1.国民保護計画の実施に関して
8月の原水禁長崎訪問で、4月に凶弾に倒れた伊藤一長前長崎市長が、国民保護モデル計画に示された政府の核防護対策では市民に責任を持てないとの理由から、長崎市国民保護計画から核攻撃への対処を削除していることを知った。全国の策定未了市町村は、7月時点でも、唯一地上戦を経験した沖縄を中心に73、4月の消防庁まとめでも、未着手が13自治体にも及んでいる。法定受託事務と位置づけられているとは言え、憲法の平和主義に立って、住民の平和のうちに生きる権利を保障しようと、主体的な判断を行っている。
国の方針通りに国民保護計画策定を終えた本市は、来る11月17日に国民保護フォーラムを開催する予定と聞く。本フォーラムを含め、「平素からの備えと予防」としての啓発活動のあり方について、以下、質問する。 |
森議員 |
講師となる志方俊之教授は、著書で「一億総玉砕による国体護持」を唱えたかつての大本営のような言説を行っている。
このような講師の人選は本市の裁量によって行われたのか。また、地域住民の代表者を前に、どんな教示を期待されているのか |
山出市長 |
国民保護フォーラムの人選に当たって、防災、国民保護両面にわたって精通し、地域特性を熟知している方を市が人選し、依頼した。講師は、金沢市出身であり、危機管理分野の専門家である。金沢の地域特性を踏まえた国民保護をはじめ危機管理のありかたについて、市民の理解が深められることを期待している。 |
森議員 |
本市の主催のもと、国民総決起による国家防衛の考え方を持つ志方俊之教授が講演することは、国民保護という根本趣旨と大きく矛盾し、本市平和都市宣言の理念から逸脱し、ひいては、自治体の憲法遵守義務にも反するものではないか。整合性はあるのか。 |
山出市長 |
市民の安全・安心、平和が万が一脅かされた場合に、どう対処するかをフォーラムで広く知って頂くことは、本市の平和都市宣言を侵すものではない。このこととは別に、国際交流を積極的に展開し、近隣諸国との友好関係を強めるなどして、平和に貢献する努力を一層推し進めていきたい。 |
森議員 |
今後の啓発の中でいかに国際人道法を学ぶのか、市当局ならびに教育委員会の考えを聞く。 |
山出市長 |
国民保護法では、国際人道法の厳格な実施が謳われている。ジュネーブ条約にもとづいて、戦闘地域と避難地域を識別するために、特殊標章を携行することとなっている。特殊標章は、近日中にできあがってくると聞いている。消防団、自主防災組織に対し、研修会等で周知していきたい。 |
石原教育長 |
学校教育においては、人権尊重の精神をすべての教育活動で育んでいる。社会科や総合的な学習の時間を通じ、国際紛争や難民の問題などをとりあげ、平和の大切さを学んでいる。 |
森議員 |
講師の人選も含め、国民保護フォーラムを一旦白紙に戻し、そのあり方を再検討することを求める。 |
山出市長 |
フォーラムは、国民保護に対する理解を深め、その普及啓発のため質疑応答の場で、様々な意見を聞くことにしている。 |
森議員
(再質問) |
市長は平和愛好家であると認識している。ゆえに、度々質問している。危機管理というのが危うい。自然災害には備えなければならない。しかし、戦争による被害は人災である。攻撃されることを前提とする対処は、武力攻撃をどこから受けるのかを人々に意識させる。それが、仮想敵国や敵愾心を浮かび上がらせることになると危惧している。 世界はこの間の武力による平和を見直し始めているし、アジアは緊張緩和の時代に入っている。フォーラムの場が、これらに逆行する、仮想敵を煽り、緊張を高めるような場にならないようにして頂きたい。市としての十分な配慮を求める。 |
山出市長 |
国会で議論し、決定されたことは尊重しなければならない立場だ。はじめに人を選別することには消極的である。広く意見を聞くことが大切である。そのために質疑応答の時間を設けていく。理解して欲しい。 |
森議員
(再質問) |
国際人道法の適用は、特殊標章ばかりではない。国民保護啓発は、平時からの備えと予防に位置付いている以上、啓発の内容は、いかに国際間の緊張を高めず、平和裏に友好関係が増進できるか、そのことに住民も責任を持つ。その精神が国際人道法を学ぶということだ。国際人道法の根元的な価値観を子どもたちも含めて住民も十分理解する機会が保障されなければならない。国際人道法の扱いについて、一歩踏み込んで研究してもらいたい。 |
山出市長 |
国際人道法が非常時に十分機能するのか懸念を持っている。しかし、日頃からの平和のために国際人道法の尊重という視点で周知する必要があるとのご趣旨とうけとめさせて頂き、努力して参りたい。 |