市民の声をしっかりキャッチ、市政に直球勝負を挑みます。

森一敏
森かずとしサイトへようこそ
森かずとしの直球勝負
まちづくり非戦・平和福祉教育後援会リンク集サイトマップ


市議会リポート
政策
プロフィール
ごあいさつ
活動の足跡
お知らせ・予定
ホーム教育学校選択制行政視察と座談会
学校選択制導入を見送った世田谷区、北区への行政視察と座談会報告
                                                  (05.8.11) 
はじめに

 金沢市教育委員会(事務局)が、導入を目指す中学校への学校選択制。ようやく、地域住民の間で論議と関心が高まってきた。市教委は、学校選択制懇話会や通学区域審議会などで「学校選択制は、学校を活性化し、個に応じた学校選びを保障する。保護者も地域も学校教育に責任を持ち、地域ぐるみで教育力が高まる。」と繰り返しているが、先行実施地での実態調査からは、そうした評価は見えてきてはいない。推進しようとする側からそんな評価情報がもたらされるわけがないことは自明である。ならば、実際を調べてこようと思い立った。先行地東京23区中導入を見送っている3自治体の中でも、「地域に根ざした教育」を具体的に展開している世田谷区と北区の施策に私の関心が高まった。
 八月書館発行の『選ばれる学校・選ばれない学校ー公立小・中学校の学校選択制は今』によれば、世田谷の熊本区長は、03年学校選択制導入を公約して当選後の04年2月議会で、以前は学校選択制が時代の流れだと思っていたが、世田谷区の特性と地域の教育力の必要性を認識し、当面『学校選択制』は採用しないこととし、地域に根ざした教育を充実していきたい旨、方針転換を表明している。(同書16ページ)
 また、北区では、04年3月議会において、学校選択制を実施せよとの議員の質問に対し、高橋教育長が次のように答弁している。「(子どもたちの抱える教育課題を述べた後)このため、小中学校には、学校を活性化し、これまで以上に力強い柔軟な教育力の発揮と、新しい地域との協働が必要だ。そこで、北区では、学校ファミリーを構築し、一校ではできないことを複数校が協力して実践し、質の高い教育を実現していくことにした。」
 上記2区への行政視察を設定し、11日をメインに、いしかわ教育総研上瀬雅美事務局長とともに東京を訪れた。
 行政視察をきっかけに、4月の地域集会「学校へ行く!?」がご縁で、今回さらに一般保護者や現場教員の話が聞けることにもなった。あわせて以下報告したい。

T 世田谷区教育ビジョン(世田谷区教育委員会視察 8月11日午前)
応接者 世田谷区教育委員会事務局       学務課長 菅井 芳彦さん
同       教育改革・学校適正配置担当課長 泉谷 憲俊さん
同 美しい日本語を世田谷の学校から担当指導主事 直田 益明さん
1.世田谷区教育ビジョン策定の主な経緯について
 私が世田谷区の教育行政視察の動機について挨拶の中で申し述べたことを受けて、菅井学務課長が述べた世田谷区教育ビジョン策定の経緯は以下のようである。
□学校選択制導入については、議会内でも論議はずっとあった。前々教育長の時代から、学校とは地域に支えられながら運営するもの。学校を取り巻く環境、歴史、文化など、地域資源をどう生かしていくのかを基本に据えるべきと考えられてきた。地域の子どもが別地域の学校に行くことは、さびしいことである。地域の活力、元気を取り戻す方策は何か。地域と学校との信頼関係をつくるには、地域にどう学校情報を開示するか、地域が学校に意見を述べるか、そして教職員の資質をいかに高めるかが重要な課題と認識してきた。それが、今17年(05年)3月の「世田谷区教育ビジョン」につながった。
2.「世田谷区教育ビジョン」から地域とともに子どもを育てる について
 菅井学務課長に続いて、泉谷担当課長より、具体的な内容について説明があった。 
□教育ビジョンには5つの施策の柱があるが、その第一に「地域とともに子どもを育てる」が位置付いている。近くに学校があるのに信頼がもてないのは不幸なことである。世田谷でも学校が荒れた時期がある。学校の内部だけでは解決できないというのが、教訓になった。そのことは、学校が避難所となった阪神淡路大震災の経験からよりはっきりした。地域のまちづくりの拠点としての学校があり、地域の自治機能があったところが復興も早かったと聞いている。高校の避難所にも生徒がボランティアにやってきたが、地域外の生徒である。「地域と学校とは切り離せない」学校は地域のランドマークだということである。 それで我が区では、全国に先がけてH9年(1997)から全95の小中学校に学校協議会を設置した。
〔学校協議会〕学期一回開催
3つの柱・・・@児童生徒の健全育成、A地域防災、B教育活動の充実(学校支援)
構成  学校、PTA、町会、商店会、まちづくり協議会、民生・主任児童委員、児童館、青少年地       区委員会、青少年委員、同窓会、おやじの会、関係諸団体、行政、出張所、警察、消防
 地域人材の活用、地域防災の推進により、学校教育の質の向上、支援、地域への多様な効果がもたらされ、地域に根ざした学校のあり方を考え、地域ぐるみで子どもたちを育む意識が醸成されてきた。国の法改正により設置できることになった学校運営協議会は5校でモデル指定を行っているが、世田谷独自の学校協議会は、学校を地域(教育)のプラットホームと位置づけてのネットワークであり、質的に違うものである。
〔具体的なとりくみのいくつか〕
 教育活動・・地域の学校を応援する環境づくり、多くの人材がボランティア、講師に
 学校協議会に学校、PTA、地域代表、おやじの会などからなる学校協議会事務局を設置
 おやじの会・・子どもたちが卒業した後も地域のパワーとして活躍
 コミュニティ・・学校を拠点に生涯学習、教育活動に学校と協働、共同の地域意識醸成
 防災・・学校避難所・避難所委員会、サバイバルキャンプ

