敗戦75周年を前に 非戦平和は民衆連帯から

非戦平和は民衆連帯から
 「新型コロナ禍に阻害される調査」と悔しかる七尾の角三外弘さんが地元紙に取り上げられた。
 平和教育の先達角三さんと七尾の中国人強制連行・労働問題に取り組んだのは、1995年の敗戦50年の夏「日本の侵略展」がきっかけだった。
 その時に証言のために来日を果たした被害者馬得志さん(長安発掘責任者・中国科学院考古研究所教授)と私たち実行委員会をつないだのは、満蒙開拓団から中国に8年残留・帰国し残留孤児など帰国者の生活指導員を献身的に担っていた北崎可代さんだった。(いずれも故人) 帰国者指導員研修会で奇遇にも同宿した馬さんの次女との出会いから赤い糸が伸びた。
 七尾では中国人暴動事件としてしか語られてこなかった強制連行の史実を明らかにせねば。
 この問題意識から、1996年、1998年、2002年と幸存者(生存者)からの聴きとり調査に黄河流域の農村原陽県などを訪れた。じいちゃんたち、その家族との付き合いは、2005年から2010年の戦後補償裁判支援へと進んで、何度も弁護士とも現地に足を運んだ。
 ドイツではナチスの人道に対する罪に時効はないが、日本では最高裁が、請求権はサンフランシスコ講和条約の枠組みにより放棄されているとの法理を編み出し、棄却して訴訟は終結した。(戦争捕虜、抵抗者や一般農民などを労働力とする「中国人労働者内地移入」政策は、1940年代に安倍首相の祖父岸信介氏が商工大臣時に政策化したもの。)
 しかし、史実は法廷でも認定され、史実すらないとした右翼の攻撃は封じられた。
 調査する会から裁判支援会、そして戦後補償を実現する会へと私たちの戦争責任平和運動は局面を換えてきたが、まだ未解決だ。一貫してライラワークとして最前線で取り組み続けているのが角三さんだ。
 戦争は支配者が起こすのであって、民衆が起こすのではない。しかし、戦争は、民衆の支持がなければ遂行できない。戦争にまつわる史実を通じて支配者の虚偽を明らかにし、その責任を問う。そのために国を越えて連帯することが、非戦平和の道だと信じる。
 戦争体験の風化が懸念されるご時世に、角三さんの思いがこうして世に伝えられることは意義深い。