことが子どもたちの本来の姿ではないかなと考えています。
 しかしながら、同じ障がいのある児童生徒同士の集団での学びを希望していらっしゃるご本人やまた保護者の声も多くありますことから、今回中央地区の教育施設の再整備や特別支援教育サポートセンター、これ仮称でありますが教育環境の向上に向けたとりくみを行う中で、小学校から中学校まで9年間の専門的できめ細やかな切れ目ない支援を可能とする場として、学びの場の一体的整備を図ることにいたしました。新たな施設の機能とか教育環境等につきましては、両分校に通う児童生徒とその保護者に丁寧に説明をさせていただきながら、今一度どちらが将来にわたって児童生徒の成長に適しているのか考えていただく、そのように思っております。
なお、障がいのある児童生徒と障がいのない児童生徒とが交流や共同学習を通して相互理解を図ることが大変大切であると考えておりますので、新たな中央小学校と移設後の中学校、特別支援サポートセンターが、これまで以上に緊密にすること、またICT機器を有効活用すること等で教育効果がさらに向上するように最大限努めてまいりたいと思っております。

森:保護者の希望というものは現実にはあると思います。しかし、そうした保護者が希望を持つという背景、情報源、これらを含めてインクルーシブの立場から見直すということが指針の方向性でなきゃいけないというように思います。
国連の子どもの権利委員会が複数にわたって日本政府に対して勧告を出しております。2019年の2月にも勧告が出ておりまして、「統合された学級におけるインクルーシブ教育を発展させること」「適切な配慮を提供する教員も統合された学級に配置する」こういうことが勧告されているんです。この一体整備がそれに逆行することがないようにさらに議論していただきたい。最後に市長にお願いします。特別支援教育支援員、これは金沢市が国に先駆けて2007年に導入したものです。現場は増員を求めております。ぜひ来年度予算編成に向けて検討していただきたい。このこと最後に申し上げたい。

山野市長:しっかり受け止めていきたいというふうに考えています。

◆新型コロナウイルス感染症に係る差別や偏見等の根絶に関する決議を満場一致採択
ー2020年12月1日 12月定例月議会冒頭ー