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森一敏
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 石川県国民保護計画素案に対するパブリックコメントに当たって  
05.10.29

「国民保護法」に関する論点整理(補強版)         
変えよう〈金沢〉ネットワーク
はじめに 
 災害対策基本法、原子力災害対策措置法などをベースにしながら、国の一元的コントロール権を盛り込む国民保護法は、自治体、指定行政機関、指定公共機関に対し、基本指針にもとづく国民保護(業務)計画策定義務を負わせようとしている。
 石川県は既に対策本部設置条例、国民保護協議会条例を制定し、指定地方公共機関の指定、更には、県国民保護協議会に石川県国民保護計画策定の諮問を済ませている。県は、同協議会の答申を待って、今年度中に石川県国民保護計画を策定するとしている。因みに、鳥取県がいち早く避難シミュレーションを実施し、福井県は原発攻撃を想定した住民避難実働訓練を、美浜において11月27日に予定している。
 今回のパブリックコメントは、石川県が国民保護協議会に諮問している県国民保護計画の素案に対して県民の意見を求めるものである。

T 石川県国民保護計画案に関するパブリックコメントに参加するに当たって
 国民保護法が、後に述べるように、憲法に違反する戦時立法であることを基本に据え、「よりましな計画を求め、提案する」立場はとらず、
1.計画案に内在する問題点、計画案がもたらす諸問題、例えば平和主義・平和外交の破壊、基本的人権・市民の平和的生存権の侵害、地方自治体の自治権の侵害に対する問題意識に基づき、疑問点、不同意点を指摘し、計画案撤回、見直し、策定の中止などを求める
2.軍事優先思想ではなく、住民優先、すなわち「地方自治の本旨」(住民、自治体の自己決定、住民の平和的生存権保障)を実現させる観点からの提起を行うこととしよう。

U 「国民保護法」概観  「国民保護」と言う名の総動員法
「国民保護法」・・・武力攻撃事態等における国民の保護のための措置に関する法律
・10法3条約からなる有事法制中の基本法たる「武力攻撃事態法」(03.6.6)第22条(事態対処法制の整備)並びに第24条(その他の緊急事態対処のための措置)にもとづく「国民の生命、身体及び財産を保護するため、または国民生活及び国民経済への影響が最小限となるようにするための措置」とされる。    
・武力攻撃事態、緊急対処事態対処の「国民保護」のための措置は、平時は首相が、有事には武力攻撃対策本部長(首相)が地方自治体等に計画策定、措置の実施を指示し、総合調整を行い、場合によっては是正措置を行う(一元的な指揮命令体制)。武力事態等対処の体制には、国・地方の行政機関、国・地方の公共機関、自治体、住民個々人、消防団や町内会などの自主防災組織、情報機関を含む民間事業者が網羅される。
・国民保護のための措置とは、有事の警報発令、避難指示、住民誘導、救援、安否情報の収集、応急措置、被災情報の収集、国民生活の安定、生活基盤の確保、復旧、備蓄、財政上の措置、罰則を指す。
・国民保護のための措置の実施には協力に努めるもの(国民保護法第4条)とされているが、「自発的意思にゆだねられるもので強制にわたってはならない」とし、憲法の保障する国民の自由と権利が尊重されなければならない(第5条)と、基本的人権の尊重が明記されている。しかし、「正当な理由」無く協力しなければ、罰則の対象となる。
・「武力攻撃事態」とは、「我が国に対する外部からの攻撃が発生、または緊迫し、予測されるに至った事態」をいい、「緊急対処事態」とは、「武力攻撃以外の国、国民の安全に重大な影響を及ぼす事態」を指し、それぞれに4つの類型(閣議決定された「国民の保護に関する基本指針」)を想定している。

V 国民保護法に対する基本認識  憲法違反の戦時法
 「国民保護」という名のもつイメージに惑わされてはいけない。上記で概観したように、国民保護法とは、外部からの武力やそれ以外の方法による攻撃を前提にして、国内の総動員体制をつくりあげ、稼働させようとする戦時法である。それは、戦争を行うための後方体制を平時からつくることであり、戦争の方法を法律で定めることでもある。「平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を維持しようと決意」(日本国憲法前文)し、「正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇または武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、これを永久に放棄」(日本国憲法第9条)する日本に於いては、国民保護法を含め有事法制そのものは憲法に反する法制であると認識する。
 さらには、国民保護の概念が暗黙の了解として日本人(日本国籍を有する住民)を想定しており、定住外国人をはじめとした外国人を保護の対象から排除していることに注意を払わなければならない。戦時法制はナショナリズムを基盤にせざるを得ず、外国人の保護・人権保障は本質的に矛盾するはずである。基本方針や国民保護措置に外国人への配慮を文言化してみせてはいるが、民族排外意識を煽ることで成り立つ体制からは、外国人差別や敵視は必然化せざるを得ない。にもかかわらず、外国人差別、敵対行為、排除を明確に禁止する条項を盛り込んではいない。侵略と排外の歴史からつかんだ日本国憲法の精神に背いているという意味でも憲法に反する法制であると考える。

