1.金沢市新農政プラン「金沢の農業と森づくりプラン」に関して
昨年6月議会、「経営所得安定化対策等大綱」の下で、小規模農家の営農存続に危惧があるとする私の質問に対し、山出市長も心配があると前置きし、「小規模な農家や農地が多く、その集積と集落営農組織に向けて農家の理解が得られるよう、ひざ詰めで話し合っていきたい」、「それぞれの農家は地域の農業維持に重要な役割を担っている。もれた農家への対策は、国の議論の行方を見ながら農家の意見も聞きながら策定したい」と答弁された。
あれから一年、4月から国は品目横断的経営安定対策に移行し、本市は新農政プラン「金沢の農業と森づくりプラン」に基づく新たな農政をスタートさせた。 |
森議員 |
認定農業者への加入ならびに集落営農組織の設立はどのような進捗にあり、本市として農家や営農組織への働きかけをどのように行ってきたのか。 |
宮島農林部長 |
認定農業者はこの一年で13経営体増加し、173経営体に、集落営農組織は末町で新たな組織が設立され、22組織となっている。さらに、二つの集落で組織化に向けて取り組みが行われている。農協や関係機関と連携し、新しい経営対策や認定農業者に対する支援制度の周知、集落営農についての意向調査、研修会の実施など、担い手の掘り起こしに取り組んできた。 |
森議員 |
認定農業者や集落営農に該当しない農家の農業経営にどのような影響が予見されているのか。 |
宮島農林部長 |
規模の小さな農家も、地域農業の担い手として重要な役割を果たしている。規模要件で該当しない農家がでれば、農家が規模を縮小し、農業離れが進むことがあれば、地域の農地保全や集落営農に影響が及ぶものと考えている。 |
森議員 |
農業者の間からは、集積に条件の良い農地の食い合いが起こる、品目横断による価格保障の補助金ではインセンティヴが低く、認定農業者や集落営農組織への農地の集積は、今後も容易ではないとの厳しい声を聞くのも事実だ。国の経営所得安定化政策に付き従うだけの農政で果たして未来はあるのか。手をこまねいていれば、離農による耕作放棄、荒廃を促進させ、食糧自給率45%達成はおろか、食の安全安心、環境保全など重要課題の解決はおぼつかないと、危惧の念が全国に広がっている。本市でも、地域に密着した地道な施策によって、地域の農業力を強化する独自の方向性が求められる。新農政プランに盛り込んだ策定の趣旨、とりわけ金沢の独自性はいかなるものか。 |
山出市長 |
農家の高齢化による担い手不足への対策、食の安全、消費者ニーズの多様化など農業を取り巻く環境は厳しいが、農業大学校、加賀野菜のブランド化、地場産品の加工産業の育成、地産地消の推進など、独自施策を多数盛り込んだ。 |
森議員 |
地域農業を支えてきた3600余の農家のうち大部分は、規模要件に満たない小規模農家だ。制度上の所得保障のないまま存続しつつ担い手になっていくためには、小規模農家への独自の具体的な支援が是非とも必要である。その方策は。 |
山出市長 |
規模の小さな農家はできるだけ集落営農組織に参加してほしい。参加が難しい農家には、農業協同組合を主体に、基幹作業の請負をすすめていきたい。 |
森議員 |
農業基盤の改善によって、その生産性の向上、効率化を支援することも重要だ。小さな耕地も大切にし、各地域の耕地や利水施設などの農業基盤整備に積極的に予算を振り向けよ。地域に出かけて実情や要望を把握し、それらを生産基盤整備計画に反映せよ。 |
山出市長 |
生産基盤整備は、市内全域から要望がある。規模の小さいものについても、圃場整備や農道、水路の整備など、引き続き市単独でも行っていきたい。 |
森議員 |
地域住民や里山保全のNPO活動も含め、市民活動も活発化している。これら歓迎すべき主体的な動きにどう応えるのか、また、プラン全体の推進に、関係諸機関や団体との連携の実をいかにして上げるのか、農林行政のリーダーシップを期待する農業者の声を聞いている。プランの進行に、スリム化を続けてきた農林部がいかなるリーダーシップとパートナーシップを目指すのか。 |
山出市長 |
本市農業をとりまく環境の変化に対応するために、今年度推進体制を整備した。これまでの国の政策がいささか護送船団方式であって、今後は農家も気概が必要だ。跡継ぎをどうつくるかが最重要課題だ。市としても、担い手育成、金沢ブランド、森林再生など重点施策の推進に職員一丸となって、これまで以上に覚悟をもって取り組んでいきたい。
農業協同組合、流通加工業界、市民、企業の参画を求め、市民上げて課題に取り組む。難しいことではあるが、努力しなければならない。 |
森議員
(再質問) |
市の農林行政の顔が見えてこないとの地域農家の声があるが、そうした意見を踏まえて、どんなリーダーシップを発揮するのか、再度伺う。 |
山出市長 |
安原地区のように、芸術作品のような農作物をつくっている地域がある。そうした地域を支援によって広げられたらと思っている。米作りの地域では難しいが、自分でやるという気概が大切だ。護送船団方式の中で甘えがあったとしたら、意識改革も必要。繰り返しになるが、市としても相当の覚悟をもって取り組んでいく。 |
森議員 |
4月から政府間交渉が開始された日豪間経済連携協定(EPA)で、仮に輸入関税の撤廃に応じることになれば、重要産品とされる米、麦、牛肉、乳製品などの全面的な輸入自由化に結びつきかねないと危惧されている。農水省自身も、日豪EPA協定だけで国内自給率が10%低下し、全面完全撤廃ともなれば、国内農業生産額の4割にも当たる3兆6000億円が失われ、375万人が失業、食糧自給率は12%にまで下落するとショッキングな試算を経済財政諮問会議に提出している。産品構成や数字の違いこそあれ、本県本市の農業者にも深刻な打撃を与えるものと考えられる。先行きの不透明さを抱えつつようやく新農政に移行しようとするこの時期に、拙速に日豪EPA協定を締結すべきではない。農業の公益性に鑑みた市長の所見を。 |
山出市長 |
重要品目である米、小麦、牛乳などの取り扱いについて交渉中と聞いている。もし、関税の撤廃となれば、本市への影響も大きいと認識している。全国市長会として、国に国内農業や地域経済への影響に十分留意し、対応するよう要望してきた。引き続き関心を持って注視していきたい。 |