1.浅野川水害について
7月28日に発生した浅野川洪水によるすべての被災者の方々に、まずもって心からお見舞いを申し上げる。また、救難活動、災害復旧と生活支援に当たってこられた地域住民、本市職員、消防団関係者、災害ボランティアの方々のご奮闘に敬意を表する。
さて、県は、第三者委員会に、この浅野川洪水について、今後の詳細分析に含みをもたせつつも、「最大時間雨量138ミリ、3時間雨量251ミリ、3時間流域平均147ミリの降雨は、観測史上最大で200年確率の『局所的豪雨』であった。そのために短時間に想定を上回る洪水が発生し、堤防を越えて氾濫に至った。」とのまとめを報告しています。被災に対しては、急激な水位上昇で水防対策が間に合わず、局所的豪雨に対応した新たな河川管理と水防体制が必要としている。これでは、不可抗力の天災であって、県の河川治水対策上の責任は問えないと公言しているように聞こえる。
果たして、浅野川水害は、想定を超える降雨による天災と片づけてよいのか、ここに水害発生の原因分析を行う上での重要な議論がある。
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森議員 |
浅野川水害をどう見るのかという点に関わって。
浅野川と犀川全体の流下能力の58%の出水は、浅野川と犀川を放水路でつなぎ、一体的な治水計画で臨んでいる県の計画からすれば、想定を大きく越えるどころか、想定に十分収まる出水でしかなかったということになる。そもそも最大雨量の根拠とされる芝原橋観測所の3時間雨量データが、近距離にある医王山観測所の2倍以上、犀川上流の本市上寺津発電所での観測データの4倍以上の数値であるのは、不自然さを感じさせる。測定環境や精度に問題がなかったのか、検証は行われているの。
今回の洪水が、本当に想定外のものであったと言えるのか、改めて所見を伺う。 |
山出市長 |
「異常・想定外」も、あちこちで何度も起これば、もはやそれは異常ではなく、尋常ということになる。当たり前のこととして、施策を考えねばならない。原点に帰って、古い常識を棄て新しい常識をもって国に対しても主張していきたい。 |
出口土木部長 |
県からは、測定環境は適切で、精度も確認されていると聞いている。県の第三者委員会では、200年確率の局所的豪雨であったとの分析が示されている。今後の有識者の結論を待ちたい。 |
森議員 |
次に、河川管理上の責任について。
天神橋基準点で、堤防余裕高ぎりぎりとなったものの越流することなく流下した水が、河川改修を終え、同様の流下能力をもつとされる下流の浅野川大橋下手から応化橋までの地域でなぜ越流することになったのか。
生き物である河川が日常的に運び込んだ土砂が堆積し、河床を押し上げ、流下能力が計画よりも低下していたのではないか。
生命線とも言える田上地区から犀川大桑地区に分水する放水路が、計画通りに機能したのかどうか。最大分水250立方メートルの放水も可能だったのではないか。
天神橋と浅野川大橋間にある二カ所の切り欠きへの角落としが間に合わなかった問題では、関係町会住民が、損害賠償を求めて県に嘆願書を提出されたのは当然のことだ。
河川管理者としての責任について、第一義的には県だが、本市にも免れ得ないものがあるのではないか。これらについて見解を聞く。 |
山出市長 |
市が直接関わるわけではないが、流域市民の安全安心に大使、水防、情報伝達、県と役割分担する内水に責任を有する市の立場から、県に申し上げていきたい。 |
森議員 |
上流域治山状況の把握について。
今回の水害被害では、県が75年前に設置した砂防ダムが決壊するというあってはならない事故が発生した。湯涌地区では、砕石場や道路などの開発で森が伐採されてきたことに不安を持っていたという地域住民とも出会った。この砂防ダム決壊と土石流発生との因果関係、上流側にある砕石場の防災対策、行政の監督は行き届いていたのか。こうした治山と防災施設の管理上の疑問点について、所見を伺う。
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出口土木部長 |
県によれば、防災施設は県が管理し、事業者の施設は県の担当部門が適切に監督を行ってきたと聞いている。原因究明は第三者委員会に砂防部会が設けられているので、そちらで検討されるものと思う。 |
森議員 |
労災や刑事責任の究明について。