W 石川県国民保護計画案に対する論点
1.「県国民保護計画が対象とする事態」(第1編 総則 第5章)に対して
(1)有事の事態、すなわち「武力攻撃事態」、「緊急対処事態」各々の4つの類型は、抽象的である。仮想敵を想定していると思われる。一体どの国、どの勢力を仮想敵として想定しているのか。
(2)どのような根拠から「有事」の事態が起こることを想定しているか。マスコミを通じた政府の世論誘導を追認してはいないか。(北朝鮮脅威論、中国脅威論)
(3)政府自ら本格的着上陸侵攻は考えにくいと見解を表明した経緯がある外、有事の事態は、むしろ朝鮮半島や台湾海峡或いは中国大陸への米先制攻撃が誘発する可能性以外には考えられないとするのが、国際政治学分野の有識者の見解である。
 安保再定義→新ガイドライン→テロ特措法→イラク特措法、ミサイル防衛日米共同開発→武器輸出禁止三原則見直し。アジアにおいては、今や脅威とは先制攻撃戦略をとるアメリカに一体化し、憲法改悪にひた走る他ならぬ日本であると言われている。アジア地図をひっくり返して見てみよう。相手の立場に立って想像力を働かせれば、日米同盟こそが平和への脅威であることが実感されよう。 
(4)かつての大日本帝国は、絶えず仮想敵国が存在すると不安を煽り、それを口実として軍拡・軍事政策をすすめ、高度な「国防」国家をつくり上げた。しかし、その内実は侵略国家であり、侵略をすすめるための総動員体制であったことは、歴史の事実である。
2.「国民保護」計画の実効性について
(1)県の国民保護計画で、果たして住民の生命財産を守ることができるのか率直な疑問である。いかなる具体的なシミュレーションの下で計画を策定したのか。(詳細計画を策定していくのか。)
(2)鳥取県が行ったシミュレーションでは、県東部岩美郡(当時)3町村住民2万6千人がバスで兵庫県へ避難するには、11日間を要すると報告された。第1回鳥取県国民保護フォーラムで、鳥取市当局関係者が12万市民を避難させることは検討の余地を超えていると吐露しているように、実施は困難であり、非現実的である。
(3)自然災害とはちがい、武力攻撃等の事態を仮に想定してみた場合、戦線が絶えず移動し、状況は流動し続ける。また、武力侵攻を排除しようとする軍事作戦(自衛隊、米軍?)がそれらに対応して展開される。軍事作戦と住民避難は時として矛盾し、場合によっては衝突する。軍が優先するのは作戦行動である(自衛隊法には、本来任務を「直接侵略及び間接侵略に対しわが国(国民ではない)を防衛すること」とある)。住民避難に責任を負う自治体が軍を抑制し、避難を優先させることができるのか。(国民保護法には都道府県知事からの自衛隊への支援要請はあるが、自衛隊に対する人命救助の指示、行動抑制の権限は見当たらない)
 日本は、かつての「高度国防国家」日本が仮想敵をつくり防衛の名によって戦争をしかけ、最後には、国民を見捨てて崩壊した旧満州、沖縄、全土空襲、被爆などの悲劇を歴史的教訓としてもっている。今日、米中心のグローバリズムに抵抗する命がけの闘争に対し、富める国の有志連合が防衛の名の下で「対テロ」戦争を発動している。双方のおびただしい民衆の血が流され、憎悪の連鎖が収まることがない。日本社会に安全の脅威が高まっているとすれば、アメリカグローバリズムへの追従と「対テロ」戦争への加担がその要因である。軍事法制は決して市民を守らない。歴史と現実に学び、想像力たくましく状況を考察することが重要である。
(4)計画では、志賀原発への攻撃が深刻な放射能汚染を引き起こすことを想定し、北陸電力に緊急停止を指示する措置を盛り込んでいる。放射性物質の大量拡散は、正に破局的な事態を招ことはまちがいない。このことは、予てより建設・運転差し止め訴訟原告団らが主張し続けてきたことである。不測の事態を怖れるのであれば、一でも早い志賀原発の廃止をこそ行わなければならない。 
3.基本的人権は尊重されるのか
(1)県国民保護計画案における「武力攻撃事態等への対処」(第3編)、「県民生活の安定・復旧等」(第4編)に掲げられている諸業務、避難、待避措置はもちろん、「平素からの備え・予防」(第2編)に掲げられている諸業務、研修・訓練、備蓄、整備、啓発などに対し、基本的人権・平和主義にもとづく信条からの良心的拒否を行った場合、それらは認められるのか、また、「正当な理由」とはどのようなものを指しているのか。県としての判断はあるのか。
(2)地域や職場において、上記自己の信条に従って拒否ないしは不参加した場合、周囲からの差別や偏見にさらされることを防ぐことができるのか。県当局としてどう対処するのか。
(3)あまねく人権保障を真剣に考えるなら、国民保護協議会に弁護士団体から委員を委嘱してしかるべきであろう。外国人の意見表明権を保障するしくみも見当たらない。どのように説明できるのか。