 泉谷担当課長は続ける。
□長年培ってきた地域と学校との関係をこわしてまで学校選択制を導入することはマイナスだ。学校選択制はいわば外圧で学校を変えることであるが、学校とは地域とともにあるものである。学校が自ら変わっていくことで信頼を得ることが大切だ。「学力」の問題で近くの学校を選ばないということにならないよう、学力保障の基礎としての日本語をしっかり学べるようにと言う意味でも、日本語教育特区にとりくむことにした。(日本語教育特区が認定され、来年度からの本格実施に向けて独自カリキュラムを作成中)
 世田谷は最大面積の区であり、人口も80数万人いる。匿名化された社会のデメリットを感じ始めている。だからこそ、このようにしてどの学校にも子どもたちが安心して通えるようにするのが世田谷の目指す方向だ。これまで培ってきた地域との信頼関係をベースにして、学校を地域教育子育てのプラットホームと位置づけ、地域の多様な人々のネットワークで学校を支えてもらうようになっている。一中学校区に小学校区二つを原則に、例えば中学校のおやじ会が学校に関わりながら9年間を通して子どもたちの成長を見守っていく。町内会で子どもの登下校に関する防災マップを作ったり、犬の散歩を子どもたちの下校時に行うなどのとりくみもなされている。
 地域間の人口動態や環境のばらつきがあるので、大規模校と小規模校が連携して教育活動を行うこともある。総合型地域スポーツクラブが始まっているが、どこの子が来ているのかが分かってきている。また、学校では教職員を少しでも雑務から解放したいと考え、学校支援ボランティアを配置している。授業のための外部との連絡、地域講師の紹介、書類事務などに協力してもらっている。先生方には、子どもたちの授業や触れ合うことに集中してもらいたい。
 人事異動で区内の学校に転勤した先生から、世田谷の子どもたちの目の輝きが違うと言われる。教職員の方も、地域を大切にしようという気持ちから、地域行にの参加するようになっている。こうした教育委員会の考えを区長はよく尊重してくれている。
3.世田谷区教育ビジョンに触れて 
 私は、「世田谷区教育ビジョン」〔概要版〕の表紙に敢えてこう書かれていることに注目したい。「『世田谷区はすべての原点は教育にある』との思いをもち、長年にわたって地域と一体となり、熱意をもって地域とともに子どもを育てる教育を実践してきました。区ではいわゆる学校選択制を採用せず、すべての区立学校が信頼され誇りに思われるよう、地域との関係を守り育てながら教育活動の一層の充実に取り組んで行きます。」明確なアンチ・テーゼの表明である。学校選択制指向と地域に根ざした教育、英語教育特区と日本語教育特区、この方向性の違いについて、市民的に大いに論議したらよい。

