1.電磁波による健康被害の防止について
「21世紀の公害」とも呼ばれる電磁波の健康被害に、住民が関心を寄せ始めている。電磁波問題がこう呼ばれるのは、これまでその危険性があまり認識されないまま、21世紀は暮らしのオール電化、携帯電話などに代表されるIT化が一層進み、電磁波による健康被害が表面化すると考えられているからだ。
こうした中、2007年6月に、WHOが極低周波電磁波の「環境保健基準」を発表した。慢性影響に対しては、3〜4ミリガウス以上の長期にわたる電磁波被曝が引き起こす健康リスクは、「懸念を抱き続けるには十分強固」であるとし、電力、政策立案者、国、政府等に対し、予防的措置としてリスク研究の継続、低コストの予防法の実施、十分な情報提供によるリスクコミュニケーションと利害関係者全員による政策決定などを求めている。世界の趨勢は、リスクの可能性が考えられるならば、予防原則にたち、危険性を低減させるための対策を講じるというものだ。 |
森議員 |
経済産業省原子力安全保安院のワーキンググループが検討している日本初の電磁場規制値案は、WHOの評価とはかけ離れ、50Hzで1000ミリガウス、60Hzで830ミリガウスという極めて甘いもので、電気事業界寄りであると関係市民団体等から規制値の見直しを強く迫られている。日本の状況は世界の趨勢から取り残されている。
そこでまず、市長にお尋ねする。電磁波が引き起こすとされる健康被害に対応しようとする世界の流れをどのように受けとめられるか。 |
山出市長 |
電磁波の健康問題に関する議論は、だいぶ以前市議会でもあった。WHO、国も研究を行っている状況と聞いている。科学技術も進展し、解明も進むと思われる。引き続き大きな関心を寄せていきたい。 |
森議員 |
次に、以下、私なりの提言として申し上げ、見解をお尋ねする。
その第一は、福祉健康部門や教育環境部門、さらには都市整備部門、企業局なども連携し、電磁波問題に関するリスクコミュニケーションの体制を整えていくこと。また、市庁舎内の事務環境から都市計画や住宅政策、さらには電磁波過敏症対策のような医療保健分野の対応も含め、幅広い課題があると考えられる。庁内横断的な政策検討体制の構築を提案するが。 |
山出市長 |
庁内横断的な政策検討体制を言われたが、科学的技術的な事柄であるので、国が一義的に判断対処すべきものと考えている。国の研究動向を注視していきたい。 |
森議員 |
具体的な対策として、本市市域に於いて、送電線に何らかの電磁波漏洩の低減技術が採用されているの。とりわけ、学校や保育所に近接する高圧送電線への対策について早急に北陸電力と検討する必要があると考えるが。 |
丸口都市政策局長 |
北陸電力に依れば、高鉄塔化、地中化を採用し、健康被害の生じない状態になっているとのことである。現在、国の研究が進められているので、北陸電力と具体的な協議を行うことは考えてはいない。 |
森議員 |
本市の景観政策として無電柱化事業がある。課題は、地表に設置されている変圧器が、常時60〜100ミリガウスの電磁波を放出し、通行者がその脇を気づかずに行き交っていることだ。変圧器に人が不用意に触ったり、近づいたりできないように対策を講じる必要がある。 |
出口土木部長 |
北陸電力より、変圧器からの電磁波は低レベルであると聞いている。従って、変圧器への対策は講じるつもりはない。
軒下配線など良好な景観形成のための無電柱化事業の検討に当たっては、電磁波問題も含んで安全対策を検討していきたい。 |
森議員 |
電化製品に取り巻かれた現代の日常生活の中で、いかにして電磁波被曝を避けるかが重要だ。市民啓発と教育も必要だ。電磁波の健康影響をより受けやすいのが子どもたちだ。学校において学びの機会がつくられるよう学校現場と連携すべきだ。
その学校に於いては、電磁波被曝リスクへの配慮を十分に行うことだ。授業で子どもたちが使用するパソコンから放出される電磁波への対応。通信波が飛び交う無線LANは有線化する。電磁波漏洩が小さな機種の導入、開発が進む電磁波遮蔽用品の利用など、可能なところからの実施を検討すべきだ。 |
石原教育長 |
電磁波については、高校の物理の授業に出てくるが、小中学校の学習指導要領には位置づけがない。学校生活の中での配慮は必要と考える。子どもの健康に関することには、常に関心を持っている。健康影響については、国の動向を注視していきたい。 |
森議員
(再質問) |
この問題を考えるときに思い起こすのが、近年ではアスベスト問題、さかのぼれば水俣病の辿った経過だ。因果関係が認められたときには、もう既に取り返しの付かない状況になっていた。欧米の「予防原則」もそうした教訓に基づいている。国の研究動向を言われるが、今出そうとしている国の規制基準は、WHOの価基準とかなりの開きがある。
地方分権について市長は素晴らしい答弁をされた。地中化では被覆電線であるケーブル化し、三線を寄り合わせて埋設すれば電磁波の漏洩を十分に抑えられることが技術的に実施されている。待ちの姿勢で良いのか。地方分権の立場に立って、金沢市が率先して対応すべきだと思うがどうか。 |
山出市長 |
高度に学術的で専門的な分野のことである。従って国が第一義的に行うべきものと考えている。ただ、市としても無関心であってはならない。幸い本市には高等研究機関もあるので、まずは関係を密にして電磁波問題に関する自らの力量を高めたい。分権とは違って軽視しているということでは決してない。 |