2.樹木害虫防除について
都市樹木害虫防除検討会の会議録によれば、今2007年度の防除にあたって、委員間でかなり激しい議論が展開されたことが伺われる。初期段階の発見と効率的な防除を行いたいとする市の新たな方針が示されたことに対し、捕殺防除を基本とすることが継続されるのかどうかをめぐる議論だ。もし、「効率的な防除」が農薬散布に自由度を与えることであれば、環境汚染とりわけ環境ホルモンによる人体への悪影響、化学物質過敏症の発症リスクを高めることになる。 |
森議員 |
まず、今年度の樹木害虫防除の具体的な方針について改めて尋ねる。そこでは捕殺防除がどのように位置付けられていたのかを聞く。 |
山出市長 |
平成18年にアメシロが大量発生し、捕殺防除では対応出来ず、農薬の散布量が増大した。それで都市樹木害虫防除検討会に対応について諮った。早期発見と初期防除を徹底させることで大量発生を抑えることが方針とされた。今年度は捕殺防除を基本としながらも、初期の段階で効率的に防除することを方針としている。これは、これからも基本方針としていく。 |
森議員
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今年1化期までの散布量データによれば、合計散布量は増え続け、一斉散布を行っていた2000年度の一割前後という状況になっている。今年度1化期では、町会関係では前年比の5.17倍、市有施設では3.32倍で、とりわけ市有施設分は対2000年度比48%の水
準にまで達しているわけだ。この散布量の増加傾向をどう受け止めているのか、また、来年度の具体的な防除方針がどう検討されているのかについても答えよ。 |
坂戸都市整備局長 |
1化期での散布量の増加は、チャドクガの発生が多く、防除を申し込む町会が増えたのと、市有施設での動力噴霧器の使用によって増加したものと考えている。都市樹木害虫防除検討会において今年度の結果を検証し、新たなとりくみとして、発生箇所の情報共有、動力噴霧器使用の基準づくり、防除従事者の農薬暴露防止策の実施などにとりくむこととしている。 |
森議員 |
多くの子どもたちで賑わう21世紀美術館の害虫駆除には、どのような配慮を加えているか。 |
藤田都市政策局長 |
捕殺による防除が出来なかったことが二度、その際に薬剤散布を行った。子どもたちへの影響を最小限にするために、散布は早朝に短時間で行った。芝生には害虫が発生しなかったので、散布はしていない。 |
森議員 |
地域によっては、薬剤散布を求める圧力が未だに高いとも側聞する。薬害や化学物 質過敏症に対する意識啓発は、十分に効果を上げてきているのか。 |
坂戸都市整備局長 |
防除に関する班回覧チラシを回覧し、地域の防除協力者、防除事業者を集めて研修会を行ってきた。今年は、高枝切りばさみの注文がこれまでの3倍になっており、捕殺防除の意識は徐々に高まってきているものと受け止めている。 |
森議員 |
潜在的には10%程度存在していると推計されている化学物質過敏症患者の実態は、本市に於いてどの程度把握されているのか。防除作業従事者の暴露防止対策も重要だ。環境ホルモンの問題がこれほど注目され、化学物質対策が急務とされている今日、医療・保健機関とも連携し、発症者の実態把握、専門相談、治療にわたって、積極的な支援施策が講じられるべきである。この件について再度見解を伺う。 |
横山福祉健康局長 |
化学物質過敏症については、その名称や定義が定まっておらず、診断しがたいとの意見がある。従って、患者の把握はしていない。また実態把握も考えていない。個別に相談があれば、診療機関を紹介している。 |
廣田市立病院事務局長 |
診療部門は設置してはいないが、微量の化学物質による症状に対しては、患者の状態に応じて処置を行っている。 |
森議員(再質問) |
化学物質過敏症に関して、認識が一般化していないという状況はあるかも知れないが、国内に於いて拠点として研究や治療が積み重ねられている機関があることも事実だ。実態の把握は待っていてもできない。見過ごされている患者がいるのではないか。積極的な実態把握を行ったらどうか。もっとアンテナを高くして欲しい。 |
山出市長 |
アンテナが低いという指摘であると受け止める。実態調査より前に、研究治療の領域の動向について情報を得てみたい。 |
森議員 |
住民の樹木害虫への過剰な反応を防止するには、幼少の頃から昆虫等に親しませることが有効であるとも指摘されている。生態系や虫を理解する教育を行い、不必要な農薬散布を排除する市民意識を育てることも大切だ。教育委員会とも連携して、学校現場に資料提供を行うなどの支援を提案してきたが、検討の状況はいかがか。 |
浜田環境局長 |
小さい子どものころから、川や森、里山で生き物と触れ合うことが、生命の大切さや命を慈しむ心を育む上で大切である。ひいては、害虫防除や農薬使用を控える意識啓発にもつながるものと考える。市としては、生き物観察会、ビオトープの設置、ほたる調査、サケの放流などの事業に教育委員会とともにとりくんでいる。 |