U 北区の学校ファミリー構想(北区教育委員会視察 8月11日午後)
応接者 北区教育委員会事務局       教育未来館長 小宮山庄一さん
1.学校ファミリー構想の経緯について
 小宮山教育未来館長は、北区で不可避となった学校適正配置(学校統廃合)の論議の中から見いだされた新しい学校像「地区教育ビジョン」、「学校と地域の新しい絆」から学校ファミリー構想が生まれたことについて以下のように述べた。
□北区はかつて軍用地が広がり、製紙業で栄えたまちで、大規模団地が建ち並ぶ町である。ピーク時は小中66校体制であったが、今は当時の四分の一から五分の一に児童生徒数が減っている。学校の適正配置について議論になり、統廃合を進めるに当たって新しい学校のありかたが論議された。それが、H9年(1997)に策定された北区教育ビジョンであり、新しい情勢をふまえて見直した「北区教育ビジョン2005」となって、現在実施されている。一方、学校統廃合に際し、新しい学校と地域の関係のありかたが論議され、学校と地域の新しい絆を育てるために、学校ファミリー構想が案出されるに至っている。
2.「北区教育ビジョン2005」の柱となる考え方
□教育ビジョンの目指すものは、(1)生涯にわたり学び合い、育ち合う学習社会(2)共に支え合い、共に結び合う連携社会(3)一人ひとりが地域社会や国際社会に寄与する貢献社会 の実現である。
 その中で学校ファミリー構想は、次のように位置づけられている。家庭、地域、学校はより一層連携を深め、協力し、支え合う必要がある。近隣複数校のネットワーク化により、学校間の連携及び学校と地域のきずなづくりをしようとするもの。北区学校ファミリーを基盤にしつつ、家庭と地域のきずなも築いていくことによって、北区全体をファミリーとしていくことが必要。それこそ、誰もが北区に家庭的なぬくもりを感じることができるまちづくりにほかならず、教育を根幹にした新しいコミュニティの創生と言える。
3.北区学校ファミリー構想
 さて、学校ファミリー構想書によれば、学校ファミリー構想の意義として、次のように書かれている。
□まず、長期的な少子化のなかで学校の小規模化が進んでいます。また近年新たな教育課題として、子どもたちの学習意欲・学力の低下が懸念されていること、直接体験・生活経験が少なくなり、人と関わる力が低下していることなどが指摘されています。より広い観点からは、地域社会の連帯感の弱まりや就労状況の変化、核家族化などから、子育て事自体に困難さを生じていることも大きな課題です。
 このような状況に対し、区立の小・中学校にはこれまで以上に力強い、柔軟な教育力の発揮が求められますが、学校の小規模化の中では、これまでのような個々の学校が単独で新しい様々な課題に対応するのは限界があります。そのため、地域の学校として同校種間や異校種間の連携・接続、地域の教育資源の活用方法などに工夫・改善を加えた北区の新しい教育を推進していく必要が生じています。
(1)学校ファミリー構想のポイント
 @一つひとつの学校の通学区域よりも広いエリアで教育の課題を考え、解決を図る。
 Aそのエリアで小・中学校とその他の機関のネットワークをつくり、課題に対応する。
 Bそのエリアで学校・家庭・地域社会の連携協力体制を整備し、北区全体の地域教育力を高める。
(2)学校ファミリー構想のイメージと設定
 区内を16の区域に分け、そのエリア内にある小・中・学校、区立幼稚園からなるサブファミリーを基本単位として設定する。私立幼稚園や保育所との連携にも留意する。これらのサブファミリーが、それぞれの地域にある町会・自治会、青少年地区委員会、児童委員、地域振興室、高校、大学、図書館或いは児童館、保健センター、教育相談所、児童相談所、さらには、教育ボランティア民間団体、警察、消防、高齢者施設などとの連携のもとで教育活動を進める。16のサブファミリーが、基盤となり、区全体の学校ファミリーを構成する。その単位での具体的な施策は、区教委として具体化させていく。
(3)学校ファミリー構想の3つのねらい
 @自己革新し続ける新しい学校づくり
 ・開かれた、結ぶ柔軟性、ともに学び合う
 A子どもたちの教育環境整備
 ・拡大された広い地域の利点を生かすこにより、地域人材の共有、多様な学習活動
 B地域の教育・子育てプログラム全体の改善・充実
 ・広域的な地域エリア内に、教育・子育てのネットワークを築く
(4)学校間のネットワークづくりにおいて期待される5つの効果
   具体的な活動と実践については、ー別掲資料参照

 私との質疑の終わりに、小宮山教育未来館長は次のように締めくくられた。「北区の場合、品川区と同等に指定校変更の要望は受け入れてきた。ですから、ネットワークを阻害するような選択制の導入は当面あり得ない。まず、この学校ファミリーを定着させることだ。」 