今回の水害被災には、多くの官民の関係職員が動員され、被災状況の把握や緊急復旧作業、避難所開設などに従事し。その際にけがや過労などの労災事故は発生していないのか。また、災害における過失責任や人為的な犯罪性の有無等の捜査究明は、警察行政の任務であろう。今日段階で捜査の動きがあるのか。 |
東元市民局長 |
金沢労働基準監督署、中警察署にも確認しているが、労働災害があったとは聞いていない。また、警察による捜査も行われていない。 |
森議員 |
被災者救済と復旧支援について。
新設する本市独自支援金制度が1500軒近くの床下浸水世帯には適用されないことなど当該住民の思いとずれがあることや、仮設住宅に入居される被災者の住宅再建をどのように支えていくのかなど、今後に課題を残している。また、台風シーズンを迎えて、二次災害の引き金になりかねない渓流堆積土砂への対策が急がれる。本格復旧に向けての決意を改めて伺っておく。
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山出市長 |
被災者の生活支援は大切だ。生活再建のために無利子の融資制度を設け、国の支援が受けられない床上浸水被害宅には、市独自の支援金制度を新たにつくって支援したい。仮設住宅に住まいされる方々には、崖地の防災対策を行って、一日も早く自宅に戻れるようにしたい。河川に堆積した土砂は、県と一緒になって除去を進めたい。 |
森議員
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洪水防止対策の抜本的な見直しについて。
100年確率以上の降雨を想定するならば、河川改修をこそ急がなければならない。犀川下流域赤土大橋付近の河川改修によって、辰巳ダムがもたらすとされる296立方メートルの実に3.6倍の流量が確保できる。この地点での辰巳ダムの効果はわずか20〜30センチにすぎず、投資の優先順位が違ってはいないか。
また、JR鉄橋の架かる本江町付近は、鉄橋脚と新幹線高架用の橋脚一本が川幅いっぱいに川を遮っている。左岸側の堤防高が低いのが見てとれ、その上、その下流には木が茂る大規模な中州が発達している。ここでも計画高水に対応した流下能力が本当に確保できているのか調査が必要だ。
さらには、市民団体の調査によって、浅野川下流域東蚊爪地内の堤防にパイピング現象が発見された。両河川とも、現状の流下能力の拡大と、既に築かれている堤防の状態を徹底して調査し、必要な対応を急ぐことが喫緊の課題だ。具体的には全域で発達する中州の浚渫、河床の掘り下げ、堤防の徹底調査です。また、つり構造の橋への掛け替えを含めた橋脚対策も検討すべきだ。河川管理に対する国庫補助の拡大を含め、大胆な発想に立って安全対策を国県に声を大にして求めよ。
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山出市長 |
浅野川と犀川の河川整備は、辰巳ダム建設と一体的に計画されており、長い時間がかかる。それゆえに浚渫は重要だ。国へ河川の浚渫に対する国庫補助の新設、中小河川の維持管理への補助制度を求めていきたい。 |
森議員 |
本市の総合治水対策に関して。
前提となる想定時間雨量を50ミリから55ミリからかさ上げしておく必要がないか。
都市の中に雨水貯留機能を回復、遊水池の確保、農地・森林の保全など土地利用のあり方まで全般にわたる検討を鋭意進めよ。
その際に、有識者や職員ばかりではなく、地域住民の生活に根ざした知見を十分に吸収し、水害防止の地域力を治水対策に生かせるよう、住民参画の体制を確立せよ。 |
出口土木部長 |
想定雨量は、当初50ミリだったのを55ミリにかさ上げした。これ以上のかさ上げは難しいが、今後関心を持っていきたい。
総合治水対策の年度内の条例化にあたっては、パブリックコメントなどで住民の意思を反映させていきたい。 |
森議員
(再質問) |
県の第三者委員会には、土木部長が参加していると聞く。一回目の会合が開かれたところだ。専門家集団というなら、現地に入って徹底的に調査し、独立機関としての責任をもって原因究明をやってもらいたい。想定外の局所的豪雨としているが、降雨量の測定は適切に行われたか、出水量は根拠づけられるのか、河川管理等問題がなかったのか住民の疑問に答えられる検証が不可欠だ。再度見解を聞きたい。 |
山出市長 |
第三者委員会に参加する土木部長には、言うべきことはしっかりと言ってほしいと指示している。第三者委員会としてご趣旨の点は対応されるものと信じている。 |