生きるを支える

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基本的人権保障のために政治行政がある
「金沢国際地方政府宣言」ー第1稿ー(市民の政策研究会編)より

前 文

~金沢に国際的な平和・人権規範を体現した地方政府を打ち立てよう~

  ここで私たちが言う「金沢国際地方政府」には、地方自治体である金沢を、日本国憲法のみならず、平和と人権を獲得するために長年にわたって人々が苦闘し、結実させてきた国際規範を体現する地方政府として発展させようという意味を込めている。また、そもそも、地域や地方とは、国家の成立以前から存在しており、本来的に国際に通じるものであると捉えている。

  さて、21世紀の日本は分権の時代だと言われる。「地方自治の本旨」を第92条に規定する日本国憲法下においても、中央集権から地方への分権は遅々として進まなかった。1999年に地方分権一括法が制定され、21世紀となった今日まで、数次の分権改革一括法が相次いで成立してきた。これらにより、数百という単位の法律が改正され、かつて「三割自治」と揶揄された地方自治体の権限は確かに拡大してきた。

 しかしながら、この流れが、国家体制の効率化(スリム化)を超えて、真に地方の自治権を拡大し、主権者である住民の自治を保障するものとなりうるのかについて、私たちは懐疑的である。それは、今日、3.11福島第1原発過酷事故を経験しながら、被災地域住民の意思に反して、事故原因の究明も被曝防止対策も生活再建もおざなりであることひとつをとっても明らかではないか。原発立地住民はもとより、国民的な脱原発の声を顧みない原発再稼働が推進され、沖縄をはじめ全国の米軍基地の縮小撤去の民意は無視され、基地の拡大と機能強化が進んでいるのが現実である。これらは、国策の名の下で、依然として国家(中央政府)が事実上決定権を握り、地方の住民がその権力の下で忍従を強いられる構図は変わってはいないことを示している。さらには、閣議が、集団的自衛権行使容認へと憲法解釈を変更したことにより、私たち生活のすべての領域で、あらたな国家中心主義が強まる懸念さえ生じている。今日の「国と地方の役割分担論」で、こうした問題を解決できるとは思えない。

 そこで、私たちは、市民のすべての生活領域に関わるこれからの金沢のまちづくり構想として、「金沢国際地方政府宣言」を提案する。市民の共同する力で、住民自治に裏打ちされた地方政府を金沢に打ち立てよう。

 
 一般には、政府とは、国の政府を連想するだろう。しかし、そもそも、立憲主義の立場から政府の存在理由を突き詰めれば、「住民の基本的人権を具現化するため」に行き着く。日本国憲法では、国政を担う国会議員と共に、地方自治体の首長、議員も住民が直接選挙で選出するしくみになっており、地方自治にも、自己決定権を行使する政府があってしかるべきであろう。

 本源的に固有の権利である住民の基本的人権を具現化するには、住民に最も近い基礎自治体が政府性をもってその役割を果たすことが求められる。都道府県や国は、その不足を広域機能で補完する役割を負うが、あくまでもその関係は対等である。真の地方分権に奔走した佐藤栄佐久前福島県知事は、「住民にとっては中央も地方もない」と述べているが、そのあるべき対等性を主張したものと受け止めている。

 ところで、個人の尊厳を前提にして固有の基本的人権を明文化し、その実際的な保障・具現化を求めている先駆的な日本国憲法ではあるが、制定時の時代の制約もあって、地方分権やその発展としての地方政府については、必ずしも明文により詳述されているわけではない。なかでも、地方政府にとって要とも言うべき「自己決定権」「抵抗権」は、日本国憲法に含意されていると解釈できるとは言え、明文上の不十分さは否めない。そこで、私たちは、憲法第98条第2項によって遵守義務を負う国際人権規約(社会権規約、自由権規約)に明確な根拠を見いだす。その両規約のいずれにも第1条に「自決権」が置かれている。第二次世界大戦終結後の1948年、二度の世界大戦を教訓とし、世界の人民の自由と権利を保護し、平和を築くために、国連において、その基礎として世界人権宣言が採択された。さらに1966年に国際人権規約が締結された。その間の人権思想の深まりがそこに反映されている。「自決権」と「抵抗権」は言うまでもなく表裏の関係にある。

 私たちは、この金沢の地域に根ざした地方政府を構想するに当たり、日本国憲法と共に、国際人権規約等の国際条約の精神にも根拠を置き、その規範性の体現を目指す。

 

 それを市民が共同して実現させるために、私たちは「あらゆるものが見直されねばならない」と考えている。それは、私たちがあの「3.11」以後を生きているからに他ならない。その視点を次の6項にまとめる。

 (1)藩政起源、領主中心の歴史意識からの脱却。自治の源流としての一向一揆の再評価。近代史における大陸侵略の拠点としての軍都金沢の歴史に対する共通認識。それらを通じた封建的な物言わぬ風土の克服。アジアに開かれた市民意識の共有。金沢や石川の地で人権擁護や反戦活動を行った先達の掘り起こし。民衆史の流れへの正当な位置づけ。

(2)金沢独自といわれる地域コミュニティの批判的分析と市民社会におけるコミュニティの目標像。とりわけ、個人としての市民の位置づけ、権利主体、自治の担い手としての市民の位置づけ・住民自治・政策形成過程における市民意見の反映実態。

(3)自治体間競争や「金の稼げるまち」を超えた、人間の尊厳あるくらしを支えるまち

という価値観の提示・批判的現状認識・福祉共生社会像。 

(4)国際化時代における普遍的価値観としての、平和的生存権、人権平等、国際連帯を

実現する自治体としての課題意識・教育・文化・ユネスコ創造都市ネットワークに相応し

い国際規範の意識・市民の力量・民間の力量・行政の力量。

(5)金沢のまちづくり政策に対する批判的検討・地域に根ざした固有の経済産業政策、

都市政策、脱原発・環境エネルギー政策、まちのありかたのトータルデザイン。

(6)地方分権の徹底としての中央政府と対等な地方自治体(地方政府)のありかた像。

 

それでは、私たちが「金沢国際地方政府」に求める具体的諸課題を挙げておく。

・実質のある市民社会へのパラダイム(土台となる規範)転換

非戦平和都市(戦争非協力)、人権保障都市、共生共有都市、

市民の意見が反映され、市民自治が保障されるまち、情報公開と行政情報の市民共有、人間の尊厳ある学びの保障、子どもの育ちを支え合うまち、

社会的に弱い立場の人を支える福祉、市民と地域に根ざす継承と創造の文化都市、

脱原発と持続可能な地域分散エネルギー、地域に富の循環が生まれる産業政策、コミュニティビジネス、地域通貨

移動権を保障する公共交通政策、居住権を保障する住宅政策、

高齢化時代のインフラ整備、いのちと人間の尊厳を守る都市機能のバランスある整備

・国に物言う主体性 

権限・財源の委譲(国地方税配分見直し、地方共有税、自己決定権の保障と課税自主権の拡大)

国家主義に対峙し、地方のことは地方で自己決定

平和的生存権に逆行する外交防衛政策への批判・拒否権 等

5件のコメント

  1. お世話になります。私の提起した公文書館問題をしっかり取り上げていただきありがとうございました。 

  2. 私の提起した公文書館問題をしっかり取り上げていただき、ありがとうございました。

  3. わたしの提起した公文書館問題をしっかり位置づけて下さってありがとうございます。

  4.  石川さん、度々お越し下さり有り難うございます。申し忘れていましたが、天然の頂き物も有り難うございました。ご教示またよろしくお願い致します。

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