2.北区学校ファミリー構想に触れて
 北区は、構想が実践に移されて2年目に入っている。まず、サブファミリーでの学校・幼稚園を結んだ職員連携、合同研修、授業を通じた子どもたちの交流、PTAや地域行事の開催などがはじめられている。連携に擁する時間確保(多忙化への対処)、職員の主体的な合意形成などに課題がありそうだ。しかし、私は、教職員の発想転換もふくめ、地域に支えられ、地域と結んだ学校という考え方は、進めるべき方向だと思う。小規模化しつつある区内の学校をいかにして活性化するかという発想からのスタートであったが、ファミリー構想は、反転して学校ファミリーを通じて地域の活力を再構築するという発想にも行き着いている。子どもたちとともに大人たちの生活の基盤でもある地域のきずなを重要な教育・コミュニティ再生資源と位置づける発想は、やはり地域が、困難さを抱えて成長し、或いは生きる人々にとって回帰すべき原点であるのだと確認できる。

V 学校選択制をめぐって緊急座談会 ー品川、太田両区の方々と語り合うー
 大田区で教育の民主的なあり方を求めて市民運動をされている方との偶然の出会いから、大田区と品川区を結んで、保護者、地域住民、学校現場教員の方々と学校選択制をめぐる座談会をもつことができた。教委などの公式見解と違って、現場で起こってきた実際の動きや現状、受け止めなど、実に示唆多き有意義な時間となった。概要を以下に報告したい。
【学校選択制をめぐって緊急座談会 05.8.11 19:00から  於 品川区民センター談話室】
参加者 大田区民Iさん
品川区民Yさん、青少年委員Sさん、保護者Iさん
品川区内教員SOさん
1.品川区内教員SOさんから
 選択制が導入された学校現場では、バラツキが出ないようにがんばれ!と尻をたたかれています。「品川教育プラン21」の中で、若月教育長ははっきり言っています。「教職員が変わらざるを得ないようにする」と。保護者の立場からしたら、選べて良いように思われるでしょうが、問題がありすぎて一つひとつが思い浮かばないほどです。
 校長の姿勢によっても違いますが、選択制によって学校が追い込まれていることは事実です。例えば学校PR業務、「平均点5点アップ」、土曜授業といった学力テスト結果向上のための対策。こういうものは本来の教育活動とは言えません。
 だから、学校現場の体力がいろいろな面で弱ってきています。小規模校では特に業務が集中してきつい。私も学校HPの担当者です。早期の人事異動を求める教員が増え、早期退職者も増えています。人事異動のサイクルが早く、ベテランが不足し、若年層が半分近くの学校も出てきています。小規模校では特に業務が集中してきつい。  
 戸越台中の人気が高まっていますが、高齢者福祉施設との複合施設で、エレベーターとか温水プールが完備しているんです。教育の内容で選ばれているのかどうか。また、荒れている学校には小6の子は行きたがらないですね。グランドサイズなど部活動がらみで学校を選択するようです。一つの小学校から九つの中学校に分かれていく例もあります。となりに学校があるのに、そのとなりのとなりの学校にてくてくと歩いていく姿も見ますよ。
2.大田区民Iさん
 大田区は学校選択制を実施していないんですが、越境入学は10%ぐらいあるんです。地域間格差が大きいのが原因かもしれません。選択制をやる意味がないから実施していないんでしょうか。
3.品川区民Yさんから
 私の子どもは、ちょうど品川で学校選択制を始める前後に小学校に通っていました。保護者として率直に言いますと、学校選択制は必要なかった。実施前年度の10月に区からいきなりプリントが出ました。中学校を選択できるということで、噂が飛び交いました。デマもいっぱい流れました。はっきり言って、親のエゴ、親の仲良しで学校を決めるみたいなこともありましたね。それから、先生方はものすごく忙しくなりましたよ。私の子どもが通う中学校は、若月教育長の子飼いと言われる校長でした。地域に開くといいながら、実際は私たちには閉じてしまった。先生たちの帰宅時刻が遅くなりましたし、土曜日は半分、日曜日も三分の一ぐらい出勤するようになりました。顔つきまで変わりました。よく過労死しないものだと不思議に思うくらいです。
 子どもたちもぴりぴりし出しました。中3では塾通いが当たり前の雰囲気で、担任の先生が「塾に通わせないんですか」と言うほどでした。確かに若い先生が多く、そんなシステムに問題意識がないように見受けられました。
 学校公開に参加したら、子どもが座っていられないほど教室が荒れているのを見ると、子どもは行かないですね。
4.品川区内教員SOさんから
 状況によって、努力によって持ち直せる場合とそうではない場合があります。選ばれることでの競争をねらっているんです。特色を出せということで、例えば夏休みに家族と遊んでみよう会を企画したり、人気取りに英語教育を打ち出してみたり。要するに教育長は、校長を信頼していないんです。また、保護者に対しては選ばせたんだから自己責任、保護者の方は、選んだんだから学校は何をしてくれんだという意識になっていく。PTAも巻き込まれて、子ども(の希望)が集まるように、学校情報誌を作らされるというようなこともやられています。
5.品川区保護者Iさんから
 私は小学校に選択制を導入することは反対ですが、成長し判断できるようになった中学生には賛成なんです。好条件のハードを持つ学校で学ばせてやりたいと、親としては思うんです。中学生なら、どこの地域でもやれるのではないかと思います。
6.品川区青少年委員Sさんから
 望んでいない子が学校に来ているという場合があります。学校は評判を上げるために地域行事をやっている面も出ています。子どもによっては、地域が違ってもつながりを積極的につくれる子とつくれない子がいます。地域の情報がなかなか伝わりにくいなと感じています。それから、選ばれない方の学校に通っている子どもはどんな意識なんでしょうか、気になります。
7.品川区内教員SOさんから
 品川にいると、学校選択制を見に来る人が多いんです。でも、「うちでは無理だな。」という人が多い。品川区は比較的小さなエリアなんです。
8.品川区保護者Iさんから
 金沢の面積が東京23区ほどだということを聞きまして、そんなに広いところで全域で学校を選ばせるというのは、驚きました。
9.品川区民Yさんから
 金沢では、地域コミュニティがしっかり機能しているということで、小学校での導入をしないということですが、その地域コミュニティがとってもうらやましいと思います。それをこわすようなことはやめた方が絶対にいい。
10.品川区内教員SOさんから
 「特色のない学校はありません」ということになっているんですが、私は「特色」のチェーン店化だと言っています。どこも国際理解(英語)、習熟度別授業、土曜授業。
11.品川区民Yさんから
 確かに「特色」が横並びになってきましたね。
12.品川区内教員SOさんから
 そうです。ですから、少数かもしれないが、選んだつもりが、実質的には選べてないということになりかねない。その学校の「特色」に価値を置かない子には、実質選べなかったということと同じになるんです。それでも、選んでしまったら後は選んだ者の自己責任にされます。
13.品川区青少年委員Sさん、品川区民Yさんから
 学校選択制になって、子どもたちが先生とふれ合う時間が少なくなってきたように思うんですが。
14.品川区内教員SOさんから
 子どもとだらだら話し込むような時間、子どもを知る働きが、学校現場から失われています。そして、こういうプログラム化した教育に嫌気をもつ教師が増えています。
15.品川区保護者Iさんから
 そうですかあ。それでも、学校が選べるというので、保育園ママたちは、仕事の合間によく学校のホームページを見ていますよ。