(4)指定地方公共機関には、新聞社は含まれてはいないものの、放送事業者が指定されている。県国民保護計画案では、放送事業者は、速やかに警報の内容を放送するものとされている。関係情報も含め、住民が真実を知る権利が保障されるのか疑問である。戦前の大本営発表を想起させる。
(5)国民保護法第4条、174条「国民の協力」第5条、174条「基本的人権の尊重」に、武力攻撃事態、緊急対処事態への対処措置の実施にあたっては、強制にわたることがあってはならず、憲法の保障する国民の自由と権利が尊重されなければならないと明記されている。
 しかし、それらは尊重されないこと、強制にわたることの裏返しであろう。別条では、土地接収、輸送、物資保管・提供等の拒否は「正当な理由」がなければ認められないとし、「一年以下の懲役もしくは百万円以下の罰金、併科」「六月以下の懲役または三十万円以下の罰金」等々の罰則が設けられている。また、行政機関や公共機関をはじめ関係職員が業務命令に反した場合は、身分、経済上の不利益処分が想定される。警戒区域への立ち入り制限や退去命令も行うことができる。歴史的経験としても、戦時下に基本的人権が保障されるなどということはあり得なかった。
4.平時における国民保護計画について
(1)計画には、「平素からの備え・予防」(第2編)として、第1章第6節に研修と訓練を、第5章では啓発を盛り込んでいる。武力攻撃や緊急対処事態を想定した訓練や啓発とは、いかなる内容のものなのか。
(2)とりわけ学校教育における啓発とはどのようなものなのか。自然災害を想定したものといかなる違いがあるのか。
(3)憲法・教育基本法にもとづく学校教育においては、戦争のための教育を行うことは、平和教育の理念に反するものである。
(4)ここで述べるのは、国民保護計画(法)が地域社会や住民にもたらす核心的な問題である。仮想敵、戦争を前提とする世界観の刷り込みと、煽られる脅威に対する不安が戦争政策を支持させ、「銃後」の体制に人々を絡め取る。地域においては、避難訓練等を通じ、不参加者、非協力者があぶり出され、住民によって「異端者、危険人物、非国民」がつくりだされるおそれがある。そうなれば先の戦前の隣組制度の時代のように、地域が再び(一層)相互監視社会に変貌するであろう。
 また、外国人の保護は表現上は規定されてはいるが、外国人への差別禁止規定が明文化されていない。仮想敵の煽動によって、在日外国人をはじめアジアを中心とした外国人に対する排外意識が高まることが危惧される。ことは県の計画がこうしたことに加担する可能性を持つことに対し、県当局自身、厳しい省察が必要である。
5.住民の力で平和憲法具現、非戦平和の地方自治・まちづくりを行うこと
(1)有事諸法もそれぞれが個別法であり、地方自治法とは並立関係にあるはずである。ところが、国民保護計画を規定する国民保護法の体系は、一元的上意下達の体系へと統治機構の再編成を強要する。これは、地方自治の独立性を侵害するものではないのか。
(2)国民保護法を含む有事法制は、市民が平和に生活する「平和的生存権」(生命・財産・自由の享受)を地方公共団体ならびに住民の自治によって保障するという「地方自治の本旨」を侵害する。 地方自治の本旨にもとづく自治体運営を憲法上要請されている地方公共団体として、国民保護計画を策定し、実施することは、自治体としての責任放棄であると同時に、自殺行為ではないのか。 
(3)地方自治体の行うべきことは、その責務の基本に立ち返り、住民を戦争の惨禍に巻き込むことがないよう、中央政府に対して有事法制の発動を容認せず、徹底した国際的平和外交の推進と地方自治の尊重を求めることである。また、百歩譲って国民保護計画なるものを策定する場合でも、今計画案のような軍事最優先の国のモデル案に追従したものではなく、住民の生存権、財産権の侵害を自治体として認めず、基本的人権を最優先し、公共用地や公共施設の軍事利用を排して、住民避難、生活基盤の確保を最優先にする独自な行動計画とすることが責任である。
(4)自治体の主体的な責務としてより重要な政策の一つは、非核平和自治体宣言を深化発展させ、政治的な拘束力をもった「非戦平和条例」(仮称)を策定し、自治体自らが平和主義を具現化する施策を展開することである。そこに、ジュネーブ条約追加第一議定書第59条を根拠に、全国的に住民運動が拡大している無防備地域(都市)宣言の条項を盛り込み、戦争非協力、地方自治・地方主権を具現化した自治体平和施策を住民自治と結んでつくりだしていくことが、今日の課題である。
 また、自治体が市民を主体にした自主的な平和外交、友好交流、足元の国際化施策を展開することによって、国境を越えた民衆同志の相互信頼が深まり、中央政府権力が戦争政策に走ることを許さない共生と連帯の砦をつくりだすことができる。これに優る国民(県民)保護はない。
 石川県当局に対し、真の人間(民衆)の安全保障のあり方について深く考察し、国民保護体制の抜本的見直しを主体的に行うよう強く要求する。 


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