論議はつきないが、会場使用の時間切れとなり、後は食事しながらの交流会が延々続いた

W 視察を終えて
 一ヶ月前に終えた視察を振り返りながら、ここ金沢において、まだ語り尽くせていない学校選択制の重要な論点があることを痛感する。行政が出す推進の情報には、実態が隠されている。
 降って沸いた衆議院議員選挙の最中、9月議会開会の時期を前後して教育委員会はこれまでの説明不足の批判に応えるように、矢継ぎ早に市民フォーラム(「通学区域の弾力化を考える市民フォーラム」ー子どもの個性と自立を育む中学校学校選択制ー)、市PTAの7ブロックでの説明会を開催している。これらは、説明と論議の場と言われるが、実質的には異論の封じ込め、説明の既成事実づくりと言って言い過ぎではない。発言の自由すら保障されていないと、管理職も含め学校現場では声が漏れてきている。そこでは、世田谷区、北区が、地域に根ざす教育と学校選択制は両立が難しい、疎外の危険性すらあると認識している先行実施地での実態について、責任ある説明は未だに為されていない。
 国の教育改革に規定されての施策であるという限界が、両区にはあるのは当然である。しかし、直接的な競争原理に公教育を委ねてしまうことが、地域という生活と育ちの場から子どもたちをバラバラに切り離してしまうことに対する危惧を強く感じさせられた。  学校現場の教育権を尊重し、協働の意識で地域が教育に関わるならば、学校を拠点として大人も子どもも問わず、つながりという教育資源が地域に生まれる。功罪相半ばする面のある金沢だが、そのコミュニティがうらやましいと言われる。これをいかに教育に生かしていくのか、学校選択に踊らされる暇があったら、みんなで考えるべきである。 


ホームへ戻る
△ページの先頭へ
Copyright(C)森かずとし事務所.All Rights Reserved.